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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 竜国、ウルスの町。

 リトワーン・ユーングラスは目を覚ました。
 そこには見慣れた天井と天窓。

 ここが自室であることを確認して、リトワーンは感慨深げに目を瞑った。

「……生き残ったか」

 自分は刺された。その記憶はある。
 いま寝かされているということは、襲撃者たちは撃退されたのだろう。

 共に戦った仲間がどうなったのか。
 リトワーンは首を巡らせ、鈍い痛みに顔をしかめた。

「だれか……」
 声をあげたが、それはあまりに弱々しいものだった。

               ○

『主よ、本当に……本当に狩り放題なのだろうな』
「確認するところがそこかよ!」

 ウルスの町に向かう途中、シャラザードは何度も念押ししてきた。

『当たり前であろう。部下を放って向かうのだぞ。月魔獣がいなければ、何のためにということになる』

「だから彼らはおまえの部下じゃないからな!」

 実戦訓練を最後までやりきった竜操者はおよそ百名。
 シャラザードが実戦に出しても問題ないと言い切った人数だ。

 できればその倍、いや三倍いれば、竜国の要所に配置できるのだが、それは致し方ない。
 ちなみに、シャラザードは彼らを自分の統制下で自由に使えると思っているらしい。

 それは無理……というか、貴重な戦力をシャラザードのもとで遊ばせる余裕はない。
 きっと今頃は、陰月の路に常駐して、月魔獣狩りの最前線にいることだろう。

「ウルスの町までもうすぐかな。途中で休まなくてもいいのか?」
『もちろんだ。早くいかねば、我の分がなくなる』

「だからなくならないって!」

 町が落ちそうなくらいだ。
 それこそ腐るほど月魔獣がいるのではなかろうか。

 移動と戦闘が続いたので、さすがに体力的にキツイ。

『主よ、眠そうだな』
「寝てないからね」

 女王陛下との謁見のあと、すぐに王都を発った。
 不眠不休である。

 その甲斐あって、あと一時間もすればウルスの町が見えてくる。
 着いたら、休憩なしで戦闘だろう。
 昨日からまったく寝ていないので、そうなると結構辛い。

「まあ、仕方ないか。シャラザード、戦闘のときは頼むぞ。途中でぼーっとしていたらおこしてくれ」

『うむ。よく分からんが、すべて我に任せるがよい。存分に蹴散らしてくれるわ!』
 シャラザードは、一声吠えて、速度を上げた。



 飛行を続け、ウルスの町近くまできた。
 女王陛下の言葉は本当だった。

 町のすぐ外で、多くの月魔獣と竜が入り乱れて戦っている。
「シャラザード、このまま行けるか?」
『無論だとも』

「なら、手近な月魔獣に突っ込むぞ!」
『よしきた。我の雷で……』

「それはなし!」
『ぬう!? どうしてだ?』

「敵味方もろとも吹き飛ばしたら、また変なあだ名が付くだろ」

『我は構わん』
「僕が構うんだよ! いいから月魔獣だけ倒すぞ」

『仕方ない』
「頼むよ、本当に」
 こうして僕らは救援に向かった。



 ウルスの町は、王都に次ぐ軍事力を誇っている。
 魔国と国境を接し、陰月の路にも近いのだから当たり前だ。

 常駐している竜の数も膨大である。
 それがほぼ総出で月魔獣と戦っている。

 なにしろ、町全体が月魔獣に包囲されている状況なのだ。

 ――がぁああああああ!

 シャラザードが突っ込む。
 月魔獣の大型種は、シャラザードとほぼ同じ大きさ。

 速度を乗せた攻撃でも、一撃では倒せない。頑丈だ。
 反対に、モタモタしていると反撃にあってしまう。

 連続攻撃で一気に押し込むか、一度距離を取ってから再び攻撃する。
 そうやって戦い、ようやく倒せるのである。

『狩り放題だな。うほほほ』
 最近のシャラザードは、ときどき変な声を出す。

 ウルスの町に取りかかっている月魔獣の半数は、大型種だった。

「シャラザード、デカいのから先に叩くぞ」
『あい分かった! ならば我の雷玉で』

「だからそれはなし!」
 何も分かっていなかった。

 結局、時間をかけて一体、一体、大型種を倒していった。

『……ほう、あれはいい動きをしているな』
 シャラザードが一体の飛竜に目を留めた。

「分かるのか?」
『もちろんだとも。よく分かった動きをしている』
「ふーん」

 以前シャラザードに聞いたことがある。
 竜操者は竜の意志をうまく汲み取れていないらしい。絆の深さに関係するのかどうなのか。

 とにかくシャラザードが知っていた頃よりも、竜操者はみな、竜の扱いがうまくないらしい。

 本来もっとうまく立ち回れる力を持っているが、竜操者がそれを押さえつけている。そんな感じだとか。

 シャラザードが何と比較したのか。
 それはこの世界とは違うはるか上空の月での経験だ。
 それをそのままここに持ってきても、意味がないのではなかろうか。

 これも以前の話になるが、竜と人は会話をして意思疎通ができていたらしいので、そういう繋がりの太さが関係しているのではなかろうか。

「……と言っても、意思疎通できるのがいいこととは限らないけど」
 僕とシャラザードの関係をみると、そう感じたりする。

 少なくとも、僕よりシャラザードの方が何倍も偉そうだ。

『ふむ、こちら側は片付いたぞ』
「そうだね。じゃ、町の反対側に行ってみようか」

 ウルスの町の上空を抜けて、包囲の反対側に行ってみる。
 そこでは、迎撃の竜の姿は少なく、代わりに巨大な走竜が目立っていた。

 シャラザードの倍以上もある体躯を縦横無尽に走らせている。

「あれは、パイル・ボレックス操者の大型竜か」

 体当たりで大型種を吹き飛ばし、空中に浮かんでいる状態の月魔獣を爪と牙で切り裂いていく。

 そんな戦い方ができるのは、ウルスの町の守護竜であり、最強の竜の一角だからこそだ。

 パイル操者がいることで、魔国が侵攻を断念しているとまで言わしめた存在。

 そんな大型の走竜が戦っていた。


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