挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

469/655

468

 翌朝、宿泊施設に別れを告げ、一路北を目指して飛び立った。
 しばらく進むと、見慣れた光景に出くわす。

 人の手がまったく入らず、荒れ果てた場所。
 所々に見える戦闘跡が痛々し。陰月の路に入ったのである。

「シャラザード、ここからは警戒してくれよ」
『もちろんだとも!』

 陰月の路を通過中は、とにかく気が抜けない。
 飛行型の月魔獣から気づかないうちに接近され、襲撃を受けることもある。

 目の良いシャラザードのことだから、一応は安心できるが、いまはゆっくり飛んでいる。
 僕は後方を警戒することにした。

 そして進むことしばし。

『あそこにおるぞ!』

 シャラザードの声が跳ね上がった。嬉しいらしい。
「本当だ。結構多いな」

 月魔獣が三十体以上固まっている。
 ばらけている個体を入れると、五十体ほどか。

「周囲に仲間もいないし、倒すぞ!」
『心得た!』

 進路を変え、月魔獣がいる方へ向かう。
 向こうはまだこちらに気づいていない。

 明らかに大きさの違うのが二体いる。大型種だ。

 大転移では、普通に大型種が降下してくる。
 これに町が襲われると、被害が甚大になる。見つけたら率先して倒さねばならない相手だ。

 ――ガァアアアアアア!

 シャラザードの口から咆哮があがり、身体がバチバチと帯電した。
「お、おい、シャラザード?」

 久しぶりの戦闘でなぜ帯電かと驚いて、反応が遅れた。
 制止しようとしたら光の小爆発が幾重にもおこり、あまりのまぶしさに目を瞑りたくなる。

「シャラザード、何やっているんだ! とりあえず止めろ」
 周囲の安全確認がまだすべて済んでいない。僕がシャラザードに停止を呼びかけたその時。

 ドーンという雷特有の音が響き、視界が真っ白に染まる。目を瞑っていてよかった。
 続いて、バリバリバリバリバリとつん裂くような音が耳を打った。思わず両耳を塞ぐ。

 地上から重低音が聞こえてくるが、目をあけていられない。
「シャラザード、お前! いまなにやった!?」
 ようやく目を開いたら、見たことのない被害が広がっていた。

『今のは多雷杖たらいじょうだな。成功するとは思わなんだわ』
 のほほんとそんな答えが返ってきた。

 特大の雷を落とす雷杖らいじょうという技がある。その威力を押さえ、広範囲に複数本の雷を落とす属性技らしい。
 なぜこんな場所で使った?

 数十の落雷跡らくらいこんが地上に出現した。大地が真っ黒に焦げている。
 大型種を残して、月魔獣が全滅している。
 残った大型種も満身創痍。ただ動いているだけだ。

「やり過ぎだろ。他に仲間がいなかったからよかったものの」
 慌てて周囲を確認したが、見える範囲に仲間の姿は皆無だった。

『その辺は確認したぞ。まあ、最近よく喰ったからな。できるような気がしたのだ。……うむ、そうか。沢山喰えば、いまのように使える技が増えるかもしれんぞ』

 何を言い出すかと思ったら、属性技の考察をはじめだした。

「お前の技は周囲への被害が大きすぎる」

『喰えば喰うほど技が増えたらおもしろいであろう』

「駄目だよ。喰わせないからね」
 というか、まだ喰うのか。ただでさえいまは首周りがヤバイというのに。
 これ以上喰わせたら、タプタプザードになる。

 それと軽々しく属性技を使うと、仲間に被害が出たときに困る。

 以前も勝手に使わないよう厳命したが、再度思い知らせなければならない。
『シャラザードに出会ったら月魔獣の方に逃げろ』なんて言われたくない。

 属性技はすでに十分な技を持っているわけだし、必要になったら覚えればいい。
 いま必要なのは……。

「なあ、シャラザード。周囲への影響を押さえる練習をたっぷりしような」
 クロウセルトの町は、竜国の北方にある。

 北嶺地帯までひとっとびだ。あそこは人がいない。
 シャラザードの特訓をそこでした方がいい。

『いや我は、月魔獣をだな……狩るのに全力を……』
「特訓は決まりだ。ほら、大型種に止めを刺して、行くぞ」

 その後は何事も無く進み、日が落ちる前にクロウセルトの町に着いた。

「レオン、到着しました」
 報告とともに移動記録を提出する。竜による移動がこの世界では一番早いため、情報が先に届くということがない。

 ゆえに軍属の場合、自分の移動届を自分で運ぶこともある、
 そういったことが重なったことで、竜操者がどこにいて、どこへ行ったかのかは、自分で異動届を書いて出さなければならなくなっている。

 僕の場合、ソールの町からの移動なので、ソールの町を出た日付と印が押されている。
「はい、たしかに承りました。到着を歓迎します。レオン操者。それと移動中の報告をお願いします」

 もちろん移動途中の情報もまた、提出義務がある。
 通常は通行したルートと、その途中で何かあったものだけで良いのだが……。

「陰月の路手前にある宿泊施設で一泊しました。また、陰月の路で月魔獣約五十体と遭遇。うち大型種が二体確認しました。すべて撃破しております」

「すべて撃破? そ、そうですか。所要時間と被害状況をお知らせください」

「被害なしです。所要時間は……えっと」
「大型種相手に被害ゼロですか。さすがですね。それで?」

 記録官は、僕がかかった時間を言うのを待っている。

「所要時間は、一瞬……です」
「はっ?」

「シャラザードの属性技だったので一瞬で……その、終わりました」
「…………」

 嘘の報告をするわけにもいかないので、正直に答えた。
 月魔獣がいる場所へ到着するまえに結果が出てしまったので、それ以外の言い方がないわけで。

 なんとか内容をぼかしながら、一瞬で決着がついたことを伝えた。
「はあ……では、そのように記入しておきます」
「よろしくお願いします」

 到着早々、なぜか疲れてしまった。

 そして夜のこと。
 シャラザードが多雷杖を打ち込んだ場所が、竜操者の間で話題になっていた。

 どうやら巡回の途中で見つけたらしい。あのあたりの巡回がなされていなかったことで、月魔獣が大量に残っていたようだが、タイミング的に僕の方が先に見つけてしまったようだ。

 詳細に説明する竜操者の話を聞いて、みな僕の方をチラチラと見る。
 一応とぼけてみたが、誤魔化しきれなかったかもしれない。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