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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 竜国の町が二つも落とされたのは、実に数十年ぶりのことである。
 これまでは大国としての鷹揚さを見せていたこともあって、その衝撃は大きい。

 今までの対応が甘かったのだ。
 そう文官や武官たちが口々に主張しはじめた。

 王城で働く彼らには、当初、現実味がなかった。
 二つも町が落とされたいまになってやっと、動き出したと言える。
 尻に火が付いたというやつである。

 なぜこうも認識が甘かったのか。
 それを説明するのは容易い。

 たとえば、竜国では地方領主の権力が強い。
 竜国は中央集権国家であるものの、地方の独自色が強く、画一的かくいつてきな政策は何の効果も表さないことを知っている。

 何事も地方も思惑を無視して物事は進められない。
 いや、上から一方的に推し進めることは可能である。

 それでどうなるかといえば、不満を覚える民が増加し、それに同調する地方領主が出るだけである。

 王都は、もしくは王族はなにも分かってくれない。
 俺たちのことを理解してくれるのは領主様だけだ。

 そんなことになる。
 これは竜国にとって決していいことではない。

 ゆえに地方のことは地方の政治に任せるのが通例となっていた。
 そんな政策を何十年も執り続けていたことで、領主の権力が強化され、定着していってしまったのである。

 王都から派遣された軍事力を町に置くことを嫌う領主たちが多い。

 自分たちとは違う命令系統にある軍隊である。
 町に常駐されるのを嫌うのは当たり前であろう。平時では。

 他国から侵略があったとしても、七大都市が中心となって自分のところの衛星都市を守ればいい。そのために地方は連携していこう。
 あまり王都をアテにするな、もしくは借りを作るなといった意識がある。

 それゆえ他国からの侵攻があったとしても、王都の動きは遅い。
 遅くならざるを得ない。

 そして王都側から見てみると。

 地方に十分な戦力があるのだから、王都が慌てる必要は無いと言い張ることが出来る。
 竜国は大国であり、多少の侵攻程度ならば地方領主が撃退する。

 王都は鷹揚に構え、その報告を聞いていればよい。そんな雰囲気があった。

 介入を嫌う地方領主と、大国故に介入する必要を感じないと考える王都。
 その両者の関係は危ういながらも、正常に機能していた。平時ならば。

 大転移によって多くの兵と竜操者が陰月の路に赴き、減った人員を補充するため、地方が手薄になっていた。つまり、どういうことかというと。

 ――今は平時ではなかったのである

 それに尽きる。

               ○

「魔国王の姿が確認されたんですか」
「ええ。ホーリスの町にいたようね」

 とある日の夜。
 女王陛下の護衛をしていると、そんなことを言われた。

「魔国領から出てきたということは本気のようですね」
「そう。こっちも本気にならなきゃ失礼よね。そう思うでしょ」

 女王陛下は微笑みながら僕を見つめた。
 すでに指令は出ている。そして魔国王の居場所が分かった。

「もちろんです、女王陛下。詳しい話をお聞かせください」
 僕はこの後、指令を全うするため、出発することになりそうだ。



 竜国の南方にあるホーリスの町は魔国領に近い。
 だが、王都から離れているため、戦略的価値はそれほど高くない。

 魔国軍がここを狙ったのは自領を広げるためと考えられる。
 その場合、次に狙ってくるのはソールの町。

 ソールの町は七大都市のひとつに数えられ、多くの者がそこに住んでいる。
 また、僕の生まれた場所でもある。

 町全体は高い城壁で覆われているが、実のところ町の防備能力はそれほど高くない。
 交通の要所であるため、門の数が多いのだ。

 商国と魔国からの出入りがあり、王都や他の衛星都市に向かう道が存在しているため、重要な都市というわりには守りにくいところがある。

 魔国軍はホーリスの町から直接王都に向けて進軍する可能性も僅かながら残っていたが、どうやらそうではないらしい。

「ソールの町を落として、周辺の衛星都市もろとも魔国領にするつもりのようね。魔国王が先頭に立って軍を進めるみたい。姿も確認できたわ」

 魔国軍はソールの町を落とす準備を進めているらしい。

 いま魔国から多くの人員がホーリスの町に派遣され、町の防備は強化されつつある。
 その完了をもって、外に打って出るようだ。

「まだ魔国軍は進軍していないのですね」
「そうよ。目的地はソールの町と判明したくらいかしら」

「竜国側の迎撃はどうなっているのでしょうか」
「編成を終えて、進軍してくるのを待っている状態ね」

 攻城戦は町に被害が及ぶため選択しにくい。
 敵が出てくるならば、その方が戦いやすいといえる。

「分かりました。では僕はそちらに向かいます」
「お願いね、レオン。それと、これを持って行くといいわ。ソールの町に滞在なさい」

 女王陛下から命令書を受け取った。ソールの町の領主宛らしい。
 女王陛下の命令でソールの町に滞在する理由付けに使うもののようだ。

「ご配慮痛み入ります」
「いいのよ。それでね、レオン。しっかり帰ってらっしゃい」
「はっ、もちろんです」

 魔国王の暗殺……それは容易なことではない。
 王にたどり着くまでに多くの敵が立ちはだかるだろう。
 たとえばバシリスクだとか。

「手はずは調っているわ」

 魔国王がどこにいてもバックアップできるよう、〈影〉は手配済みらしい。

「ソールの町は僕の出身でもあります。そこを拠点にできるのでしたら、問題はなにもございません。かならず成功させてみせます」

「期待しています」

 僕は女王陛下の前を辞した。
 いただいた命令書には、シャラザードの怪我療養のため、陰月の路から遠いソールの町に滞在することが書かれていた。

 僕が王都を出発する直前、王宮より住民に向けて告知がなされた。

 これより全力をもって魔国軍を排除、戦いは近日中に必ず終息させると。

 民衆は大いに湧いた。


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