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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 学院の授業で、早期引退した竜操者の話を聞いたことがある。
 月魔獣と戦った際に怪我を負った竜操者の話だ。

 戦えなくなった竜操者は、「勇退」として引退者と同じ扱いを受けたはずだ。

「制度にはなってなかったけど、暗黙の了解なのかな」
 引退とは文字通り、老齢に達して戦闘ができなくなったときに竜操者が選択する。

 年齢はさまざまだが、六十代後半から引退者が出始めるらしい。
 引退者も勇退者も、竜操者の義務を免除される。そう、免除対象者だ。

「義兄さんは考えることが違うな」
 ちょっと尊敬した。

 大転移が終わって国内が平和になったとき。
 それまでに人の数倍、数十倍……。

「いや、数百倍の月魔獣を倒せば、若くても勇退できるんじゃ?」

 平和な時代の到来とともに、英雄はただ消え去るのみ……。

「うん、これだ!」

「何がこれなんッスか? というかレオン先輩、久しぶりッスね」
 寮の部屋に戻ったらクリスに変な顔をされた。

「やあクリス。懸案だった問題に解決の糸口が見えたんだよ」
「そうッスか。良かったですね」

「レオン先輩は任務の帰りですか?」
 後輩のレゴンが聞いてきた。

「中身は軍事機密だけどね」と答えたら、二人に感心された。
 一応軍事機密だよな。たぶんだけど。

「今更だけど、クリスもレゴンも中々先輩らしいことをしてやれなくて済まないね」

「いえ、いいんッスよ。レオン先輩と同室ってだけでみんな羨ましがるッスよ」

「アーク先輩からも、あれはもう一人前以上の戦力だから、ここで操竜術を学ぶ必要がないって言ってましたし」

 操竜術というか、編隊行動だな。
 小型竜の場合、どうしても編隊単位での行動になるから、他の竜操者に迷惑をかけないため徹底的にしごかれる。

 それと実戦経験。
 訓練ではどんなにうまく編隊行動ができても、実戦で崩れてしまっては意味が無い。

 一戦するごとに課題点が出てきてそれを訓練で矯正する。
 実戦で確認しつつ、さらに課題点を見つけ出す。

 そうやって一年間が過ぎていくらしい。
 中型竜の場合、小型竜と組むことは少ないので、年度の後半からは単独狩りの練習に明け暮れる。

 ただし今年は、編隊を組んで大型種の討伐訓練が課せられたと聞いている。
 シャラザードの場合、他の竜と組むと危ないので、どのみちやることはないのだが。

「クリスたちは、竜には慣れた?」

「長距離移動が苦しいッスね。どうしても注意力が散漫になるので、気を抜くと編隊が崩れるし、突然の敵襲にもアタフタしちゃうッス」

「陰月の路を移動しているのか。竜を得たばかりで大変だよな」
「でも一回生も、今年は早めに実戦投入があると言われましたので」

 レゴンの言葉に納得する。大転移で竜操者が足りないのだ。
 新米の彼らも戦力として投入するつもりらしい。

「大変だよね」

「同学年のアンネラなんかもう向こうに行きっぱなしですからね。それに比べたら寮のベッドで寝られるオレらは幸せですよ」

「そっか、アンネラはもうそっち組か」

 僕と同じだ。戦闘はターヴェリ任せなんだろう。
 アンネラは指示をするだけでいいはずだ。

「ということは、アンネラは寮にはいない?」
「いないッスね」

「帰ってくるのはだいたい五日に一度くらいです」

「なるほど、それはまた大変だな」
 シャラザードの雷玉が擦って怪我をしたはずだが、回復できたのかな。

 外傷はそれほどないはずだから、治りも早かったのかもしれない。

「そういえばレオン先輩。手紙が来てましたよ」
「へえ。リンダからかな」

 学院に手紙を届けられるのは、家族かリンダくらいしかいない。
 見なれた封筒なので、リンダからだ。

 そういえばもうすぐ卒業だし、実家に手紙を出した方がいいな。
 できれば父さんに鍛え直してもらいたい。

 僕の場合、潜入捜査が多いので、戦闘力よりも気取られずに近づいたり、魔道をかいくぐったりする訓練が多かった。

 幼少時から鍛錬を続けてきた武闘派と戦ったり、対人魔道専門と真正面から戦ったりすると、どうしても分が悪い。

 その辺を想定していなかったというか、そういう事態になる前に逃げる予定だったのだからしょうがない。

 学院に通っていたこの二年間で、月魔獣との戦いを含めて、戦闘力アップの必要性を痛感させられた。
 とすれば、特訓相手は父さんしかいない。

 あとで手紙を書いておこう。
 卒業式後に帰るから、特訓の相手をしてくれと書けばいいかな。

 問題はリンダからの手紙か。
「……いつも手紙をくれるときって、リンダが怒っているときなんだよなぁ」

 おそるおそる封を切る。

「………………」

 中身を読んだ。
 要約すると、シャナ牛の費用を国が持つって言ってきたぞゴルァ、いま南方にいるから王都に向かうぞゴルァ、手紙が届く頃には家に着いているからこれを読んだら会いに来いゴルァと書いてある。

「……うん、読まなかったことにしよう」
 文体こそ丁寧だが、文脈からヒシヒシと伝わってくる巻き舌感が怖い。

「何が書いてあったんッスか?」

「えっ、いや。リンダからだったんだけど、久しぶりだねって。それから近況を知らせてほしいって」

「ああ、そうなんッスか。リンダさんって、あれですよね。レオン先輩がアルバイトしているパン屋によく顔を出しているんですよね」

「えっ、そうなの!?」

 初耳だ。
 いや、たしかに僕が『ふわふわブロワール』でアルバイトしているのはリンダに知られているけど。

「よく買いに行っているらしいッスよ。アーク先輩がそんなこと言っていたんで」
 マジか。

 ということは、僕が帰ってきた事が早晩バレるってわけか。

 僕が手に持っているこの手紙。
 文脈から「分かってんだろうな、ああん?」という雰囲気が伝わってきている。

「……会いに行かなきゃだめかな」
 知らんぷりすると後が怖い。

「……はぁ」
 僕は大きく息を吐き出した。
 問題がひとつ解決したと思ったらこれだ。

 それをクリスとレゴンが心配そうに見つめている。
 パトロンからの手紙を見て、憂鬱なため息を吐いていたら何事かと思うよな。

「いや別に喧嘩してないからね」
 一方的に僕が怒られるだけだし。


表記が1話ズレていたので直しました。
エイプリルフールネタが入っていたからですね。

それと、告知通り本章はゆるゆるとスタートしています。
殺伐としていませんよね!
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