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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 指定された場所に向かうと、赤、白、青の属性竜の姿があった。

 僕らが一番最後だったようだ。
 ほかに通常の飛竜がいるが、女王陛下の護衛だろう。

『あやつらを全部蹴散らせばいいのだな』
「よくねえよ! なんでそうなるんだよ!」

 シャラザードはなぜ全方位に喧嘩を売ろうとするのだろうか。

「おまえがターヴェリといろいろあるから、女王陛下がこの場を設定してくれたんだからな。絶対に他の竜に喧嘩を売るんじゃないぞ」

『ではババアを倒したら次に……』
「したら謹慎な。当分月魔獣狩りはできなくなるぞ」

『ぐぬぬ……し、仕方ないの。今回だけは許してやろう』
 なんでおまえが我慢している風なんだよ。

 僕らが近づくと、青竜と白竜が上昇した。赤竜もこちらを一瞥いちべつしてから続いた。

『ババアめ、挑発しおって』
 シャラザードがやる気を出してきた。この場合は殺る気か。
「僕らもいくぞ」

 他の飛竜は動かない。というよりも動けないのか。
 すでに飛竜には到達不可能な高度まで上がっている。

「地上はずっと下にあるけど……シャラザードが戦ったらそれでも被害が出るんだろうなぁ」

 シャラザードの属性は雷だ。雷玉らいぎょくひとつ打つだけで、尋常ではない被害を周囲に及ぼす。

 できれば使ってほしくない技だが、シャラザードは温存するつもりはないだろう。
 さてどうなるか。

『ババア! よく逃げなかったな』
『何を言い出すかと思ったら、ケツの青いガキが粋がるんじゃないよ』

 はやくも舌戦が始まってしまった。

『我の成長が分からないとは目が悪くなったようだな。そんな時代遅れのロートルなど我の敵ではないわ』
『まさか自分の戦績を忘れてしまったのかい。よくもまあ、そんな大口がたたけるもんだ』

