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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 アンネラからも話を聞いた。
 これを僕の話とあわせて報告書を作成することになる。
 だが、ひとつ問題がある。

「報告書をふたつ出しても意味はないし、僕が代表して書くね」
「いいんですか?」

「昨年から慣れているんだよ。報告書とか始末書とかは……」

 僕が遠い目をすると、アンネラは可哀想な人を見る目を向けてきたので、「今年はきみも仲間だね」と伝えたら泣きそうな顔をした。

 自己主張の強い属性竜を持っていると、この作業からは逃れられないのだ。

「一応、書き上がったら見せるから、今日は寮にいてね」
「はい……と言っても、必要がない限り学院の外に出ない癖がついてますね」

 かつて『楽園』の情報をアンネラが握っているかもしれないと、本人だけでなく商会員も狙われたことがあった。

 自衛意識はいまだ高いようである。

「今度は最強戦力保持者として狙われるから、そっちも気をつけてね。ソウラン操者は決して居場所を公開していないでしょ」

「そういえばっ!」
 あれはソウラン操者が人気者だから人避けにそうしているのではない。

 竜国にちょっかいかける場合、最強戦力の一角をまず暗殺しようと考えるのは自然の流れだからだ。

「アンネラも学院内にいる分には大丈夫だから、それほど気にしなくていいと思うよ」
 それに重要度からすれば、僕より下だ。

 僕はその……いろいろやらかしている。
 狙われる心当たりがありすぎてヤバいくらいだったりする。

「しっかりと自衛しておきます。それでレオン先輩。報告書は……」
「うん、あとで持って行く」

「分かりました。よろしくお願いします」
 アンネラはぺこりと頭を下げて去って行った。



「……ふう、やれやれ」
 報告書に何を書くのかは、実は微妙な問題がある。

 僕がシャラザードを得たとき、図らずも竜と意思疎通ができることが分かってしまった。
 女王陛下は、シャラザードから聞き取り調査をして、その結果をまとめるようにと、今回のような指示を出していた。

 僕も馬鹿正直にそのまま書いて出した。
 それを読んだ女王陛下は、眉根を寄せて大きな息を吐き出したのだ。

「これはお蔵入りね」
「はい? どうしてです?」

 不敬にあたるが、聞かずにはいられなかった。
 実に半年近くかけてシャラザードから聞いたことをまとめあげたのだ。

 その労力を無に帰されてしまった。
 聞き返したくもなるだろう。

「だって妾たち、罪人の子孫になるじゃないの」
「………………」

 魂の行方を探るため、流刑地扱いしたのは事実だが、別に罪人だけがここにたどり着いたわけではない。

 それでも真っ当に死んだ人の魂の行方がたどれないのと、通常は浄化されて無に帰したのを考え合わせれば、その割合は少しだけ上がるのかもしれないが。

 竜国の建国神話という大層なものはないが、竜に選ばれた民族という優位性や、神聖な儀式の果てに竜とともに繁栄してきた歴史がある。

 ただの戯れ言としても、この報告書は発表するわけにはいかないというのだ。

「これからシャラザードに関する報告書には、そのことを記載しないように。同じく、品を下げる内容もね」
「はい」

 というやりとりがあった。

 よって今回、ジルベルト王子に提出する報告書も、聞いた話をそのまま書くのではなく、拙そうな部分はぼかすか、完全に削除しておく必要がある。

 というわけでアンネラには任せられなかった。

 竜国にとって拙そうな部分を削除するものの、他に制約を受けているわけではないので、報告書はすぐに書き上がった。

 アンネラに見せて内容の確認を終えると、王城に提出しに行った。
 ジルベルト王子は勉強中ということで、文官に報告書を手渡す。

 王子は一日のほとんどを鍛錬か勉学に当てているという噂は本当らしく、サーラーヌ王女と本当に兄妹なのか疑わしくなってくる。

「足して二で割るとちょうどいいのにな」
 側近の考え方の違いか、幼少期の刷り込みの差かなどと不敬なことを考えつつ、僕は城を後にした。



 シャラザードとターヴェリとの関係は、冷却期間をおくことで様子を見る。
 ちょうど僕は女王陛下からの指令があるので、商国に潜入しなければならない。

 その間に、ようく言い聞かせることにしよう。

「潜入の準備はできているし、竜迎えの儀は終わったし、今日立つかな」

 土木作業用の駆動歩兵を運搬するとき、兎の氏族のディオン氏族長と会った。
 その時、西の都について聞いたが、かなり厳重な警戒態勢が敷かれているということだった。

 軍の中に魔国王がいるのは明らかなので、そのせいもあるという。

「魔国城は魔道結界と機械式の罠の宝庫だが、征服先の地へはそれらを持ってくることができないじゃろう。さてどうやって安全を確保しているのやら」

 そううそぶく氏族長だが、密偵を放って戻ってこなかったのではなかろうか。

 生半可な防備でないことは僕も分かる。
 今回は非常にタフな潜入になりそうだ。

 ディオン氏族長は、技国側に侵攻してくる可能性を考慮して、大軍を国境付近に張り付けているらしい。

 多くの物見が監視し、周辺には斥候を放っているという。
 商国に駐留している魔国軍は周囲を警戒し、周囲から警戒されている。

 そんな中へ潜入しろという女王陛下の指令は、難易度で言えば最高クラスだ。

「最悪、見つかって戦闘になるかもしれないな」

 見つかるのは〈影〉として未熟の極みだが、潜入したところでそうそう都合良く情報だけが転がり込んでくれるわけではない。

 とくに広い場所へ長期の潜入となれば、移動と潜伏の期間が長くなる。
 ゆえに見つかる確率が跳ね上がる。

「よし、気合いを入れていくか!」

 西の都に何が待っているのか。
 それはまだ分からないが、行ってからのお楽しみだ。

 僕はシャラザードに飛び乗った。

「行くぞ!」
『心得た!』

 僕とシャラザードは大空高く舞い上がった。


各方面から指摘されました。1度に2話投稿されています。
『不協和音』の方も投稿時間間違えてましたし、何かがおかしかったのです。(自己弁護)

引き続き、よろしくお願いします。
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