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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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「よく来たわね、レオン。なかなか目を覚まさないから心配したのだけど、その様子だと平気みたいね。ひとつくらい引っかかってもいいのよ」

 その様子って……アレに引っかかるのを期待していたのか。
 王宮内に技国式の仕掛けが増えていて、ちょっと焦ったのだ。僕対策じゃないよな。

「技国との友好が深まっているようで、嬉しい限りです」

「魔道使いがホイホイかかるという触れ込みだったのだけど、駄目だったわね」
「なかなかに優れた仕掛けだったと思います。僕の場合、機械式の仕掛けには慣れがありましたので」
 そう謙遜しておいた。

「まあいいわ。それでレオン、これまでの状況は聞いていて?」
「いえ、いまだ事情を知る人に会っておりませので」

 シャラザードとターヴェリの激突は、秘密裏に行われた。
 本来ならば、余人に知られることなく終わるはずだった。

 回天の終了や、支配種の降下とかち合わなければ、うまくいったはずだった。

「妾たちは大転移に備えて、陰月の路をこの目で確認しに行ったことになっているの」
「はい。そのためにソウラン操者を呼び寄せたわけですね」

 アンネラが先行して、女王陛下の一団があとから向かったのだ。最後は僕。
 この順番が違うと、シャラザードとターヴェリが、予想外の場所で激突する危険性があった。

 そして一緒に行動していないように見せかけたのには訳がある。

 まず、シャラザードとターヴェリの確執は外に漏れてほしくない。
 当たり前だが、強力な竜が反発し合っているというのは外聞が悪い。

 我が国に来ませんかと勧誘されたりする。
 さすがに面と向かってはやってこないだろうが、搦め手で来られることもあるので、仲が悪いことは伏せるに越したことがない。

 幸い、シャラザードとターヴェリの会話は他の人には分からないのです。

 つぎに、属性竜が四体すべて陰月の路に行ってしまうのは防衛上よくない。
 もちろん女王陛下の行き先はいつもトップシークレットであり、いつ出かけていつ戻ってくるかは予想がつけられないようになっている。

 ときおり散歩に出かけるが、早朝出立することもあれば、今回のように夜に出ることもある。
 決められたコースもないので、戻ってくる時間もバラバラである。

 安全上、そういう配慮がなされているため、僕らと一緒にいる姿を見られない限り、何かあったか予想つけられる人はいないはずである。

 そのくらい気を使っていたのだ。
 回天と支配種の件を含めて、口を滑らせるわけにはいかなかった。

「ちょうど陰月の路に達したときに回天が終わって、妾たちが巻き込まれました」
「そのように発表されたわけですね」

 女王陛下が頷く。
 なるほど、女王陛下が王都を空けていた理由は、そう説明したわけか。

「帰還する途中に、月魔獣の支配種の降下を確認、交戦状態に入った感じかしら。そこへ同じく陰月の路から王都に向かう途中のレオンとアンネラが助けに入って、支配種と交戦。それを撃退……そんな感じかしらね」

 僕とアンネラが一緒にいた理由は、アンネラが属性竜を扱う上で、同じ属性竜を操る僕が教えるのが適任だかららしい。

 陰月の路にいたのは、実戦形式で月魔獣を狩りながら僕が指導していたのだと。
 帰り道に遭遇したのは偶然という筋書きなわけだ。

「……それでですね。なにやら、僕が英雄と呼ばれているのですけれど、これについて、僕に心当たりがないのですが」

 あの日の流れは大体分かった。
 問題は、なぜ僕が英雄なんて呼ばれているかだ。

 悪評は数あれど、英雄と呼ばれる心当たりはまるでない。

「そうね。その話をするには、竜国の現状を理解してもらう必要があるわね」
「はい?」

 竜国の現状……意味がワカラナイ。

「大転移の被害予想は前から出来ているのだけど、月魔獣の大量降下というのは、想像以上に大変なことなのね」
「学院で少しだけ習いました。通常の十倍から十数倍の月魔獣が降下するのですね」

 月魔獣を小石にたとえると、通常はひとつまみの月魔獣が落下する。大転移のときは、ひとすくいだ。

 地面にひとつまみの小石を落とすのと、ひとすくいの小石を落とした差はどれほどだろうか。
 少なくとも、いま組んでいる五騎から十騎の編隊では対処できない。

「そうね。それを民に隠したとしてもすぐに広がるわ」
 空から落ちてくるのだ。遠目にも見えるし、竜操者が対処できなければ、隠したところでバレる。

「学院では、魔国がやっているのと同じ対処法が有効と習いました」
 つまり月魔獣が体内に持っている月晶石が空になるまで放っておく。
 人里近くに現れたもののみ対処する作戦だ。

「巡回して見つけ次第殲滅できなくなるのだから、それしか手がないわよね。でもそうすると、民は不安がるのよ」

 竜操者だけでは対処できませんと言っているのだからそうなるだろう。
 大転移は今までとは違う。それは分かっていてさえ、不安に思うのは避けられないはずだ。

 そして最大の問題。
 大転移は竜国だけの問題ではないのだ。

「他国から月魔獣だけでなく難民の流入が考えられますし、治安の悪化は避けられないと思います。そして何より、魔国がいま機能していないのが最大の問題でしょうか」

「そう。よく分かっているわね、レオン。というわけで、民には英雄が必要なのよ。それも全ての負の面を吹き飛ばすような英雄が」

「えっと……もしかしてですが、それを僕に」
 押し付けたのでしょうか。

「支配種を撃破したのはいい宣伝材料よね」
「僕だけがやったわけではありませんが」

 アンネラたちのの協力技だ。しかも僕らは気絶してしまったわけだし。
 というかいま、宣伝材料って言った!

「細かいことはいいのよ。支配種すら倒せる竜の存在。これは明るいニュースだわ。魔国首都陥落の知らせは、もう隠しようがないもの。竜国に支配種を倒せる竜がいるだけで、人々の顔は明るくなるわけ。つまり、困ったときのシャラザードね」

「こ、困ったときのシャラザード」

「今まで傍若無人だとか言われていたけど、実力を疑う人はいないわ。それがいま脚光を浴びるのよ。最強無比。どこへでも出張して月魔獣を殲滅。これほど明るいニュースはなくて?」

「そ、それは……その話が真実ならば最高でしょうが、現実的ではないように」
「大丈夫よ。真実にすればいいのだから」

 いや、それはどうなんだろう。
 ……ってか、女王陛下。分かっていてやったな。

 僕が寝ているのをいいことに、既成事実として広めたんだな。
 どうりで宿泊施設の使用人までもが知っていたはずだ。

「もしかしてその話、広めました?」
「もちろん」

「ど、どの程度でしょう」
「大々的にかしら」

「……………………」


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