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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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「竜国と技国の軍事同盟は、大きく二種類に分けられるのよ。ひとつが防衛共闘。つまり、どちらかの国が攻められたら、ともに戦いましょうというやつね。技国の一都市が攻められたら、技国と竜国が敵になる。そんな感じね」

「それってなかなか強固な同盟だよね」
 これではうかつに戦争を仕掛けられない。

「そうよね。もうひとつが軍事的協力。これによって、駆動歩兵が大量に陰月の路に派遣されたわ」
「それは聞いたことがある。駆動歩兵が戦闘経験を積むのにもうってつけだって」

「今でもかなりの数が動員されているわよ。でもそうすると、技国内の駆動歩兵が足らなくなるでしょ」
「そうだね。どうしているんだろう」

「それを竜で補っているのだけど、ここに裏があって、竜国から派遣されたのはみな、非戦闘型の竜操者なのよ」
「……えっ?」

「言ったでしょ。裏があるって。ちなみに技国も了承済み。竜国から派遣された竜操者は、通信、偵察、運搬をこれまで担ってきた人たちなの」

 商人仲間の情報網はどこにでも張り巡らせてあるらしく、これらの事実はすぐに多くが知ることとなったという。

 技国から戦える駆動歩兵を竜国に派遣して、大転移に備える。
 そのかわり竜を技国に派遣するが、彼らは竜国内で戦闘をしないタイプの竜ばかりである。

「パパがときどき使っていた走竜の竜操者も向こうに行っているわね。この前会ったのだけど、元気でやっていたわ」
「いいの? 非戦闘員なんでしょ。それで軍事的協力? 交換として成り立つの?」

「そのために防衛共闘があるのよ。連絡は竜がすぐに付けるでしょ。竜国から竜の大軍が後詰めに来るわ。そういう同盟」

 竜国は竜操者が足らなくなったが、何年、何十年と非戦闘員を続けてきた竜操者を実戦投入するのではなく、技国の駆動歩兵を当てたのだという。

 かわりに、非戦闘員の竜操者を技国に派遣してコキ使うと。
 竜国と技国が互いに得をする。そうなるように同盟の内容を作り上げたらしい。

「なるほどね。なかなかいいやり方かもしれないね」
 技国の防衛力が低下するが、それは竜国が後詰めでなんとかする。

 そもそも駆動歩兵は稼働時間が短いので、他の氏族領から何日もかけて運ばねばならない。後詰めには不利だ。
 それを考えると、すぐに援軍が駆けつけられる竜の方が何倍も使いやすい。

 他国からの侵略は監視だけに留めておけば、国境付近の費用も抑えられる。
 リンダが言うように、互いに得になる関係なのだろう。

「竜国も駆動歩兵の運用に見習うところがあるらしくて、軍部の受けもいいって聞いたわ」

「バックアップ体制のことかな」
 僕が女王陛下に僕が伝えたこともあって、注目していたのかもしれない。

 すぐ後方に拠点を作って活動するのは回天の時から導入したはずだけど、それだけでは付け焼き刃だろう。

 技国の洗練された運用を見習うのは、いい事のように思える。

「よく分かったよ。あとは魔国だけど……」

「魔国の情報は少ないわね。意図的に遮断しているというよりも、交流がなくなってきている感じかしら。そのかわり、商人仲間が言うには近いうちに……来るって」

「来るって……攻めてくるってこと?」
 リンダが頷いた。

「大転移によって魔国の穀倉地帯が駄目になるでしょ。それによって食料価格がどうなるのか、商人たちが何度も試算したのよ」
「でも完全に使えなくなるのには、数年かかるよね」

「今年だと四割程度の収穫量に落ち込むかしら。来年は二割あればいい方ね。再来年からはゼロ」
「……厳しいね」

「厳しいわ。今年の四割でも少し足らないもの。備蓄を取り崩して持たせたとして、来年には一部で餓死者が出るかもね。再来年からはじり貧。つまり、魔国の食糧事情はもう待ったなしの所まで来ているのよ」

「それは前から分かっていたよね。それで竜国と技国と商国にちょっかいをかけてきたんだし」
 そのどれにも僕がからんだからよく知っている。

「食糧があるうちになんとかしようと思うのは当然でしょ。……ということで、今年の収穫が終わる十月からが侵攻の時期じゃないかと言われているわ」

 なるほど、収穫が終わってからが勝負か。
 そのときは、雌雄を決するまで止まらない。

 魔国がどの国に攻め入るのか分からないが、それはもう避けられない運命なのかもしれない。

「わたしが言える話はこれくらいかしら」
「ありがとう、リンダ。十分だよ。いろいろ参考になった」
 さすが商人の情報伝達は素晴らしい。

「そう? それならいいのだけど」
「卒業式が終わったら僕はソールの町に戻るけど、リンダはどうする?」

「学院も休みになるし、わたしも一緒に行こうかしら。運んでもらいたい荷物もあるし」
「分かった。そういえば、学校の方はいいの?」

 リンダは僕と違って、王立学校に三年間通うのだ。
 いまも授業に出ずに商売をしているけど、留年しないのだろうか。

「補講と論文でなんとかかしら。もちろん試験はちゃんと受けているわよ。貴族の子息で領主経営している人なんかも、実家に戻ったりしているし、成績さえちゃんと取っていれば、卒業はできると思う」

 それに加えて、リンダが行っている商業活動をレポートとして提出することで、授業の変わりとなっているらしい。

 ちなみに試験はかなり難しいので、普段のリンダは家庭教師をつけて、仕事の合間に勉強しているのだとか。
 なかなかの才女である。

 とりあえず、リンダの誤解も解けているようだし、いろいろな懸案はなくなった。
 良かった良かった。そう思っていたら。

「そうそう、シャラザードの木像を彫って売り出すことにしたからよろしくね。貴族相手には『木彫りシャラザード』の立派なやつを。一般の民には『手乗りシャラザード』の簡易版を作る予定。あなたの木像も考えたのだけど、そっちはどうしようかしら?」

「僕のはやめてね、絶対に!」
 リンダは何を考えているんだ。
 危うく僕の像が出回るところだった。

「……ざんねん」
 そう言ってリンダは笑った。

 まったく油断も隙もない。


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