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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 僕が受けたのは、西の都への潜入指令だ。
 この指令の難易度は、最高級。

 どのような潜入になるのか分からない。
 とにかく竜国に情報がない。

 分かっていることが少ないので、手探りで重要な情報を入手する必要がある。

「屋敷とかじゃなく、町全体に潜入ってのはあまりないなぁ」
 安全地帯を確保するところから始まりそうだ。

 決められた場所へ、決まったものを探す指令はよくあったが、今回はまったく違う。
 こういうのもまあ、楽しいかもしれない。



「シャラザード、町中に降りるから、そのつもりでいてくれ」
『心得た!』

 西の都の中には、五会頭のみが使用できる宮殿がある。
 重要な情報はそこに集中している気がするが、最初からそこへは潜入できない。

 そもそも宮殿に張られている魔道結界が生きているのかどうなのかも分からない。

 もし結界が生きていた場合、もしくは感知式の新しい結界が張った場合、空から侵入した瞬間にバレる可能性がある。

 まだ何の情報を得ていないのに見つかっては意味がない。
 多少面倒でも、町中から少しずつ安全確認をしながら行くしかない。

 シャラザードの真っ黒な身体は、夜の闇では目立たないから便利だ。
 上空を飛んでさえいれば、どんなに目のいい人でも見つけることは困難となる。

「よし、そろそろかな」
 お誂え向きに、西の都に灯る火は多くない。

 そこかしこに闇がある。
 僕にとっては最高の潜入環境だ。

「じゃ、シャラザード。行ってくるよ」
『うむ。我は適当に流しておるわ。ぐふふ』

 最後の変な笑いが気になるが、ぐずぐずしていると町を通過してしまう。
 僕はシャラザードの背から飛び下りた。

 耳元で風がうなり、落下の浮遊感が僕を包む。
 僕は魔道『闇纏やみまとい』で周囲の闇を味方に付ける。

 落下する感覚が次第になくなり、完全に闇と同化した頃、僕は地面に降り立った。

「ふう、着地成功。で、ここはどこだろ」
 倉庫街の一角であることは分かる。

 ちなみに西の都の地図は持っていない。竜国でも町の全体像は把握できていないと思う。
 頻繁に構造が変わるので、地図があっても役に立たない場合が多いらしいが。

「宮殿の方角は分かるし、初日はゆっくりといくかな」
 僕は闇に溶けた。



 闇に溶けたまま、ゆっくりと町中を進む。
 人の姿はない。

 夜とはいえ、占領地の町中が無人というのはおかしい。
 何か理由があるはずだ。

 多数の兵がどこに行ったのか、早めに知っておきたいところだ。
 そう思いつつ、倉庫街の把握につとめた。

 倉庫街を見てまわって分かったが、扉の入り口に印が付けられているものがいくつかあった。

 最初は何の印かと思ったが、乱雑に付けられたその印は、魔国兵が何かの目印にしたものだ。
 調べるために、闇に溶けたまま倉庫の中に入る。

 すると、倉庫の中は荷物がそのままになっているものと、空っぽのものがあったが、外の印で区別しているようでもなかった。
 ではあの印は?

 注意深く見てまわると、倉庫に仕掛けられた機械式の罠や魔道結界のあるなしで、印が付けられているのが分かった。
 どういうことかというと、外の扉に印が付いている場合、中の罠はすべて作動済みだった。

 解除ではない。作動済みだ。

 逆に印のない倉庫の罠はいまだ稼働している。
「罠の解除に失敗して被害を出したかな」

 軍全体に、扉に印のない場所には入るなと指示が出ているのだろう。
 魔国兵の苦労が忍ばれる。

 見たところ、扉を開けただけで作動する罠も多く、初見で解除するのは難しそうだ。
 燃えやすい荷が置いてある倉庫には、火種ひだねと連動させた罠があったりと、なかなか凶悪な作りになっている。

「丁度いいから、僕の拠点に使わせてもらおう」

 印のない扉のうち、いくつかを隠れ家とする。
 扉には罠が仕掛けてあるので、防犯もバッチリだ。

 時間をかけて倉庫街をまわり、罠が複雑で難易度の高いものを三つ選んで拠点とした。
 潜入時に持ち込んだ荷を分散させて、倉庫の中に紛れ込ませた。

「これで大丈夫だ」
 図らずも便利な拠点を確保してしまった。

 もともと人気ひとけのない民家の屋根裏あたりを拠点にしようと考えていたが、いい場所を見つけたものだ。

「次は魔国兵の行動分布かな」

 全体でどのくらいの兵がいるのか。
 それらがどこにいて、何の作業に従事しているのか。

 その辺を把握しないと、思わぬところで遭遇してしまうかもしれない。
 また、敵に発見されたとき、知らずに兵が多くいる場所へ逃げ込んでしまうなんて失敗をしたくない。
 どこに兵がいるかは重要だ。

「一般の兵が多く出入りしている場所には、変な魔道結界も張ってないだろう」

 町の全体像も分からないため、日中と夜に少しずつ調査していくことになる。
 そのためにも、まず兵の居場所を確認する。

 僕は倉庫街を抜け出した。

 外は相変わらず暗い。
 それもそのはず。深夜の町は、歩く者もなくひっそりとしている。

 この時間、大部分の兵たちは寝ているはずだ。

「それでも見張りはいると思うし、いるとすれば……あそこかな」

 多くの灯りが見える一角がある。
 闇に溶けたまま、僕はゆっくりと向かった。


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