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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 僕の報告以外でも、魔国の侵攻があったのか。
「この会議はもしかして……」

「その緊急対策会議ね。なにしろ魔国の動向はずっと探らせていたにもかかわらず、実際に国境を越えるまで分からなかったんですもの」

 その言葉から、街道を使ったものではないと理解した。

「ど、どこに侵攻してきたのですか?」
「ホーリスの町が落とされたわ。それでレオン操者はどう考えるのかしら?」

 侵攻どころではない。もう町がひとつ落ちているらしい。

 ホーリスの町はソールの町の衛星都市だ。そして魔国領に一番近い。
 あそこの人口は十万人ほど。それなりに大きい町のはずだ。

 僕は頭を働かせた。
 まず、今回の侵攻。

 二カ所同時侵攻は、魔国の作戦だと考えていいと思う。
 偶然、侵攻の時期が重なったとは考えにくい。

 ということは二カ所のうち、どちらかが本命ではなかろうか。
 通常ならば戦力の分散を避けるが、今回、軍を分けた理由があるに違いない。

 それを踏まえて魔国の狙いを考えてみる。

「僕が思うに、ホーリスの町を襲った魔国軍こそ主戦力だと考えます」
「それはどうしてかしら」

「以前、魔国王の軍が西の都から撤退しました。今回の侵攻では、その軍が使われたのではないかと考えます。そしてソウレルの町へ向かった軍は、竜操者をそこへ向かわせるための捨て石かもしれません」

 竜操者の多くが陰月の路にいる現在、ホーリスの町へ急行させるには、長距離を移動する必要がある。
 だが、その途上でもまた魔国の侵攻が確認されたならば、それを放っておけるだろうか。

 竜国の民を救うため戦いに参加するかもしれない。
 そうすると南方へ向かう竜操者が少なくなるか、遅れる。
 二カ所同時侵攻は、それが狙いではなかろうか。

「おもしろい意見ね。みなはどうかしら」

「一考の余地がある意見かと思います」
「でしたら、早期解決のためにも、両方の町へ多くの兵を送った方がいいですな」
「では王都からも、呼びの竜操者を現地へ……」

「いや魔国は直接王都を狙うことも考えられます。ここは陰月の路は二の次にして、半分程度の竜操者を……」
「そんなことをすれば、月魔獣が増えすぎるではありませんか。あとで掃討しようとしても、多大な犠牲が……」

 議論が白熱しかけたため、女王陛下は僕に退出を促した。
 みなの注意を引かないよう、僕はそっと会議室を出て行った。



 その日の夜。僕は裏の謁見の間へ、顔を出した。

「昼間はごくろうさま、レオン」
「はっ、もったいないお言葉です」

 昼間は魔国侵攻という重大事を報告しただけであり、〈影〉としての報告はまだしていなかった。

「いろいろ話をしたいところだけど、まずは潜入の結果を教えてちょうだい」
「かしこまりました」

 僕は、魔国領に行った時から話を始めた。

 潜入当初に脱走した民間人がいたことからはじまって、林の中に防護柵を張り巡らせて陣を築いていたこと。
 魔道使いがいないことや月魔獣対策がなされていなかったことなど、覚えている限りの報告をした。

「多くの斥候を放って、竜国の町や村を探っていたというのね」
「はい。部隊を組んでいたようですし、かなり念入りに調べたようです」

「ずいぶんと慎重ね。エーラーン将軍ならば、そういうものかしら」
「斥候からの報告で、ソウレルの町を襲うことが決まったようです」

「民間人ともども?」
「そうだと思います」

「よく分からないわね」
「僕もそう思います」

 昼間の魔国同時侵攻の話からすれば、民間人の存在など足手まといになる。
 竜国に何度も侵攻してきたエーラーン将軍がそのことを分からないはずがない。

 ではなぜか。その理由はいまのところ見つかっていない。
 ホーリスの町を襲った魔国軍に関係あるのかもしれないが、そちらからは、いまだ追加情報は入ってきていないという。

 僕が身分を明かさず民間人と接触して、情報を集めたこと。
 朝を待たずにその場を後にしたところで、僕の報告は終わった。

「その後はウルスの町へ赴き、リトワーン卿に話をしました。それは昼間ご報告した通りです」

「なるほど、分かったわ。よくやったわ、レオン。侵攻が事前に察知できたこっとは大きいわ。……それで先ほど聞いたのだけれども、黒竜のシャラザードが大怪我をしたようね。それはどういうことかしら」

 女王陛下は穏やかに言った。そっちが残っていたか。

「……申し訳ございません。僕が潜入している間、シャラザードには目立たないようにしているよう伝えたのですが、魔国首都方面へ月魔獣狩りに出かけたようでして」

「支配種のいるところね。ということはあの傷は支配種に付けられたのでいいかしら」
「はい、その通りです。申し訳ありません」

 休暇をもらって完全休養し、全快した矢先にこれである。
 竜操者として申し開きできない。

 シャラザードは強力な戦力と期待されていたし、魔国の侵攻という国難も発生している。
 それなのにシャラザードは単騎で支配種に突っ込み、大怪我を負ってしまった。

「怪我をしてしまったことは仕方ないわね。支配種についての情報はあるのかしら」
「後ほど報告書にまとめたいと思います」

「それでいいわ。……で、勝てるかしら」
 いまの話の流れでいうと、魔国軍ではない。支配種の方だ。

「シャラザードは近づけなかったと言っています。今回、強さを測るまで戦えなかったようですので、強敵であることはたしかですが、それ以外は未知数です」

「そう……やっかいなものね。アレは早い内に完全に倒さないとならないでしょう」
「はい」

 倒さなければどんどんと手下を増やし、自身も強化していく。
 そして支配地域が広がってゆけば、竜国の領土すらその範囲に入ってしまう日が来てしまう。

 いまだ倒す目処すら立っていないが、女王陛下の言うように、早い内に倒すべき相手である。

「それでね、レオン。魔国は本気だと妾は思うの。これが国として行動できる最後の機会だと理解しているはず。だから不退転の決意を持って攻めてきているはずだわ」

「……はい」

「そういうわけでレオン、あなたに指令を与えます」
「はい」

「時間がかかってもいいから、必ず魔国王を暗殺なさい」

「……はい。その指令、たしかに承りました」

 一国を滅ぼす指令が、この日、僕に与えられた。

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