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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 宮殿への侵入は、二度も失敗した。
 なぜか分からないが、入ってすぐに僕の居場所がバレてしまうのだ。

「やってくる兵が僕を見つけられないのは、出されている指示が曖昧だからか?」

 ちぐはぐなことが多い。
 僕の居場所が分かるわりには、どんな手段で侵入しているのか分かっていない感じだ。

 兵が僕の姿を見つけられないので、部屋をあさり、壁を叩き、入れ物の中まで覗いている。
 どうやったら花瓶の中に僕が隠れられるというのだ。

 これはつまり、場所だけしか分かっていないことになる。

「だからと言って、対抗策があるわけじゃないんだけど」

 翌日の夜に宮殿へ向かったら、警備の数が三倍に膨れあがっていた。
 灯されたあかりの数から違う。

 この分だと、兵をかいくぐっても、重要な情報は得られないだろう。
 侵入者がいるかもしれない状態で、極秘情報をポロポロ漏らすような人物はいないと思う。

 結局、侵入がバレてから三日間、宮殿には近づけなかった。
 感知結界を何とかする手段が見つからなかったともいう。

「そのかわり、外で情報は集めさせてもらったけど」

 これから戦いに赴こうとしている兵。
 準備の最中に軽口を叩いているので、情報収集は容易だった。

 彼らの目的が分かった。
 月魔獣狩りだ。しかも大型種。

 西の都には食糧がないらしく、住民もいない。みな逃げてしまったらしい。
 そのため、予定していた徴発が不可能となってしまった。

「倉庫の中に食糧が眠っているのに」

 そう思ったが、廃棄された食糧のうちいくつかに猛毒が仕込まれているらしい。
 十個のうち一つとか、そのくらいの割合で。

 それがあるから、残された食糧には手出し禁止となったようだ。
 言いたいことは分かる。

 ここで問題なのは、多くの食糧は安全ということだ。
 兵に配給する量を減らした場合、腹が減ったからと勝手に食糧を漁って食べてしまうことが考えられる。

 毒に当たればもちろん死ぬ。
 自業自得だとは言い切れない。その原因を作ったのは軍の上層部なのだから。

 かといって、十個のうち九つまでも無事な食糧を、食べられないからと燃やすか汚すかするのも憚れる。
 切羽詰まった場合、十人のうち九人が生き残ればいいと思う事態が来るかもしれない。

 そんなこんなで、踏ん切りがつかない。
 横流しして死者を出さないためにも、兵たちに配る食糧を減らさずにいるらしい。
 すると予定よりもかなり早く持参した食糧がなくなる。

 ここで採れる作戦は二つ。
 奪い取るか、本国に戻るかである。

 魔国王は本国に戻る道を選んだ。
 そのための月魔獣狩りである。

「労せず月魔獣を減らしてくれるなら、協力してもいいくらいだよな」

 そう思うが、ノコノコ出て行って協力しますとも言えない。
 魔国の考えとは関係なく、僕は侵入して情報を持ち帰るだけだ。

 宮殿の警備が強化されて三日も経つと、中の雰囲気が落ちついてきた。
 外で作業している兵の準備が終わりかけているのも大きい。

 僕の侵入があっても作戦に大きな変更はないようで、現場が混乱した様子はない。
 この分ならば一両日中に作戦行動が開始されそうだ。

 その前にやはり一度くらい侵入して情報を集めておきたい。

「一応予想は立てたんだけどな」
 前回なぜ僕が見つかったのか、いろいろと考えてみた。

 偶然見つかったというわけではない。
 かといって、感知結界を張ったときに見える魔道の痕跡はなかった。

「通路や部屋の床が怪しいよな」
 僕はそう思っている。

 重要施設などには、影の移動を感知する魔道もある。
 影の感知は、空中を移動する相手の対処方法だ。

 別段空を飛ぶ者だけを目的としたわけではなく、紐を渡したり、天井裏から侵入したりする者が実際にいるのだ。

 中にはぺたぺたと壁に張り付いて移動する者もいる。
 そういった特殊な者たちを見つけるために、床の影が動いたときに感知する魔道が開発されている。

「でも、影の移動は僕は判別できるんだよなぁ」
 さすがにピンポイントで僕を狙い撃ちするような魔道には、ちゃんと対抗策を考えてある。

 ゆえに今回は違う。
 ただし、完全に違っているとも言い切れない。

 ようは応用だ。
 影を感知する魔道に似ていて、より分かりにくい魔道が開発されたのだと思う。

 具体的には、床に何か変化があった場合それを知らせるなど。

 僕の影には、厚みもなければ重量もない。
 ゆえに通常の結界は簡単に通過できてしまう。

 特殊な結界のうち、僕が引っかかりそうなものは予め発見と解除方法を理解している。
 今回は未知の魔道にやられたかんじだ。

「というわけで、天井を移動してみよう」
 厚さも重さもない影が天井を移動するだけならば、見つかることはないだろう。
 いい案だ。


「いたか?」
「いえ、見つかりません」

「よく探せ。きっとこのあたりにいるはずだ!」

「あっれー? どうして見つかったんだろ?」


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