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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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IF という夢をみた(4月1日ver)

 ――な、なんだってぇー!?

「……って、書類を盗まれた魔国王と側近たちが絶叫したんだ」

 僕の話に、クリスタン義兄さんは顔を歪めた。

「おれが女王陛下の〈右足〉で、おまえが〈右手〉だっけ?」
「そう。それで僕は竜操者でシャラザードの主人でもあるんだ」

「なるほどねえ……って、おまえ、いつ竜紋が現れたんだよ。手を見せてみろ。どこにも無いじゃないかよ」
 義兄さんが僕の手の甲をペシペシと叩いた。

「いや……だから、それはもし僕に竜紋が現れたらって話で」
 もしそうだったら、現実はそんな風に変わったんじゃないかと思うんだ。

「そもそもおれの義弟おとうとは竜操者でもなければ、その〈影〉ってやつでもないだろ」

「まあ、そうなんだけどね。でももしそうだったら、今頃竜国は魔国に対して優位に立てていたわけだし、技国も占領されてなかったと思うんだ」

「戦死した薔薇ばら姫がおまえの奥さんねえ」
「そう。初期の戦いで兄妹とも亡くなったんだよね」

「奇襲だったらしいしな。……でも妄想もそこまでくるといっそ清々しいな。おまえ、この国が残っていたら、本にしてみろよ」

「ああ、それはいいかもね。竜操者レオンの活躍記みたいな」
「ごめん。そんな妄想垂れ流し小説、絶対売れないわ」

「ひどいよ、兄さん。僕が真剣に竜国の未来を憂いて考えたのに」
「それは分かるんだけどな……それよりいつでも逃げられるよう、荷物をまとめておけよ。この町だってもう、安全じゃないからな」

 真顔になった義兄さんの言葉に、僕は頷く。



 昨年、魔国と竜国の小競り合いがなかなか終息せず、演習に出かけていた竜の学院たちに被害が及んでしまった。
 若き竜操者たちの大量死。

 竜国の民はそれを大いに悲しんだ。
 そして国民の反魔国感情に引きずられ、竜国が引くに引けなくなったときから、この坂を転げ落ちていったのだろう。

 あろうことか、竜国は一致団結、対魔国に向けた戦時体制を発令してしまった。

 直後、竜国の大兵力がウルスの町から打って出たのだ。
 魔国は大国とはいえ、魔道が使えるだけの国。

 征服は容易だと思われていた。
 そして戦端が開かれてから数ヶ月。舐めていたツケが一気にきた。

 魔国と裏で繋がっていた商国が竜国の通商破壊に乗り出したのだ。
 はじめはゆっくりと、すぐに大胆にそれは行われた。

 竜国の商人たちだけが町や街道で被害を受けたのだ。
 それを守るべき竜は、戦地へ飛ぶか、王都を守るために集められていた。

 竜国が事態に気ついたときには、流通の多くを商国に握られたあとだった。
 それでも魔国との戦争に勝利すれば問題ない。

 あとでゆっくり商国商人を排除すればいいと考えていたところに、技国で内乱が発生してしまった。

 その動きはあまりに速く、また激烈だった。
 内乱で竜国と親しかった氏族が軒並み狙われ、都市が次々と陥落していった。

 これも後で分かったことだが、魔国が裏で手を回し、商国が技国の流通を握っていたことで、情報が竜国に入って来なかったのだ。

 竜国が知ったころには、技国は内乱の真っ最中。大混乱を起こしていた。
 商国の陰謀であることはすぐに分かったが、竜国は介入するきっかけが掴めず、物資不足によって魔国との戦争も徐々に押され始めていった。

 とにかく戦うための物資が揃わない、足りない、前線に送られてこないのである。
 補給がままならない状態では、他国に攻め入ることはできない。

 これは拙い。まずは流通の立て直しを……と思っていた矢先、竜国に謀反の噂がチラついた。

 最重要容疑者として、ウルスの町の領主リトワーン卿を王都に召喚させようとしていたところ、まったく関係のないアクリの町から反乱の火の手が上がってしまった。

 対魔国および、技国の内乱終結のために準備をしていたところだった。
 ウルスの町に謀反の兆しが出たものの、竜も兵も西と南に散らしてしまっている。

 それでも竜国は反乱鎮圧に全精力を傾ければ、いくらでも立て直しができる予定だった。

 だが、技国が国内の覇権をかけた全面戦争に突入したことで、技国方面に張り付かせた兵を移動させることが不可能になってしまった。

 反竜国の政権が立ってしまえば、これまでの努力はすべて水の泡と消えてしまう。
 できるだけの援助を……と思っていたところで魔国が竜国に大侵攻をかけてきた。

 竜国はもうどこへ兵を派遣すればいいのか分からなくなってしまった。
 その間隙を縫って王宮に侵入してきた一団に、サヴァーヌ女王は王子、王女とともに呆気なく討たれることとなる。

 ――女王崩御

 この噂は大陸中を駆け巡り、竜国の戦線は縮小の一途をたどることになる。

 跡を継いだ王配アルヴァータは、内乱における政権の樹立を支持。
 同時に魔国に停戦の使者を派遣した。

 和平派の王配らしい行動であったが、これで竜国は全国土の四分の一を失ったのである。

 竜国と和平をおこなった魔国が、技国の内乱に介入し、内乱は早期に終結。
 その余波で竜国の経済は商国商会に完全に握られてしまっていた。

 そこへ回天がやってきたから、竜国の民はたまらない。

 商国の顔色を窺わなければ、竜の餌代すら揃えられない。
 ここで大陸の覇権をかけて魔国と竜国――を傀儡とした商国の一騎打ちが始まろうとしていた。



「でも義兄さん、逃げるって、どこへ逃げるのさ」

 西は魔国、南は商国があって無理。逃げられない。
 北ではいま最も激しい戦闘が行われている。

 唯一、東だけは逃げることが可能だが、いま竜国の東側は難民が膨れ上がって、食糧不足だという。

「山に逃げ込んで、そこでひっそりと暮らすってのはどうだ?」
「町から出たことがない僕には無理だね。そもそも、竜国はもうお終いだよ」

 今の傀儡政権も早晩崩壊するだろう。
 その後に来るのがどんな為政者か分からないが、少なくとも竜国民のことを思ってくれる人ではないはずだ。

「おれたちの未来は、呪国人と同じか」

「そうだね。魔国の民として生きていくか、商国の商会に使われるか。どちらにしろ、未来は真っ暗だと思うよ」

 僕がため息を吐くと、義兄さんは乾いた笑いを浮かべる。

「今から寝て起きると、おれが女王陛下の〈右足〉で、おまえが〈右手〉になってこの国を守っている……なんてことは起きないかね」

「まあ……無理だろうね」
 夢は夢。現実はいつも残酷だ。

 僕が見た夢は、儚い幻として消え去ってしまったのだから。

 義兄さんと話していると、外が騒がしくなった。
 僕と義兄さんが外に出る。

 突如、竜操者が逃げるように町の上空を飛んでいった。

「おい、レオン。あれ」

 義兄さんが指した方角に、巨大な月魔獣が群れをなしてそれを追いかけていた。

「あれが……月魔獣?」
「大型種だな」

 どうやら、回天の月魔獣が、ここソールの町にも来るらしい。
 僕は神ではない何かに祈った。


6時投稿のこれはエイプリルフールネタです。
もし、レオンくんに竜紋が現れていなかったら……というお話でした。

18時に通常の投稿します。
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