『ふざけんな、ババア。老いて耄碌もうろくしてんのはそっちだろうが。泣いて謝るなら、許してやらんこともないぞ。我は寛大であるでな』

『そうかいそうかい。昔は泣いて謝っていた坊やだったけど、随分と偉くなったものだねえ。それとも、偉くなったのはその口だけかい?』

『上等だ! 今からその首、叩き落としてやるわ』

『ふん、だからやれるものならやってみろと言ってんのさ。それとも最近は、できやしないことを言うのが流行ってるのかい』

『んだと、ごるぁ!』

 シャラザードの言葉しか分からないが、何を言い合っているのか、大体想像できる。

 両者が一触即発になったとき、間に青竜が割り込んできた。
 ソウラン操者も無茶をするな。

「このまま戦うと乗り手が危険だ。レオンとアンネラは私の竜に移りなさい」

 まえにソウラン操者と戦ったときもそうだが、竜どうしで戦うと、生身の僕らは簡単に死んでしまう。

 僕がソウラン操者の竜へ移ると伝えようとすると、意外なところから声がかかった。

「あの……ターヴェリさんが言うには、竜操者を乗せたまま戦う技を使わないのかと」
 アンネラの言葉にソウラン操者の頭に疑問符がついた。

「なあ、シャラザードに乗ったまま戦う技っていうのがあるのか?」
 そんな技、僕も知らないのだけど。

人竜じんりゅう一体の技だな』
「何だそれは? どういう技なんだ?」

 合体でもするのか?
『魂が深いところでつながっておれば可能な技だ。我の背にいるかぎり、我が魂に守られていると思えば良い』

「どんな効果があるんだ?」
『人竜一体となれば主は硬い防壁で守られる。また属性技の影響を受けん』

 今ひとつ分からない。
 説明を聞いたところ、協力技で互いに影響を受けなくするために開発されたらしい。なんだ、協力技というのは。

「まあいいや、それを使えば僕とアンネラは背から降りなくていいってことだよな」
『その通りだ』

「ちなみに青竜や白竜は使えるの?」
『無理であろうな。この技が開発されたのは戦いも末期になってからだ。平穏な時代を生きた竜には使えん』

 なるほど。開発せざるを得なかった、つまり苦肉の策というやつか。
「よし、それでいこう」

 僕がソウラン操者に説明すると、驚きつつも理解してくれた。

『ではいくぞ』
 魂が引き出される。同時にシャラザードの魂の大きさを感じた。
 僕が包まれている。そんな気がする。

「強力な魔道を使うときの感覚に似ているな。これで人竜一体になったのか?」
『その通りだ。さあ目の前の奴を蹴散らそうぞ』

 シャラザードが吠えた。

               ○

 相手側の準備もできたようで、ターヴェリの全身がオーラに包まれているのが分かる。なるほど。あんな風に見えるのか。

 ここからではアンネラの顔は見えないが、きっと驚愕していることだろう。

『よし、まずは特大のを一発見舞ってやるか』
 シャラザードがとんでもないことを言い出した。属性技を使うつもりだ。

「大丈夫なのか? アンネラが即死とかしたら、シャレにならないぞ」
『人竜一体となっておれば、我らの技は人には届かん。問題ない』

「本当に本当だろうな」
『くどいぞ、主よ。我を疑うのか?』

「そうか……ならいいんだけど。心配になっただけで、疑ったわけじゃないんだけど……ん? あれは」

『チィ、やつめ。先手を取りおったな』

 ターヴェリを中心に風が渦巻いた。
 それは次第に大きくなり、上下のみならず横にも広がって……。

「うぉおおおっ」
 強風が吹き荒れた。シャラザードの身体が揺れる。

『ふん、風陣ふうじんを張ったか。こしゃくなことをする』
 突風は一瞬だった。だが、影響は大きかった。

 近くにいた青竜と白竜の姿がない。飛ばされたか?
 代わりに大竜巻がシャラザードとターヴェリを包むようにして巻き起こっていた。

「シャラザード、あれはなんだ?」
『風の防護結界だな。外から突入しようとすれば、我ですら苦労する』

「なるほど。安全な結界を風で作った感じかな。だけど、なんで僕らも一緒に取り込んだんだ?」

『大方邪魔が入らないようにであろう。それとこの風陣を狭めれば巻き込まれる』
「攻防一体なわけね。……ということで、どうするつもりなんだ?」

『風陣など、何度も見たことがあるわ。破るのは簡単だ』
 シャラザードは全身から雷を発し、目の前に巨大な壁を作り出した。

 バチバチと火花を発する雷の壁は、ものすごいエネルギーを秘めているようにみえる。

雷壁らいへきだ。これで風陣を遮断する』

 雷壁をスライドさせ、暴風うずまく風の中に無造作に突き入れた。
 水を張った桶をかき回してから手を差し入れた感じだろうか。

 強風は雷壁を素通りできず、弾かれ、渦を巻き、次第にそこで停滞していった。
 乱気流がおこるが、それも次第におさまる。

 大竜巻はその存在を滅し、穏やかな凪が訪れた。

               ○

「た、ターヴェリさん。風がなくなってしまいましたよ」
『おもしろい技を使うね。アタシの大風が跳ね返されるか。なかなか強固な壁だこと』

「大丈夫なんですか?」
『なに今のはほんの小手調べさ』

「地上が凄いことになっていますけど……」
 風の影響で大地がえぐれていた。

『ほんのり跡がついたくらいで何を言ってるんだい。いいかい、本番はまだまだ先だよ……ほら、ぐずぐずしているから、坊やが次手を打ってきた』
「えっ?」

 巨大な雷の槍が数十も空中に浮いていた。
「う、うそですよね……あれ……ははっ」

 一本だけでも小さな町くらい壊滅しそうに見える。
 なにしろ雷の槍は、ターヴェリの身体と大きさがそれほど変わらないのだ。

 それが数十本、こちらに狙いを定めている。

『さあて坊やがどれだけ成長したのか、見せて貰おうじゃないか』

 ターヴェリの絶望的な言葉がアンネラが耳を疑った。
「ターヴェリさん、あれを見て、なぜ平然としているのですか?」


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