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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 敵戦力でヤバイのは今のところバシリスクのみ。
 かといって、魔国王を守るのがそれしかいないとは思えない。

 敵戦力の総量が分からないし、暗殺や殲滅の指令も出ていない。
 今回は戦わずに逃げるのが最良だ。

 問題は無事逃げられるかだが、
 さっきからいくつか方法が浮かんでは消えていく。

 光を発する魔道使いさえいなければ逃げられる。と言っても、部屋の奥に固まっていたので、誰がそうなのか分からない。
 顔を見ておけばよかったが、そんな時間があれば僕は石になっていただろう。あのときはすぐに隠れて正解だったはずだ。

「僕の魔道で使えそうなのがないんだよな」

 闇を利用して攻撃するのに、その闇を払拭されてしまうのだ。やりにくいったらありゃしない。

『闇刀』で後ろからコッソリと思ったが、対象が分からない。
 それに僕が視認していなければ、正確な場所に出現させることができない。

 僕が見える範囲にでれば、同じようにバシリスクからも見られることになる。
「かといって、闇雲に『闇刀』を出しても石化されるだろうしな」

 僕が一切姿を見せることなく、敵の魔道を無力化できればいいのだが、そうそううまい方法なんて……いや、まてよ?

「ある……にはあるか」

 僕の魔道はかなり便利なものだ。闇に溶けて移動したり、闇を伝って攻撃を届かせたりする。
 しかも負担が少ない。

 これにはちゃんと理由がある。
 僕の魔道はそこに『在る』闇を使っているからだ。

 一方、光を出すのはどうだろうか。あれは僕と真逆な魔道。闇の中に光を具現させている。
 だから最初、連続使用できないなろうなと予想できた。

 光の中にあって、その光を利用するだけの魔道ならばあれほど短時間で効果が切れるはずがない。
「とすると、勝機が見えてきたかも」

 ちなみに僕は、光の中で闇を出す魔道は使えない。そのため、この場で光と闇の対決みたいなことはできない。
 もう少し魔道がうまく使えるようになったら、そういうのも出来るのだろうか。相当消耗が激しそうだけど。

「僕の求めに応じ、いでよ『闇化生やみけしょう』」
 闇が切り取られ、小さな魔獣が姿を現した。形は地上にいるどんな獣とも似ていない。
 闇で出来た合成魔獣だ。

 大きさは僕の腰の高さくらい。数は……七体。
 うん、昔より出せる数が増えている。

 実はこれ、何かカッコイイ魔道ができないかと思って開発したことがあるのだ。
「まったく使えないんだけどね」

 ある程度自分の意思で動かせる影を考えて造ったのだけど、人形ひとがたを作らせたら不格好になったので、獣型にしたのだ。
 そしてこれ、攻撃も防御もできなければ、偵察もできない。

 何の意味があるのか。何もなのである。
 もとは闇、つまり影と同じなので実体がない。

 実体がないので何も影響を及ぼせない。つまり失敗作だ。
 なぜそんなのを造ったのか。若気の至りというやつである。

「これに乗って移動できたらなぁ……」
 そんな願いは届かなかった。何しろ実体がないし。

 ソファの影で隠れている僕とは違って、この『闇化生』で造ったキメラたちはてんで好きに動いている。
 当然敵からも見えるわけで、さっきから何度も強い光が照射されている。

 光が収まればまた姿を現すことから、敵の魔道が僕の魔道を打ち消すわけではないらしい。
 それと、さっきから周囲が石に変化しつつある。

 僕の『闇化生』で生み出したキメラを石化させようとがんばっているのだろう。
 だけどそれは無理だ。実体がないんだし。

「僕の黒歴史魔道がこんなところで役に立つなんて……」

 光の瞬く間隔が分かった。強い光、つまり僕の姿を浮き上がらせるような強烈な光の場合、数秒間は次の照射ができない。

 闇に溶けて逃げ出した瞬間に照射される危険があったが、この隙間を狙えば部屋から脱出できる。

「よし、キメラたちにもっと暴れてもらおう」
 僕は闇にとけてその時をまった。

 急に慌ただしく動き出したキメラたちに、魔国王の周辺が慌てたようだ。
 今までの状況から無害っぽく見えているだろうが、完全ではない。

 王に襲い掛かってくるならば、迎撃しなければならないだろう。
 さすがに「無害っぽいから無視しましょう」とは誰も言わなかったようだ。

 強烈な光が部屋を満たした。一気にカタをつけるつもりだ。
 僕はソファの影で光が収まるのを待つ。そして。

「いまだっ!」

 闇に溶けたまま、部屋の出入り口を目指して疾走した。
「侵入者、逃げます!」

 声が聞こえてきたがもう遅い。
 次の光が照射される頃には僕はもう、廊下に出てしまっていたのだから。

「やーい、やーい」

 久しぶりに黒歴史魔道を使ったからだろうか。
 僕の心も少年の頃に戻ってしまった。いや、いまも少年か。

 なんにせよ、危機は脱した。
 そして、さらば、バシリスク。もう二度と会いたくないわ!

 侵入者に気づいたのか、下から複数の足音が響いてきた。しかも数が多い。
「ここは最上階の一番奥だったんだよな。このままだと袋の鼠か」

 ここには僕の居場所を見つける魔道使いと、僕を闇から出す魔道使いがいる。
 闇に溶けたまま、やってくる彼らの間をすり抜けるのは危険だ。

「屋上に出るか」

 幸い屋上に人の気配はない。
 階下の気配もまずは魔国王のもとへ向かったようだ。

「……ふう」

 僕は闇から出て、眼下の町を見下ろした。
 潜入は半分成功といったところだろうか。

 乗り込んでもすぐに位置を知られてしまうから、これ以上の侵入もできないし、ここが潮時だ。
 この町から撤退するしかない。

 そんなことを考えていると、僕だけしかいない屋上にもうひとつの気配が生まれた。
 いつ現れた?

 しかもそこ、階段も何もない場所なのに……。


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