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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 闇からの奇襲を得意とする僕からすると、その戦いは途方もないものだ。

 戦場を覆うような大竜巻ができたときにはどうしようかと思った。
 脱出は難しい。そうシャラザードが言ったからだ。

 シャラザードはあえて逃げだそうとはせず、自らの技で迎撃を選んだ。
 一目で分かった。あれはシャラザードが防御の時に使う技だろう。

 荒れ狂う風の中に差し入れた雷壁らいへきによって、周囲に巻き起こっていた嵐の渦は消滅した。

「すごいな、シャラザード」
『ふふん。当然だ。あやつの力はその程度。次は我の力を見せてやるわ』

 いつもの鼻高々のシャラザードがそこにいた。

「何をするんだ?」
『まあ見ておれ』

 シャラザードの身体が放電をはじめた。

 湧き出す稲妻が集まり、ある形を作っていく。

 矢の先端のようなと表現すればいいだろうか。
 稲妻が集まって、先の尖った槍ができあがった。

雷槍らいそうだ。我はこれで数多の敵を屠ったものよ』
 自慢げな声から、相当の自信がうかがえる。

 その「敵を屠った」というのは、月魔獣のことだよな。
 ちゃんと確認しておきたいが、怖いのでやめておくことにする。

 見ている間に槍の数が増えていった。
 槍のひとつひとつが巨大にもかかわらず、それが五本、十本と数を増していく。

「おい、シャラザード。どんだけ作るつもりだよ」

 相手を何度殺し尽くすつもりだ。
 槍の一本が当たっただけで、中型竜ならばそのまま昇天しそうなほどのエネルギーなのだが。

『ふん、あやつも馬鹿ではない。どうせ……やはりな。すぐに対抗してきたか』
 ターヴェリの周囲に、嵐の槍が浮かんでいた。

 シャラザードの雷槍に対抗したのだとすぐに分かった。
 嵐の槍の先端をこちらに向けている。

 あれがただの風の集まりとは思えない。
 それはシャラザードの雷槍も同様だ。

 ともにたしかな質量を備えた破壊兵器にしか見えない。
 この戦い、早まったか? まだ序盤なのに強力な技の応酬だ。

「あれが直撃したらヤバそうなんだけど」
『当たらなければよいのだ。……いくぞ!』

 ドンッと、何かに押し出されるように雷槍がすっ飛んでいった。
 同時に嵐の槍もこっちにやってくる。

 こちらは雷の槍、相手は嵐の槍。
 両者は名状しがたい破裂音を残して、両者の中央で衝突した。
 見たところ、全体の七割が対消滅した。

 だが残り三割はというと……。

「わっ。わわっ!!」
 何本もの嵐の槍が、唸りを上げてやってきた。

 回避するだけで必死。
 それでも一本、二本と、シャラザードの身体に被弾していく。

「――ぐぁわああああ」

 全身を斬り刻まれる痛みに僕は悲鳴をあげた。
 腕と足を見るが、裂傷はできていない。今のは幻覚か?

