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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 僕は物陰に隠れて夜を待った。
 兵たちは日暮れまで働き、いまは思い思いの場所で夕餉を摂っている。

 僕に気づいた様子はない。

 気になったのは、兵たちが独自に動いていることだ。
 彼らに指示した者がいるはずで、その者を探し出したいのだが、ついぞ見つからなかった。

「これは宮殿の方へ向かった方がいいかな」

 西の都には宮殿がある。
 商国には王に相当する者はいないが、五会頭の合議制で国を回している。
 西と東にそれぞれ五人ずつ、計十人。

 彼らが政務で使う建物を宮殿と呼んでいる。

 宮殿は何もない庭の真ん中にぽつんと建っている。
 どのような手段を用いても、宮殿に向かうには庭の部分を通らねばならず、監視に見つからずに宮殿まで辿りつけない。

 ただしそれは地上に限ってのこと。
 夜の闇に溶ければその限りではない。

 宮殿の内外から目をこらして庭を監視していたとしても、僕の作り出した闇を見通すことは不可能だ。

 あたりが十分暗くなるまで待った甲斐があって、僕は誰にも見つからずに宮殿内へ入ることができた。

「……と思ったんだけどなぁ」

 いまは、絶賛身を隠し中である。

 宮殿の中を進んでいると、なぜか兵たちが僕の周囲に集まってきた。

「おい、いたか?」
「いや、見当たらない」

「よく探せ。必ずこのあたりにいる」
「はっ!」

 兵の会話を聞く限り、僕の侵入がバレているっぽい。
 ただし、確証があるのか、ないのか。

 兵が差し向けられたものの、周囲を探しているだけで、僕に気づくことはない。
 探している兵も、半信半疑のようにも見える。

「さてこれはどういうことだろう」

 闇の中で考える。
 というか、今はそれしかできない。

 侵入がバレていることから、何らかの感知結界に引っかかったものと考えられる。
 一般的な感知結界は、魔力で幕のようなものを作りだすため、魔道使いならば容易に見破ることができる。

 その膜を薄くして、見つかりにくくさせる技術もある。

 もしくは、網のように作り替えたり、乱雑な細い線を張り巡らせたりして、侵入者が気づけないようにする場合もある。

隠蔽いんぺい魔道を使えば僕にも分かるしな……どういうことだろ?」

 感知結界を隠蔽魔道で包むやり方も存在するが、魔道を魔道で隠蔽する場合、そこにない(・・)ことがバレてしまう。

 ちょうど隠蔽したあたりだけが、ポッカリと抜けたように感じるのだ。
 つまり、何もないからこそ、何かあると予想できてしまう。

 結局のところ、感知結界というものは、勘の鋭い魔道使いにはあまり意味のないものとなっているのだ。

 だが、今回は違う。
 僕が気づけなかったが、相手は気づいている。

「さすがは魔国の魔道使いか」
 感知結界を張ったのは魔道の本場である魔国の超一流魔道使いではなかろうか。

 最高の結界が張られてしまっては、僕が気づけないこともある。

「もう一度別の場所から侵入して駄目だったら、今日は諦めよう」
 ここは敵地で、僕はひとり。

 無理をしてもいいことはない。
 まだ持ち帰れるような情報を何一つ入手していないのだ。

 慎重の上に慎重を重ねた方がいい。

 一度宮殿を出て、広い庭を大きく迂回してからもう一度侵入した。

 今度は宮殿の奥まで行かず、すぐに逃げられそうば場所でうろうろしてみる。
 すると、しばらくして複数の足音がやってきた。

「この辺らしいぞ」
「よし、手分けして探す」
「はっ!」

 二十人くらいの兵が分散した。
 互いに連絡を取り合い、通路や部屋をひとつひとつ探していく。

「こりゃ駄目だな」
 僕の居場所を見つける魔道があるようだ。

 僕はそっとその場を脱出して、拠点にしている倉庫街に戻った。

「まいったな。僕の潜入がバレるんじゃ、他の誰を寄越しても同じだろうし」

 ひょっとしたら父さんならば、僕が気づけなかった感知結界の在処ありかを見つけてしまえるんじゃないかとも思ったが、ここに父さんはいない。

「明日もう一度侵入するとして、どうしたものかね」
 やはり難易度の高い指令だった。

「そういえば、父さんが変なことを言っていたよな」
 結界を見つけたり、かいくぐったりするコツを聞いたときだった。

 ――結界に引っかかるのは、同じ世界にいるからだろ。

 そう言っていた。
 あの言葉は一体なんだったのだろう。


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