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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 新年を過ぎたと言っても、やることは変わらない。
 シャラザードとウルスの町周辺を巡回し、月魔獣を見つけては狩る。

 年が明けて三日目。
 見える範囲に月魔獣はいない。

「月が動いたからかな。この辺にはもういないみたいだけど」
『うむ。詰まらんな』

 いつもより早い時間に町へ戻ると、他の竜操者たちも同じようだった。
 陰月の路が移動したらしく、ここから北方にかけては月魔獣の降下がないらしい。

「そろそろ僕も、お役御免かな」
 実際、やることがない。

 翌日も同じような状況だった。
 リトワーン卿が、町全体に終了宣言を出した。脅威は去ったのである。

 そのリトワーン卿だが、いまだベッドから出られず、寝込んだまま政務を執っている。
 体調は回復しているらしく、徐々に政務する時間も延びている。

 この終了宣言をもって、僕は王都に戻ることになった。
 新年四日目のことである。

 王都に着いたのは夜。予定通りだ。
 そのまま女王陛下に今回の報告した。
 他にもウルスの町で竜操者の練度が高かったことと、支配種が魔国にいるらしいことを告げた。

 僕の報告で、ウルスの町の竜を鍛えることを前向きに考えるようだ。

 こうして慌ただしかった旅程を終えて、しばらくぶりに寮へ帰る……つもりでいたら、女王陛下から「もう遅いのだから、泊まっていきなさい」との弁。

 闇に紛れて戻れるが、翌朝いきなり寮の自室に僕がいたらみんな驚く。
 その日は、泊まっていくことにした。

 そして翌朝。
 王都は新年を祝う気分も和らぎ、通常の朝を迎えていた。

 僕が戻って来たことを知ったようで、アンさんがやってきた。

「新年おめでとうございます。レオンくん。戻っていたのですね」
「新年おめでとうございます、アンさん。昨夜到着しました。同盟が発表されたようですね」

「はい。様々な案件が履行されたようです。わたくしは見ているだけでしたが」
 同盟締結後、文官たちが活発に動いているらしい。

 これで二国の連携が強化される。
 大転移を乗り切る下準備ができた感じだ。

「レオンくんはこの後、どうされるのですか?」
「学院の寮に戻ろうかと思っています。そろそろ竜迎えの儀が近いですから、その準備ですね」

 アンさんは大きく頷いた。
「そういえば、そうでしたわね。昨年は自領にいたので、レオンくんの勇姿が見られませんでした」

「見なくて正解です。いろいろお騒がせしましたので」
 シャラザードの咆哮一発で、会場を大いに騒がせた。

 竜を使役して竜操者を唖然とさせ、パトロンになったばかりの人たちを失神させてしまった。
 驚いたのは僕も同じだが、あのときからだろうか。僕に変な噂がついてまわるのは。

「楽しそうなお話でしたわね」
「苦い思い出です」

 今年は出席しますので、楽しみにしていますとアンさんに言われた。
 僕はどう答えればいいのだろうか。



 久しぶりに学院に戻ってきた。
 同級生たちは暖かく迎え入れてくれたが、どちらかといえば苦笑いが多かった。

 僕とシャラザードの噂をあちこちで耳にしているらしい。

「竜迎えの儀は参加できるのかい?」

 アークに言われたので、頷いておいた。
 緊急の予定が入ることもあるが、しばらく決まった予定は入れていない。出られるはずだ。

「それは良かった。竜迎えの儀は一月七日に行われるからね。もうすぐだ」
「そういえば、クリスたちの姿が見えないけど」

「彼らはアッチさ」
 アークが王城の方角を指した。

 なるほど。操竜場で最後の調整という名の「特訓」をしている頃か。

「たしか一回生は前日入りするんだよな」
「そうだね。家族が見に来るはずだから、前の晩を一緒に過ごす人も多いんじゃないかな」

 昨年、僕のところも両親が見学に来た。
 そのあと、『ふわふわブロワール』に向かったので、僕はアークと長話をした。

「なんかあっという間だったな」
「俺はそうだけど、キミは色々あったんじゃないかい?」

「言われてみれば……でも、あっという間だよ」
「そうなのかい? キミはいつも学院にいないからね。どこで何をしているのか、気にはなっていたんだよ」

 二年目は学院の授業に出た記憶があまりない。
 とにかく、シャラザードとあちこち出かけた一年だった。

 技国へは何度も行ったし、竜国の都市もずいぶん回った。
 極めつけは、海上を捜索して『潮の民』の島を見つけたことだろうか。

 それと月魔獣。
 学院に入るまでは月魔獣の姿を見たことすらなかったのに、今年一年でどれだけ狩ったことか。
 もちろん狩ったのはシャラザードだけど。

 戦いも多かった。
 魔国兵や内乱の軍との戦いはシャラザードのおかげで勝つことができた。

 思い返してみれば、濃密な一年だったな。
 アークに話せない内容ばかりなのがアレだけど。

「そうだね。知り合いも増えたし、驚くような一年だったよ」

「俺たちが卒業して、いまの一回生が二年にあがって」
「また新しい竜操者が入ってくる」

 だが、大転移がおこる今年はどうなのだろう。
 王都といえども、絶対安全とは限らない。

 王都も学院も、無事であってほしい。
 そのためには新米とはいえ、学院を卒業する僕らが守っていかなけれなならないのだ。

「そうそう。キミ宛てに手紙がいくつか届いていたよ。受取人がいないから、机の引き出しに入れておいたけど」
「誰からだろ。ありがとう、アーク。すぐに見てみるよ」

 手紙といえば、リンダくらいしか思いつかない。

 引き出しを開けると、手紙が五通も入っていた。
 どれもここ最近来たもののようだ。

「えーっと……リンダとロザーナさんか。あとは、姉さん?」

 リンダが三通に、ロザーナさんと姉さんから一通ずつ。

「みんな女性だけど、早速修羅場かい? まあ、がんばれよ」
 アークがウインクした。

 いや違うって。


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