『我と魂の深いところでつながっておるからな』
 シャラザードから、それだけを告げられた。

「おまえが受けた傷や痛みが僕も感じるってことなのか?」
 シャラザードが言いたかったのはそういうことだろう。

 人竜一体でシャラザードに守られているだけかと思ったら、そういうことだったのか。
 たしかに人と竜が一体となったならば、人も竜も均等にダメージを受けるのが正しい。

 正しいが、できれば事前に知らせて欲しかった。

「痛いな、これ。マジで痛いぞ」
 気絶こそしなかったが、悲鳴をあげてしまう程には痛い。

『あれだけ速いと全部は避けきれん。だが、それはむこうとて同じ』
 ターヴェリがふらついていた。雷槍が効いているのだ。

「見た感じは相打ちだが、こっちの方が勝っているか?」
『攻撃力は我の方が高い。ただし、打たれ強さはやつの方が上だな。次は反撃できん技を使うぞ』

「何をするつもりなんだ」
『説明は後だ』

 シャラザードは喋っている間もずっと雷を集めていた。
 雷玉らいぎょくを放つのかと思ったが、どうやら違う。

 雷というより、強烈な光だ。それがシャラザードに集まっている。

 しばらくすると、シャラザードの頭上に、弾けんばかりの光の渦ができあがった。

「お、おい。これ……ヤバくないか?」
 ただの光の渦なのに、先ほどの雷槍十本分……いや、それ以上の力を感じる。

天雷てんらいだ。やつはこの技を知らん。食らってみるがよいわ!』

               ○

「ターヴェリさん。あの多数の槍をどうするんですか?」
『あれは雷槍というのさ。しかし、坊やはあれほどの数を出せるようになったんだね』

「呑気ですね、ターヴェリさん。けど当たった死にますよ。ちょっと尋常じゃない力を感じます」

『あんたもアタシと魂でつながっているからかね。力の強さが見えるか。だったらこれも分かるだろ』

 ターヴェリの前に巻き起こった複数の風。
 それが収束し、槍の形を作り上げた。

「ターヴェリさん、これは!?」
『アタシの必殺技、嵐槍らんそうだよ。これ一本で、大型種を何体も突き刺したものさ。こんだけ数を出したのは久しぶりだねえ』

「そんなの相手に放っちゃ駄目ですよ! 死にますってば!」
『構いやしないよ。あっちは複数の雷槍を放てるんだ。こっちだって対抗しなきゃ、黒コゲさ』

「それでも、非常識過ぎますってば。死んじゃいますよ」
『大丈夫だって……っとやってきたね』

 音もなくせまりくる雷の槍。
 ターヴェリは雷槍に狙いを付けて、嵐槍を放った。

 嵐槍は周囲の大気を巻き込んで加速。
 両者の中央で、雷槍と衝突する。

 光と風、高音と低音が同時に響き渡り、ほとんどの嵐槍が消滅する。
 もちろん雷槍とて同様だ。

『おっと、打ち漏らしが来たね』
「きゃぁあああ、ターヴェリさん。回避してください」

 巨大な雷槍をいくら避けようとしても、それは難しい。
 雷槍がターヴェリの身体にいくつも突き刺さる。

『あがががが』
「うばばばばばばばっ」

 ぷすぷすと煙を上げて、ターヴェリの身体がよろめく。感電したのだ。
 アンネラの髪は逆立ったまま。

『や、やるじゃないか……』
「タ、ターヴェリさん、平気でした? わたし、まだ痺れているんですけど」

『なんとかね。どうやら奴が成長したと言ったのは間違いないようだね』
「勝てないですか?」

『馬鹿言っちゃいけないよ。アタシと奴じゃ、生きてきた年数が違うさ。くぐり抜けてきた死地の数もね。負けやしないよ』

「さすがターヴェリさんです。……でも、あれ。今度はなんですか?」

 力をもった光がシャラザードの頭上に集まっている。
 雷槍を数倍する力がひとつの塊となった感じだ。
 しかもまだまだ集まっていく。

『……あれはちぃとばかし、ヤバいかもしれないねえ』
「えええっ!?」

 苦しそうなターヴェリの声音に、アンネラは驚く。

『見たことのない技だ。きっとアタシがいなくなった後で開発したんだろう。しかもここで出してくるということは、自信があるに違いない』

「大丈夫ですよね、ターヴェリさん」
『まともに食らったら、身体に穴が開くだろうね。そのまま突き抜けるかもしれん』

「ちょ、ちょっと、どうしましょ!」

『対抗策はちょっと思いつかないねえ。さすがは攻撃特化の雷竜といったところか。だが、受けに専念すれば……』

「ターヴェリさん。なんか周囲の風が変です?」

『いま風を集めているから黙ってな。それを身にまとうよ。嵐鎧らんがいと言ってね……アタシのとっておきの防御技だ。これで無理なら負けだね』

「負け? だ、大丈夫ですか?」
『さあて』

 ターヴェリとアンネラが見つめる中、光の塊は頭上高く打ち上がり、直後轟音を響かせながら落下してきた。


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