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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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「……えいゆうさま?」
 一体なんの話をしているのだろう。

 それよりも現状把握だ。
「あまり記憶がないのですけど、僕はどうやってここに来たんでしょう」
 そもそもの記憶が曖昧だった。

「回天が終わった日でした。巨大な二頭の竜がここを目指して歩いてきたのです。一頭はえいゆうさまの黒竜で、もう一頭は赤竜でした。竜の身体がボロボロで、何があったかと心配したのですが、お二人はすぐに倒れるように寝てしまいまして、事情を聞くに聞けず……」

 自力でここまで来たのか。
 人竜一体が解除できなくなったのは覚えている。

 魂でつながっていた状態から、がっしりと捕まれて離れられなくなった感じだった。
 その時ここを目指して歩いていたんだな。

「アンネラ……赤竜の竜操者はどうしました?」
「一晩寝たら回復されたのでしょう。翌日、飛び立っていかれました」

 アンネラは王都に向かったな。
 他に行く場所はないはずだし、学院に戻ったのだろう。

 僕やアンネラが無事ということは、支配種を倒した可能性が高い。
 倒し損ねていた場合、僕などは生きていなかったはずだ。

 とすると、翌日ここを経ったアンネラは、女王陛下から何か言い含められていた可能性があるな。

「僕はどのくらい寝ていましたか」
 何度か目を覚ました記憶があるので、数日間はここにいたのだと思う。

「ここに来られてから今日で……十五日目でございます」
「十五日!? 本当ですか?」
「はい。いま計算してみましたが、たしかだと思います」

 驚いた。半月も寝ていたわけか。
 四、五日くらい経っているかと思ったけど、まさか十五日も経っていたなんて。

 いろいろ心配だ。すぐに王都へ戻ろう。
「えっと、いまここは、僕の他に竜操者はいないんですよね」

「大転移に対処するため出ております。ここへ戻ってくるのも一日おきになります」
 竜操者は大忙しか。

「ありがとうございました。僕は早速王都に戻ろうと思います」
 大転移のこと、支配種のこと……この人にいろいろ聞きたいことはあったが、ここから出ることがない分、情報は制限されているはず。

 正確な情報を知っているとは思えない。
 どうせ聞くならば、王都で聞いた方がいい。

「ああ、でも一点だけ教えてください。その、えいゆうさまっていうのは、何ですか?」
「陛下をお救いになったから呼ばれていると聞いております」

「はい?」

 どういうことだ?
 ここで詳しく聞きたいが、女王陛下と話のすり合わせができていない。
 今回、ターヴェリとの決戦も秘密裏に行うと女王陛下に言われて、王都を出る時間をずらしているくらいだ。

 公式発表と僕の話が食い違うのはよくないので、いま余計なことは言えない。

 僕はお礼を言って、建物の外にでた。
 竜舎の方へ歩いていくと、シャラザードが寝ているのが見えた。

 身体を丸くして、じっとしている。
 見て分かるが、まだ羽の修復が終わっていない。

 身体の傷はふさがっているだけでも幸いか。
 あの大風の渦に二回も入ったのだ。よく生きていたと思う。

「シャラザード、元気だったか」

『……主よ、ついに起きたのだな』
「シャラザードも僕が寝ていたのを知っていたのか?」

『主の居場所は分かるからな。まったく動いてないから寝ていると予想した。我もまだ本調子でないゆえ、同じようなものだ』

 人竜一体の技で僕もシャラザードも同じように怪我をした。
 僕の方は体力的な消耗が多い感じだが、シャラザードは嵐の渦に突っ込んだ影響が出ている。

「すぐに王都まで行きたいんだけど、飛べるか?」
『無論だ……と言いたいところだが、羽がまだうまく動かん。普段の速度は出せんな』

「それで十分だよ。途中で墜落したりしないよな」
『当たり前だ。我がそんなヘマをするわけがないであろう』

「だったら行こう。確認したいこともあるし、何よりいまの情報が知りたい」
 大転移が始まって竜国がどうなったのか。
 そもそも回天が終わった影響で月魔獣の大量降下があったはずだ。

 被害はどうなったのだろう。

『ならば、腹ごしらえをしてから行くか。その方が傷の治りが早いのでな』

 シャラザードがひと声鳴くと、竜務員がシャナ牛を連れてきた。
 僕が鞍の準備をしている間に、二頭のシャナ牛をぺろりと平らげていた。すごい食欲だ。

『我の準備はできたぞ、主よ』

 竜務員の人が驚いてないくらいだし、シャラザードは傷を治すためにずっとこんな生活をしていたのだろう。

「よし、僕の方もできた。王都に向けて出発しよう」
 僕らは空へ舞い上がった。



 王都までの空の旅。
 羽の修復が終わらないため、いつもの半分も速度が出ていない。

 到着が半日くらい遅れても構わない。
 早く知りたいこともあるが、いまはシャラザードの回復を優先したい。

「なあ、シャラザード。僕が寝ている間は、なにをしていたんだ?」
『怪我を治すために、我もずっと寝ておったな』

 僕と同じか。やはり相当傷が深かったのだろう。
 この場合、他の竜に迷惑をかけていないだけ良かったと思うべきか。

「そういえば、他の竜はみな出払っていたようだね」
『うむ。寝ていたのでよく分からんが、ときおり戻って来ても、すぐに出て行ったな』

 宿泊施設は普段、竜が常駐している。
 それがいないのだから、よほどのことだ。

 竜操者はみな陰月の路に行っているか、町の防衛を担っているのだろう。
 早く事情を知っている人に会いたい。

 よくないこと、いろんなことを考えて、気が焦ってしまう。
 かといって、シャラザードを急かすわけにもいかない。



 忍耐の飛行を終えて、ようやく王都が見えた。
 破壊されているようには見えないので、王都は無事だったようだ。

 王城の北にある操竜場に向かう。

「ここも竜が少ないな」
 回天の頃はあれだけいた竜だったが、ほとんどいなくなっている。

『どこに下りる?』
「いつもの場所に向かってくれ」

『あい分かった』
 閑散とした操竜場に着陸すると、竜務員たちが駆け寄ってきた。

「すぐに行くところがありますので、シャラザードをお願いします」
「これは英雄様。分かりました。行ってらっしゃいませ」

 またそれだ。
 僕は女王陛下を救った英雄らしいが……女王陛下から詳しい事情を聞かねばならなさそうだ。

「……それと、僕が戻ってくるのが遅れる可能性もあります。もしシャラザードがシャナ牛を欲しがったら与えてください」
「かしこまりました!」

 怪我を治すため、また欲しがるかもしれない。
 ほぼ一日飛んだことだし、腹も空いていることだろう。

「シャラザードは怪我をしていますので、それ以外はそうっとしておいてください。おそらくずっと寝ていると思いますので」

「はい、承りました」
「ではよろしくお願いします」

 シャラザードもそうだが、餌のシャナ牛が欲しいとき、竜は決まった動作をすることになっている。
 シャラザードの場合、自分の意思で調整できるが、こっちで食べる間隔を空けてやらないと、好きなだけ食べようとする。

 以前、技国で甘やかされたときは困った。
 あまりにホイホイ餌を与えてくれたものだから、プヨザードになりかけたのだ。

 まあ、今回は怪我の治療もあるので、ある程度は仕方ないと思うことにする。

 時刻はちょうど夜。
 僕は人目につかない場所に赴き、そっと闇に溶けた。

 女王陛下に会いに行こう。


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