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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 新たに現れた灰色のローブを着た者たち。
 彼らは僕と同じ魔道使いの暗殺者だと思う。

 戦場に暗殺者。ちょっと違和感があるが、この殺気は間違いない。
 魔国王が普段から飼っているのか、今回のために雇ったのか分からないが、一人一人が強烈な殺気を僕に向けている。

「竜国の〈影〉は潜入や調査が得意だけど……そっちは暗殺が専門かな?」
「…………」

 僕の問いかけに応えはない。僕は続ける。

「ただし、〈影〉の中には、こっちが得意なのもいるんだけどね」
「こっち」とはもちろん暗殺技術。

 闇の中に小刀を突っ込み、敵の一人を背から刺す。

「!?」
 口から血を吐き出して一人がくずおれる。

「……インビジブル・ナイフ」
「そう呼ばれているのは知らなかった。まあ、好きに呼んでくれていいけどね。どうせっ!」

 小刀を引き抜いて別の者を狙ったが、寸前で避けられた。
 そううまくは行かなかったか。

「僕はきみらを全滅させる!」
 別に『闇刀』は後ろから出現させるだけではない。上下左右前後、どこだって出せる。

 後方に注意を向けていた暗殺者の一人の足を薙ぐ。
 感触から、両足の腱を切断できたと思う。

「どう? これで動けないでしょ」
 これで挑発し終えた。
 僕はゆっくりと後ずさり、暗闇に向かって僕は駆け出した。

「!? くっ、追えっ!!」
 暗闇は僕の独擅場。ついてきた所で、見つけられるわけがない。

               ○

 ひっそりとした天幕の中に気配が生まれた。
 魔国王ロイス・フロストの周囲に控えた護衛たちが緊張する。

「陛下……ただいま戻りました」

「ララか」
 周囲にホッとした雰囲気が漏れた中、奥から声が聞こえた。
「はい。ララでございます。先ほど敵魔道使い『インビジブル・ナイフ』を発見、交戦しましたところ……くっ!」

 ララが苦痛に顔をゆがめる。
 左肩から肘にかけて大きく斬り裂かれていた。

「やられたのか」
「申し訳……」

 魔国十三階梯、第十二位『瞬移しゅんい』のララ。
 攻撃力こそないものの、防御と逃走には定評がある。

 いままで、どのような死地からでも生還してきた。
 それが大怪我を負って戻ってきたのだ。

 その実力を知っているだけに、護衛に驚愕の表情が浮かんだ。

「ララ……報告を」
「はっ。『死翼しよく』のアンデールが殺られました。ほかにも、『グラススネイク』の面々も壊滅。敵『インビジブル・ナイフ』は遠からずここへくるものと思います」

 ――ザワッ

 魔国が暗殺者集団の根城となって長い。
 密かに国が保護していたからである。

 月魔獣の脅威があるこの国では、戦力のほとんどを陰月の路へ派遣することになる。
 必然、それ以外の町の警備は薄くならざるを得ない。

 暗黒街こそできないが、反社会的な集団がはびこる素地はどの町もあった。
 ゆえに暗殺者集団などは必要悪として容認されてきた。

 なかなか尻尾を出さないような悪党でも、疑わしい者は処理する。
 それが昔から公然と行われてきた。

 国のために暗殺を行う集団。
 国営というわけではない。金さえ積めばどのような依頼でも受ける。

 ただ大口のお得意様が国であるだけ。
 いわば魔道使いたちの暗殺傭兵集団であった。

『グラススネイク』はその中でも魔国王からの依頼でよく動く集団であった。

「全滅したか……」

『グラススネイク』の実力はだれでも知っている。
 それがたったひとりの魔道使いに全滅させられたのである。

「迎え撃つ準備を……といっても、無駄に犠牲を出す必要は無い。マタミール」
「……はい、こちらに」

「バシリスクとともに私の許へ」
「畏まりました」

 瞬時に光を出す魔道を使うマタミールは、バシリスクとの相性は抜群である。

「ララは手当てを……しかし、こうしてみるとフローリアを失ったのは痛い」
 一定範囲内ならば、どのような状態であろうと、人の意識を読むことができる魔道使い。

 彼女がいないだけで、周囲の安全を確認する必要ができてしまった。
 そして『インビジブル・ナイフ』の場合、魔道結界は効かず、見つからずに近寄られる危険がある。

「物理結界を張らないのでしょうか?」

 そう尋ねたのはチェスター。
極位きょくい』と呼ばれる魔国十三階梯、第三位の魔道使いである。

「前の天幕のように火をつけられる可能性がある。また、物理結界すら奴には効かない可能性が高い。それに物理結界は外から助けがないだけでなく、逃げ出せない」
「そうでした」

 前回、『インビジブル・ナイフ』が物理結界を抜けてきた理由は分からない。
 はじめから隠れていた可能性も考えられたが、それを信じて天幕に物理結界を張るのは危険が高い。

「そういう事でしたら、我々が命を賭してお守り致します」
「頼むぞ」

 魔国王を守るように護衛の兵士と魔道使いたちが配置された。

 だれもが時間が過ぎるのを待つ。
 すでに喧噪はない。夜襲を仕掛けたという竜国兵たちは撤退したのだろう。

 追撃はするなと命じてある。
 野営地の外に罠が仕掛けられている可能性もあったし、この暗闇では追いかけたところでどうしようもない。

 時間だけが過ぎ、このまま朝を迎えるのかと思ったそのとき、天幕に気配が生まれた。

「!!」

 入り口に人が立っていた。
 外からの薄明かりにその輪郭を浮かび上がらせた。


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