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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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「久しぶり……ってほどじゃないだろ?」
 義兄さんは爽やかに笑った。

「うん。僕の卒業までは学院で一緒だったしね。それで義兄さん、なんでここに?」

 このタイニンの町は、陰月の路の北にある。
 すでに住民は避難しているため、行商しに来る人はいない。

 月魔獣対策のため、町には四つの部隊が常駐している。数にすると竜操者だけでも六十名強。
 一般の兵はその倍はいる。

 彼らの世話をする非戦闘員を含めたら、二百人以上がいまなおこの町に暮らしている。
 そんな人たちの生活環境を調えるため、いくつかの商店が開いている。
 義兄さんはここで店を開くのだろうか。

「おれが来たのは、女王陛下からの指令だ」
「えっと……マジで?」
「ああ、マジだ」

〈影〉の仕事があるらしい。大転移の間はこっちに集中するのかと思っていた。
 クリスタン義兄さんは僕の専属として、僕が移動するたびに付いてくるのだろうか。

「えっと、いま僕はクレイド隊に入っているから、簡単に抜け出せたりしないんだけど」
 ソールの町と違って、町中で諜報活動するわけではないだろう。

 かといって、今までのように長期の潜入任務はさすがにできない。
 その辺りをどう考えているのか。

「竜操者の仕事があるだろう? それは優先される。だが、どうしてもおまえじゃなきゃ駄目な指令もあるんだ。そういう場合は別の用事が作られることになりそうだ」
 どうやら、僕を遊ばせておくつもりはないらしい。

「わかった。……けど、急だね。どんな指令なの?」

「指令は魔国からみだ。まず報告からだな。魔国で北部に取り残された住民たちの動向が分かった。その辺を含めて話をするから、オレの部屋に来い」

 魔国民たちが意味不明な動きをし始めていることは、前から聞いていた。

 僕のところまで情報が流れて来ているのだから、竜国が調べていないはずはないと思っていたけど、それらの調査が終わったようだ。

 義兄さんに連れられた先は、竜操者施設内にある雑貨屋。
「……やっぱり」
 またここでも店を開くのか。

「よしここでいいな。さっきの話の続きだが、魔国の北部に向かった一団がいる。兵に先導された民間人が多いな」

 まず兵が移動し、一度戻ってきたらしい。
 その後、兵と民間人がともに北方に向かったとか。

「ずっと目的は不明だったんだよね。陰月の路へ向かったりと不自然な動きがあったようだけど、あれは?」
「どうやら追っ手をごまかす為だったようだ。それと竜国側の目を欺くのにも使われたとみている」

「追っ手?」
「ああ。魔国で内紛がおきていた。掴んだのは最近だが、内紛だっただけに、表に出るのが遅れた」

「もう少し詳しくお願い」
 首都が落ちているのに内紛って……いや、首都がないから各地で好き勝手に動いているのか?

「半分は予想になるが、急戦派と穏健派の対立で急戦派が勝った。負けて出て行ったのは穏健派。連中は北方に向かって出発し、それを竜国が掴んだわけだ」

「なるほど。北に行って何をやっていたの?」
「簡単に言うと、生きのこりのための拠点作りだ」

 大転移で数年かけて陰月の路が北にずれる。
 どのくらい移動するかは分からないが、ある程度予想を立てて、安全と思われる場所を選んだのだろうと義兄さんは言った。

「北に拠点ね……でも食糧はどうするんだろ」

「問題はそこだな。今年は穀倉地帯があるからいいとして、来年以降が問題になる。だが、穏健派の数は少ないし、細々と暮らしていくつもりなのかもしれない。なんにせよ、今まで謎だった行動の理由が分かったのが大きい」

「そうだね。それで急戦派っていうのは、どうなの?」
 名前からして戦争肯定派のようだけど。

「ここまでは穏健派のメンバーとつながりがあった商人経由で知った情報。それに、裏付けをとるために潜入調査した結果から分かったことだ。続いて急戦派だが、これについてはよく分からない。というか、潜入捜査が出来ない状況になっている」

「……もしかして?」
「ああ。女王陛下からの指令だ。急戦派の拠点に潜入して、できるだけ多くのことを探ってこいとさ」

「あー」
 そういうことか。

 きっと潜入の難易度が高いのだろう。〈影〉を送り込む場合、誰にも見咎められないで潜入から調査、そして脱出するのは難しい。

 商人などに扮してその町に入り、夜になってからコッソリ動くのが普通だ。
 その際、現地にいる協力者の存在も必要だ。

 だが、前回の西の都もそうだが、完全に隔離された場所などに忍び込む場合、その手が使えない。
 つまり難易度が跳ね上がる。失敗して逃げ出せればいいが、捕まってしまうことも考えられる。

 絶対に失敗したくない場合、僕が適任というわけだ。

「分かった。どこにいてもシャラザードならばすぐに到着するし、もし見つかっても自力で帰ってくるよ」

「済まんな。ことは急を要するかもしれないんだ。頼む」

「ちょうど休みを取らないで働き詰めだったんで、その分を入れればそれなりの日数を確保できるかな」

「表向きの任務は王都への一時召還だ。女王陛下からの依頼ということで、任務内容は秘匿。これがその命令書だ」

 なるほど。王宮からみの任務ならば、内容は秘匿される。
「拘束期間は王都で三日間か。往復を入れて七日分ね。分かった。予定を立ててみるよ」

「予定?」
 義兄さんが不思議そうな顔をする。

「いまクレイド隊の殲滅力を底上げしているんだ。できれば以前くらいの編隊で大量の月魔獣と戦えないか考えていたところなんだ。まとまって訓練させたかったし、ちょうどいいかも」

 二日分の休日が未消化なので、その分を差し引いて五日分、まるまる訓練に費やせる。
 それだけあれば新しい戦法にも慣れるだろう。

「おまえはまた……恐ろしいことを考えるな」
「今日の成果を見る限り可能そうなんだよね」

「そ、そうか……」

 その日僕は、隊長のバフワン操者宛に大量の訓練メニューを作成し、翌朝手渡した。
 隊長は、それはもう泣いて喜んでくれた。
 がんばった甲斐があったものだ。

「では二日間の休みのあとは、それに従ってください。戻ったら一緒に実戦ですね」
 僕はにこやかにそう告げると、シャラザードとともにタイニンの町を出ていった。

 目指すは魔国領の急戦派がいる陣地。

「僕は潜入するから、シャラザードは見つからないようにね」
『分かっておる。ぐふふふ』


すでにAmazonにて予約開始されているようですので、ここにお知らせしたいと思います。

本作『竜操者は静かに暮らしたい』ですが、6月23日にレッドライジングブックス様より発売されます。
https://www.amazon.co.jp/dp/4803010587

投稿名「もぎ すず」を漢字に直した「茂木 鈴」名義となっております。
本作でちょうど12冊めの刊行となります。1ダースですね。しみじみ。

内容については随時お知らせしたいと思います。

今回はイラストレーターさんについて。
まだAmazonで表紙が出ておりませんが、美麗なイラストがすでに出来上がっております。
描いてくれたのは、 輝竜司様。

なろうでは、「蜘蛛ですが、なにか?」でお馴染みかと思います。
登場人物紹介などのカラー口絵など必見です!
秀麗なイラストを、ぜひお手にとってご覧くださいませ。

それではよろしくお願いします。
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