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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 リンダに聞きたいこともあるが、それは後回し。
 良い機会なので、伝えておきたいことを話す。

「シャラザードの怪我が治るまでは、月魔獣狩りに出ないつもりなんだ。だから卒業後は一旦ソールの町に戻ると思う」

「そんなに怪我が酷いの?」

「翼の状態が良くないね。たくさん食べて寝ていれば治るものだし、急がずに全快させるつもり。ちなみにそれまでは国が面倒見てくれるらしい」
 女王陛下のお墨付きだし、大丈夫だろう。

「分かったわ。療養先はソールの町なのね。わたしは拠点をソールとチュリスに作ったのよ。ソールの町に行くならそこを使えるようにするけど、どうする?」

 なるほど。シャラザードはただ食って寝るだけの生活になるが、他の竜がいない方がいいかもしれない。

「そうだね。お願いするよ」
「連絡を入れておくわね」

 これで卒業後の拠点は大丈夫だ。
 あとは英雄と今後の人生設計の件だ。これもしっかりと伝えておかなければならない。

「リンダは僕について流れている噂をどう思う?」
「あなたについての噂って言ったら、女王陛下の命を救って英雄様と呼ばれるようになったってことよね。最強の月魔獣を倒したんでしょ?」

「そうなんだけど、あれは誇張された話なんだ。もちろん内緒だけど」
 城の文官たちが誇張させて流した噂だ。

 戦意高揚とか、不安払拭という効果を期待しているらしいが、分かる人には分かっている内容。

「誇張でもなんでも、商人仲間は概ね好意的に受け取っているわよ。一部は偶然過ぎておかしいなんて言い出すのもいたけど。つまり作られた英雄ね」

「今後はどうなると思う?」

「あと一つか二つ、大きな戦果があれば、英雄譚も疑う人もいなくなるのかしら。そうしたらソウラン操者みたいに人気が定着するわよね」

 ソウラン操者はどこへ行っても騒がれるので、ああいった生活を送るには僕は向いてない。慣れるよりも精神が参ってしまいそうだ。

「僕個人としては目立たないでいたかったんだけど、ちょっと思うことがあってね。その英雄の噂を使って上を目指してみようかなと思うんだ」

「あら。どういう心境の変化かしら。昔からあなたはそういうのを嫌っていたようだけど」

「うん。今でも嫌いかな。けど、僕の将来設計……目標に関わることなんだ」
 僕は早期引退を目指す。つまり若くして勇退したいのだ。

 そのことをリンダに告げた。

 できるだけ早くパン屋を開くためには、だれもが目を見張るような戦果が必要だ。
 大転移はそれをなしえるのにちょうどいい。

 シャラザードは否とは言わない……というか、嬉々として月魔獣狩りに出かけるだろう。
 僕の意志も固い。あとはパトロン……つまりリンダの後押しがあればいい。

「そうね。わたしは構わないわよ。いまは大転移でしょ。結局は戦いに赴かなければならないわけだし。でも大丈夫なの? 多大な戦果を得るには危険がつきものよ」

「できる範囲でやるよ。それにシャラザードがいるしね」
 死んだら元も子もない。

「そういうことならバックアップは任せなさい。大転移が終わったら、利子を付けて返してもらうけど」
「ありがとう、リンダ」

 これでリンダの許可も得た。利子付きはちょっと怖いけど。

 そうすると、隠居先も早めに決めておきたい。
 七大都市ではなく、なるべく小さな町がいいな。

 湖の近くとか、森の中とか自然が溢れるところでパン屋を開く。
 開業資金は、今まで集めた月晶石の代金もある。〈影〉の報酬や、卒業後はルッケナ商会からも毎月給金がもらえる。

 その辺を加味すれば数年でなんとか土地を買って店を建てて……うん、開業できるくらいの資金を貯められそうな気がする。

 あとは運転資金だけど、それは……もう少し頑張ろう。

「しかし……シャラザードがいるのに勇退って。まあいいけど」
「もちろん勇退しても定期的に月魔獣は狩りに行くけどね。シャラザードを退屈させないように」

 その辺はシャラザードと話し合いだろう。
 でもこれで懸案は片付いた。あとは実績を残すのみだ。

「他になにかあるの?」
「僕については以上だけど、あとは聞きたいことがいくつかあるかな」

「聞きたいこと? あなた商売に関心が……あるわけないわよね。何が聞きたいの?」

「占領された西の都。どうなったか分かる?」
 僕が潜入したときは、魔国軍に占領されていた。あれからどうなっただろう。

「西の都ね……占領されていたのはもう結構前の話よ。いまはもぬけの殻ってところね。魔国軍は自国に撤退したわ。西の都は商国の手に戻ったようなものだけど、都市自体は放棄されているわね」

「撤退したの? じゃ、なんのために占拠したんだろう」

「魔国軍の思惑なんてわたしには分からないわよ。……けれど、商国の富を狙ったのは確かでしょうね。それも失敗したけど。ねえ、知っている? 西の都には脱出通路があったのよ」

「へえー」
 さもありなん。あれだけ仕掛けを設置してあるのだ。
 脱出通路くらいあるだろう。

 リンダが商人仲間から仕入れた情報によると、魔国軍が西の都を攻めている間に、脱出路から商人たちが次々と逃げ出したらしい。

 防衛戦に参加していた傭兵たちも同様で、彼らもすべてそこから脱出してしまったため、その情報が外部に漏れたらしい。

 つまりその通路はもう使えないことになる。
 調べてみると、外からは開けられない仕掛けになっているらしく、かなり厳重なものであったという。

「同じようなのが東の都にもあるでしょうね。魔国軍が東の都を攻めなかったのも、それが原因のひとつよね」

「なるほど、労多くして益少なしか」

「商国の最奪還もなし。これは脱出路がバレたのと、一度陥落した都市はもう使いたくないという理由かしらね。商人たちはもう世界中に散っているし、もともと倉庫くらいしかないわけだから、なくても構わないんだと思う」

「結構あっさりしているんだね。……もうひとつ聞きたいんだけど、技国はどんな感じ? いまリンダはそっち向けに商売しているんだよね」

「そうよ。パパが北方方面に力を入れているし、私は南方。ソールとチュリスの町の両方から技国へ輸出しているわ。……で、何が聞きたいの?」

「そうだね。竜国との関係がどうなっているのかとか?」
「同盟を結んだんだもの、良好な関係を維持しているわよ。見た感じ、すべての氏族が好意的に接しているわね」

「意外だね。反竜国を打ち出している氏族もあったと思うけど」
「いまは実利があるからかしら。軍事的な協力関係を結んでいるのは知っているわよね」

「うん、もちろん」
「竜国から多くの竜が技国に常駐しているのだけど、これには裏があってね。これは話すと長くなるのだけど」

 裏がある? 竜国が技国を騙しているとか?
 いや、それだったら、リンダが知り得るはずがないか。

「裏って……何があるの?」
 おっかなびっくり聞いてみた。

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