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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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「資料を届けるのが指令でしょうか?」
 わざわざ寮から僕を呼び出して、配達の指令? それって緊急なのか?

 旧王都は忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の本拠地だし、飛竜でないと中に入れない。
 配達できる人はかなり限られるわけだけど、なぜ僕が?

「配達は目的のひとつね。あなたが持ち出した資料。これは『楽園』について書かれていたものだと分かったわ」

「古代語で書かれていた資料だと思っていましたが、『楽園』の情報だったのでしょうか」

『楽園』は旧王族が移り住んだ場所で、そこを捜している民が『霧の民』や『潮の民』として西や東に散っていったはずだ。
 古代語で書かれていたということはその民の情報だろうか。でも『楽園』とは微妙に違う気がする。

「あなたが持ち出したこの資料だけど、二種類のものがあったのよ」
 女王陛下は笑みを深めた。なんだろう。女王陛下が何か企んでいないかな?
 少しだけ背筋が寒くなった。

 女王陛下は続ける。
「城の研究部所に解読を頼んだのよ。古代語で書かれていた部分は、ある程度のことは分かったわ」

 実はこの古代語というやつは、翻訳するのに相当苦労するらしい。
 ひとつの語が複数の意味を持つなんてのはザラにあって、前後の状況によって訳していかないとまったく違う文になってしまう。

 それどころか、時系列がごちゃごちゃしていることが多く、一体いつのことを書いているのか曖昧になっていたりする。

 よほど慣れた者でないと、スラスラと訳せないのだ。
 少なくとも、単語を知っているレベルの場合、確実に誤訳する。

 女王陛下が言うには、僕が持ち出した資料は、かつて旧王都で書かれたものであろうと。

 それがなぜ商国にあったのかは不明だが、訳した結果からいうと、かつての五会頭の『魔探またん』が『楽園』探しを行った根拠となる資料ではないかと思われるらしい。

「現存する資料が一部しかないのかしらね。情報が少なくて正確には訳せないみたいだけど、こう書かれているわ。深き穴の底に沈みゆく先にそれはあり、明るき目指す先は天の頂……」

「えっと、まったく分かりませんが」
 上にあるのか下にあるのか。誤訳してるよ、それ。

「そうなのよ。でも『魔探』はこれでピンと来たようね。そしてもうひとつの資料。これはつい最近書かれたものみたい。つまり、いまの五会頭ね。大事なところが符丁で書かれているから解読できないわ。けど、符丁のもとになっているのも古代語」

 これを書いた人は古代語に通じていて、しかも『楽園』のありかを記しているのだと。ただし、肝心な部分は符丁になっていて分からないというもどかしさらしい。

 符丁とは何かと聞いたら、「一番の先を抜けて二番の下に三番がある。そこを抜けると『楽園』の四番に通じている」のような書き方らしい。

 この一番とか二番にあたるものは完全に予想できないようになっているらしく、現時点では不明。ただし、それ自体が古代語をベースにしているので、旧王都の研究室で解読を頼みたいということらしい。

「これを魔国が占領している西の都から持ってきたのよね」
「はい」

「魔国が短時間でこれを解読できたとは思えないの。商国にこれを書いた者がいるはずなのよ」
「それは……商国が『楽園』のありかを掴んだということでしょうか」

「ええ、そうよ。だから一刻の猶予もないわ。商国はいま東の都のみ。そこを見張らせることにしたわ。妾たちもこれを解読した方がいいわよね」
「はい。そう思います」

「というわけですぐに行って頂戴。ついでに周辺の月魔獣も退治してほしいの」
「分かりました。それはシャラザードも喜ぶと思います」

「シャラザード……報告は聞いたわ。ターヴェリの仲が悪いらしいわね」
「……はい」

「近いうちに場を設定するからやらせましょう」
「はっ?」

「一度思いっきり戦わせてみたらいいと思うの」
「えっ……いや。それだと被害が」

 互いに殴り合ってわだかまりを無くそうということかな。
 周囲に与える被害についてはどう考えているんだろうか。

「大丈夫。そのときは妾も出ようと思うの。あともうひとり。せっかく属性竜が四種揃ったんですもの。一同に顔合わせしてもいいと思わない?」

 シャラザードたちの話を総合すると、属性竜のうち上位種となるのは五種。
 岩竜がんりゅうを除き、いま竜国に四種までもが揃っている。

 たしかに顔合わせをしてもいいかもしれないが……り合うの?

「属性竜は全部で十種なんでしょう?」
「はい。水竜、雨竜、火竜、風竜、石竜と、その上位種の氷竜、雷竜、炎竜、嵐竜、岩竜と聞いています」

 水竜と氷竜は同時に出現しないとか聞いたが、こちらでは分からない。

「いいじゃない。好き放題暴れてもらいましょうよ」
「よくねえよ!」

 つい突っ込んでしまった。

 女王陛下も無茶なことを言う。
 素で突っ込んしまったわ。

 僕の言葉にも女王陛下は「ふふふっ、楽しみよね」と撤回する感じではない。
 きっと実現させるつもりだろう。

 ソウラン操者は反対しないだろうし……ということは四属性竜がどこかで顔を合わせるのか。
 気が重いな。

「……まあ、その話今度。とりあえず、旧王都に向かってくれるかしら」
「かしこまりました。すぐに向かいます」

 僕は恭しく頭を下げて、闇に溶けた。


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