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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 学院生や王立学校の生徒たちは寮に戻っている。

 儀式を運営しているのは、竜導教会や操竜会、そして王城の文官たちだ。
 彼らが話し合った結果、竜迎えの儀が中止となったのだ。

 アンネラとターヴェリは学院と竜舎にそれぞれ戻り、僕とシャラザードは操竜場に留め置かれることになった。

 竜舎で再び争わないよう配慮したらしい。
 ちなみに、移動中でも絶対に姿を見られないようにと言われた。

 念を入れ過ぎなのではと思ったが、王都の上空でまた大喧嘩がはじまったら、大変なことになるので、致し方ないのかもしれない。

 翌朝早く、僕のもとに王城から使いの者がきた。
 ジルベルト王子から、僕らに罰が下されたのだ。使者の口上はこう。

「会場を修復しない限り竜迎えの儀が行えません。レオン操者はすぐに技国に向かい、駆動歩兵を連れてきてください」

 僕に与えられた罰のひとつがそれである。
 アンネラはまだ専用の手綱もなく、長距離飛行の経験もない。

 また二体の竜を同時に作業させるといつ喧嘩を始めるか分からないので、シャラザードを遠ざけようと考えたらしかった。

「同盟の締結により、技国から竜国へ土木工事用の駆動歩兵をまわしてもらえることになっています。馬車で運ぶ手はずでしたが、それでは間に合いません」

 シャラザードの背に乗せて、すぐに運んでこいということらしい。
 たしかに技国の駆動歩兵、しかも土木工事専用の機体ならば、復旧作業も早いだろう。

「分かりました。それでアンネラはどうなるんです?」

「竜を得たばかりであることを考慮して、穏便な措置が取られます。竜への接触禁止ですね。その間に補習が入ります。確認試験に受からない限り、接触禁止は続きます」

「それはそれは……」
 補修とは名ばかりの特訓だろうな。
 なかなか厳しい措置ではなかろうか。

 もちろんこれらは僕とアンネラに課せられた罰であるので、速やかに履行しなければならない。

 これらが終われば、今回の原因究明と防止策を提出しなければならない。
 ある意味これが一番大変だ。

 アンネラはターヴェリと会話できる。
 それぞれが聞き取り調査をして意見をすり合わせ、妥協点を見つけていくことになるだろうか。

 そして重大事はまだある。
 シャラザードとターヴェリが顔を合わせても喧嘩をさせないこと。
 僕とアンネラは、それを厳命させなければならない。


 竜迎えの儀が中止されて、竜を得ていない一回生が十二人いる。
 すでに竜を得る時期が来ているのだから、式典を行わなくても竜を得ても問題ない。

 だがこれは学院生にとって一生に一度の慶事である。
 ぜひともお披露目をすべきである。というわけで、会場の修繕をすぐに行いたいようだ。

「シャラザード、行くぞ」
 使者が帰ったあと、僕はすぐに出発した。



 不休で飛んで、その日のうちに兎の氏族領へ到着した。
 アンさんの実家だが、今回は王宮から書簡を受け取っているため、正式な使者として遇された。

 書簡にはなぜすぐに駆動歩兵が必要なのかが書かれていたようで、ディオン氏族長はものすごく微妙な顔をした。

「この度の要請、こちらとしてもまったく問題ない。……じゃが、ただの喧嘩でのう」
 犬が二匹いればじゃれ合うこともある。

 二体の竜が空で喧嘩した余波でなぜ石造りの会場が破壊されるのか、実感がないようだ。
 いや、喧嘩の規模を予想して暗雲たる気持ちになったのかもしれない。

「だが、そのような喧嘩なら、この領以外でやってもらいたいものだ」
 そう呟くのが聞こえた。

 ゆっくりしたかったが、復旧を待っているのは僕の後輩だ。

 駆動歩兵をまとめてシャラザードの背に積み込み、翌朝には出発した。
 メンテナンス用の部品や、整備する人員も必要なため、僕はもう一往復することになる。

 王都で駆動歩兵をおろしてもう一度兎の氏族へ行かねばならない。
 とんぼ返りだ。

 そして二往復目。
 残りを連れてきたころには、駆動歩兵の活躍で修復は半分くらい終わっていた。
 さすが人の何十倍も働ける駆動歩兵だ。

 昼夜を問わない復旧作業によって、二日目の夜には復旧が完了した。
 一部は応急措置だが、驚異的な早さであろう。

 これにより、土木作業用駆動歩兵の凄さを見せつける形となった。

 翌日の午前中に王都で宣伝し、午後から竜迎えの儀が行われ、残りの十二人の竜操者も無事、竜を得ることができた。

 ひとまず胸をなでおろすことができたが、問題はまだ残っている。

「聞き取り調査か……シャラザードがなんて答えるか」

 話の途中で激昂するんじゃなかろうか。
 そこが不安だ。

 僕は事前にアンネラと連絡を取り合い、質問する事項を同じにすることにした。
 じっくりと相談し、質問に漏れがないことを確認する。

「じゃ、明日」
 別々に聞き込みをして明日持ち寄ることになった。


「シャラザード、話してもらうぞ」

『なんのことかな』
「とぼけるなよ。大転移がもうすぐ始まるっていうのに、こんな事で時間をかけていられないだろ。いまだって月魔獣狩りにいけないわけだし」

『ううむ……』
「そういうわけだから、話してくれよ」

 以前、シャラザードが月に住んでいた頃。
 その時の記憶を聞き出すのにもやたらと時間がかかった。

 また話の途中で嫌なことを思い出すと興奮して大変だった。
 その時の話に赤い竜のことは出てきていない。

 シャラザードが忘れていたのか、それとも話したくなかったのか。
 その所を含めて、しっかりと聞き出すつもりだ。

「さあ、シャラザード。時間をかけてもいいが、そうすると月魔獣狩りに行けなくなるぞ」
『主よ、狩りから戻ってきてからでどうだろうか』

「だめに決まっているだろ」
『ぐぬぬ』

 しばらく黙っていたシャラザードだったが、仕方ないと観念したのか、話しはじめた。


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