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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 僕はウルスの町を出発して王都を目指した。
 シャラザードが大怪我をしているため、通常よりかなりゆっくりのペースで進んでいる。

 通常ならば一日で王都に到着するが、翼に穴が開いているため、そういうわけにもいかない。
 街道に沿って進み、途中の町で一泊することになった。

「シャラザード、大丈夫か?」
 飛行中、何度かグラッときたことがあった。

『うむ。少し休めば問題ない』
「少し休んだくらいでどうになるような怪我じゃないだろうに」

 やせ我慢しているのがありありと分かるか、それを指摘したところで、シャラザード素直になるはずもない。
 だが翼や身体に穴を開けた状態というのは、見ていて痛々しい。

「このペースだと、もう一泊しないと王都に着かないな」

 小型の飛竜だと、ウルスの町から王都まで二日で到着する。
 それを考えれば、いかにシャラザードがゆっくり飛んでいるか分かる。
 もっとも今回は、街道伝いに移動しているため、距離も伸びているのだが。

 今回の報告、義兄さんが持ってきた指令なので、義兄さんを通して行うのが通常だ。
 だが、魔国侵攻という緊急事態を知らせる必要があったので、僕の判断で直接王都に向かうことにした。

「僕が潜入している間のシャラザードの動きだけど、何をやっていたか詳しく話してくれるかな」
 いろいろあって、しっかり確認を取ってなかった。

『うむ。日々精進であった』
「なに偉そうなことを言っているんだよ。勝手に支配種のいる地域に突っ込みやがって!」

『それはどうかな』
「それはどうかなじゃねえ! しっかり話せ!」

『まあ、話さんでもないのだが、ううむ……』

 シャラザードはよく生きて帰れたと思う。

 魔国の首都イヴリールは、月魔獣の支配種に落とされた。
 それはもう確定している。

 竜国も詳しい事情を探るため、何度か調査をしている。
 ただし、首都付近に赴いた竜の調査隊はすべて未帰還。詳しい事情は一切不明のままとなっている。

 当初、走竜や地竜ではなく、空を飛ぶ飛竜がなぜ帰還できないのか不思議だった。
 飛行型月魔獣が現れたとして、全騎が未帰還となるはずがない。

「光の束だっけ?」
『うむ。我の身体を貫くとは、こしゃくな技よ』

 遠距離から飛来したということで、狙いはかなり正確。
 そしてシャラザードの身体すら突き抜ける威力。

 飛竜がそれに狙われたとしたら帰れないはずだ。

 シャラザードだからこそ怪我をしても帰還を果たせたのであって、小型の飛竜くらいならば、一発で地上に落下したことだろう。

「一応支配種がいる地域の調査は進めているらしいけど、中心部は謎が多いみたいだからな」

 王都だけでなく、ウルスの町からも調査隊が派遣され、今はもう支配地域のおおよその範囲が分かっている。

 今回、シャラザードが見聞きした中央部――首都近郊の情報は、貴重な資料となりそうだ。

「でもな。それはそれ、これはこれだよ、シャラザード」
『何のことだ?』

「ひとりで危険地帯――最も危険な場所へ勝手に行ったんだから、罰は受けてもらうからね」

『い、いや、それはだな……月魔獣がいたらかには我が戦わないわけにはいかず……そうしているうちにどんどんとだな、奥に?』

 慌てて言い訳をはじめるシャラザードに僕は冷たく言った。

「約束を守らなかったし、怪我をして竜国の戦力がダウンしちゃったしね。怪我を治すためにまたどれだけ時間が無駄になると思っているの?」

『……ぐう』

 ターヴェリは、シャラザードのことを「やんちゃなガキ」と評したが、まさにその通りだと僕は思ってしまった。



 ウルスの町を出発して三日目の昼過ぎ、僕は王都に到着した。

〈影〉の報告は夜となっているが、内容は急を要する。
 僕は身分を明かして王城で謁見を願い出た。

「会議中ですか?」
 魔国に関して重要な話があると告げたら、女王陛下はいま会議中であり、そこで告げてほしいと言われた。

「いいんですか、僕が会議に出て?」
「陛下がそう仰せですので」

〈影〉の報告は夜でもいいので魔国が侵攻してくる部分だけ話そう。
 会議室に向かう途中で不自然でないストーリーを組み立てた。

 先触れが会議室の扉をノックし、僕を招き入れた。

 中にいたのは二十人くらいだろうか。
 女王陛下をはじめ、お偉方が集まっている。
 視線が僕に集まるなかで報告するなんて、なんの苦行だか。

「レオン操者、報告をお願い」
 女王陛下がよそ行きの声を出した。

 僕はこの会議に特別に呼ばれただけ。
 さっさと報告して帰ろう。

「ではご報告します。任務により、北方の陰月の路をやや外れたところから魔国領へ偵察に赴きました。そのとき盆地の中に隠れ住む魔国兵と民間人の一団を発見しました」

 不審に思ったが、近づくわけにもいかなかったので場所だけ確認した。
 偵察の帰還時に、偶然民間人と接触できたと伝えた。

 さすがに会議の出席メンバーに向かって、潜入したとは告げられない。

「それで民間人はなんと?」
「情報は制限されており、すべての目的は分からないそうです。ただ、すぐにでも竜国の町を攻める予定であることが確認できました」

「なんと!?」
「本当なのか?」

 会議のメンバーが驚いている。

「それでレオン操者。襲うという町はどこだか分かるかしら」
「ソウレルの町と聞きました。またこの情報はただちにウルスの町のリトワーン卿にも伝えてあります」

 会議のメンバーが騒がしい。「ソウレルの町だと?」「あそこを攻める意図はなんだ」としきりに話している。

「リトワーンには伝えてあるのね」

「はい。伝えた情報を吟味し、偵察を出すと言っておりました。指揮を執るのはエーラーン・ハイドン将軍であり、その情報すら偽の可能性があると。ですから、あらゆる事態を想定して動くと」

「そう、ありがとう。よく分かったわ。みなさんはレオン操者に何か聞きたいことはあるかしら」

 本来ならば「報告は以上です、御前失礼します」と言って出ていきたいのだが、それを許してくれない。

 質問は次々に出た。
 細かい確認なので、ひとつひとつ丁寧に答えていく。

 女王陛下をはじめ、みな国の重鎮ばかりだ。
 こんな報告ひとつに時間を費やしていていいのか?

 ほぼ質問が出尽くしたと思ったところで、女王陛下が「では妾からも――」と言い出した。

 僕は女王陛下の突拍子もない話題に振り回される事が多い。
 今回はそんなことがないよう、腹に力を入れて質問を受ける。

「魔国の南部から竜国へ大規模な侵攻があったのだけど、それについてレオン操者はどう考えるのかしら」

「…………はっ?」

 どうやら僕はまだ修業が足らないらしい。


風雲急を告げてきました。

拙作『竜操者』の書籍ですけれども、本編の後ろに閑話集を載せてあります。
前回の「活動報告」で書きましたとおり、書籍化のお話が来たのがはやかったこともあり、本編の閑話については「後々書籍かSSに入れる」可能性を考慮していました。

書籍に載せた閑話は全部で10本です。そのうち4本は既存のものを修正して。残り6本は完全新作になります。
本編ともども気合いを入れて書いてありますので、楽しみにしてもらえたらと思います。
よろしくお願いします。
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