挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

479/656

478

 シャラザードの姿はひどいものだった。
 以前ターヴェリと戦った後で支配種に突っ込んだとき以上だ。

「どうしたらこんなにボロボロになるんだよ」

『うむ。月魔獣がウヨウヨいる地を見つけてな、そこで思う存分ひとりを満喫したおったのだ』
「それ、言い方を変えてるけど、月魔獣狩りに行っただけだろ」

『まあな』
「まあなじゃねーよ。月魔獣がウヨウヨいる地って、ものすごい危険地帯だろ」

『そこで強力な奴がおったのだ。我はそいつらを次々と倒していたのだが、突如上空から襲われてな。我に急降下をかけてきたのがおったのだ』

 襲ったのは、飛行型の大型種らしい。
 シャラザードと遜色のない大きさで、力も強かったため、空中で揉み合ったまま、ともに地上へ落下したらしい。

 地上で戦っているうちに他の月魔獣が群がったという。
 それでも優勢は変わらない……と思っていたら、さらに巨大なのがもう一体現れて、地上で大乱闘をはじめたらしい。
 何をやっているんだか。

『ようやく倒し終えて、これを取り出したところ、遠くから一撃を受けたのだ』

 僕が月晶石を集めているのを知っているから、取り出していたという。
 ちょうど注意が逸れたときを狙ってきたのが支配種。

 遠距離から直線上に進む力の奔流を感じたようだ。
 気がついたら、身体に穴を穿たれていたと。

「よく無事だったな」
『うむ。初撃は避けようもなかったが、あとは何とかなった』
 かなり遠距離からの攻撃だったため、他は飛び立って回避したという。

 その後はシャラザードは次々と飛来するエネルギーの奔流を避けたり、ときに受けたりしながら支配種の元まで向かった。

 だが、周囲を巨大な月魔獣に守られている支配種には届かず、反対に深手を負って撤退したのだという。
 どれだけ支配種が強いんだか。

「戦ってみてどうだった? 倒せそうか?」
『近づければな。だが、まえと同じだ。あれは守られておる』

「大軍で向かったら?」
『それしか手はあるまい。だが、千を越える仲間の屍を越えてゆかねばならんな。壮絶な戦いになろう……』
 シャラザードがまだカイダにいたころを思い出しているのだろう。

 支配種がそこにいるだけで月魔獣は生き続けることができる。
 支配地域もまた、少しずつ広がっていく。

 つまり支配種を放っておけば、地上はどんどん浸食されていく。
 そうなれば、地上のどこでも月魔獣がエネルギー切れを起こすことなく移動できるようになる。

「シャラザード、ひとりで行くな。僕を頼れ」
『分かっておるが、あれを見ると衝動が押さえ切れなくなるのだ』
 これはシャラザードが抱える根の深い問題だ。僕は話題を変えた。

「しかし、これどうしよう。前以上にボロボロになって……」
 また前回するまで休息か?
 これは女王陛下に相談だな。……おっと、その前に大事なことがあった。

「シャラザード、すぐに向かうところがある」
 支配種のことも気にかかったが、先に片付けなければならないことがあった。

『どこへ向かうのだ?』
「ウルスの町だ」

 ウルスの町は魔国に対して、防波堤の役割を担っている。
 竜国七大都市のひとつであり、王都を除いた都市の中で、最大戦力を持っている。
 そこへまず話を通したい。

 ウルスの町にはリトワーン・ユーングラス卿がいる。
 リトワーン卿に魔国の侵攻を知らせて判断を仰ごう。王都に行くのはその後だ。


 夜中にもかかわらず、ウルスの町は眠っていなかった。
 町中に灯りがいくつも見て取れた。

 僕は以前降下したことのある場所へシャラザードを向かわせた。

 出迎えた竜務員は驚いたことだろう。
 傷だらけのシャラザードがやってきたのだから。

「火急の用件だ。リトワーン卿に面会したい」

 深夜だから朝まで待てと言われたら押し通るつもりだったが、さすがに分かっているのか、すぐにリトワーン卿の館に通された。

 とくに身元を確認されなかったが、シャラザードとここへ何度か来たことで、顔パスになっていたようだ。
 僕の顔を知っている竜関係の人が多いのも良かったのだろう。

「久しぶりだね、レオン操者。火急の用件とあったが」

 それほど待たされることなく、ユーングラス卿が現れた。
 さすがに危機意識が出来ている。

「魔国が侵攻してきます」
 僕は単刀直入に言った。

「ふむ? そのような兆候はないはずだが」
 変化があれば報告が上がってくるとリトワーン卿は難しい顔をしはじめた。

「いえ町からではありません。森の中に隠れている一団がいます」
 リトワーン卿の動きが止まった。

「たしかにそのような集団がいると報告を受けている。行動は謎で一説には内部分裂したとも。あれは別段、脅威となるようなレベルではなかったはずだが」

「複数の集団に別れて隠れているようです。脅威云々はともかく、事実だけを申し上げれば、敵は多くの斥候を放って襲撃を決めました」

「なるほど。キミがどういう経緯でそれを知ったのかは聞かないが、それが事実とすると何かあるのだろうね。それで敵はどこを狙ってくるのかい」

「ソウレルの町です」
「ソウレルか……ずいぶんと陰月の路に近いな。もっとも、一番近い町ではないが、魔国領に近い町の中では……だからこそ狙ってきたのか?」

 現状、陰月の路に近いほど、竜操者たちは激務である。
 日中はほとんど出払っていると考えていい。

「……だが、その話だけでは、ここの軍を動かすわけにはいかないな」


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