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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 訓練を終えてから王都に向かったので、着いた頃には夜になっていた。
「このまま謁見しちゃって大丈夫かな」

 シャラザードに王城の上空を飛んでもらい、その背から飛び下りる。
「じゃ、自分で帰ってね」
『心得た!』

 最近、毎日月魔獣狩りをしているので、シャラザードの機嫌がいい。
 僕は疲れ気味だが、それは訓練教官という仕事のせいだと思う。

 歳上で実戦経験も豊富な竜操者を訓練するのは、精神的に辛いのだ。

 さて、王城のかなり上空から飛び下りたため、着地までまだ時間がある。
 このままだと墜落死してしまうので……。

「そろそろいいかな」

 僕は魔道『闇纏やみまとい』で、全身を闇で包む。
 これで周囲の闇と同化できた。このまま地上の闇と接触すれば、ダメージはない。

 昼間は使えない魔道だが、こういう時はかなり便利だと思っている。

「今日の女王陛下との謁見も、心臓に悪いのかな」
 何の話が飛び出すか分からないので、ちょっとだけ怖かったりする。

 そして女王陛下の前に出た瞬間……。

「やり過ぎよ、レオン」

 怒られた。なぜだ?

「あの……それって訓練のことでしょうか」
「それ以外にも、やり過ぎたことがあるのかしら」

「……いえ」
 今日の女王陛下は機嫌が悪い。

「操竜会から連日抗議が来ているのよ」
「……はあ」

 訓練を終えた竜操者が使いものになるけど、使いものにならないらしい。
 どういうこっちゃ。

「全員の精神に多大な負荷をかけたと、操竜長はお怒りだったわよ」
「お怒りですか。それは大変ですね」

「あなたに対して怒っているのだけど、レオン」
「……申し訳ございません」

 竜操者は人であり、モノではないのだと。アレに慈悲の心はないのですかと、涙ながらに女王陛下へ詰め寄ったらしい。

 アレとは僕のことか? 失礼な。

「そうですか。少々訓練が厳しかったようですね」

 だが反論させてもらいたい。
 たった三日間の訓練で精神を病んでしまう方が悪いのではなかろうか。
 僕はそう思う。

 この非常事態に、悠長な方法で手取り足取り教えてもらえると思うなよと。

「……まあいいわ。レオンは反省していないようだし」
 なんか、見抜かれていた。

「呼び出した理由だけど、ちょっと変更ね。緊急事態がおきたのよ」
「はい?」
 緊急事態って……また。

「それは後で話すわ。……本当は同盟発表の場にいてもらいたかったのよ」
 新年一日目に王宮内で、技国との同盟を大々的に発表する。

 その中心人物になるのが女王陛下とアンさんだ。
 僕は……飾りかな。

 アンさんの婚約者として立っているだけで、竜国の益になりそうだし。
 明日準備して、明後日発表か。たしかに呼び戻されるわけだ。

 その重要な席に出られないほど緊急な事があると。
 伝令は何も言っていなかったので、本当についさっき入ってきた情報とかか?

 何だろうか、気になる。心臓に悪くない話ならいいな。


「その前に知らせておくことがいくつかあったので話すことにするわ。そうね、まずこの話かしらね。……移動式のサポート部隊についてだけど、実戦投入されることが決まったわ」

 サポート部隊って、技国で僕が受けたあれか。
 今までのように宿泊施設を拠点とした場合、陰月の路から離れた所にいる月魔獣には、色々と対応が難しい。

 かといって、その都度村や町を使うわけにもいかない。
 移動式にすれば、かなり効率が上がるのではないかと思われる。

「それは良い考えだと思います。僕も体験しましたが、あれで狩りが楽になりました」
 ただし、難点もある。

 技国で僕がサポートを受けた時は、横合いから月魔獣がやってきて、サポート部隊が撤退したことがあった。それで昼飯を食べ損なったのだ。

 竜国の場合、竜が付いていれば月魔獣の接近を見逃すことはないと思うが、見通しの悪い場所もある。
 気をつけるに越したことはない。

「サポート部隊はレオンに優先的に付けるようにしますから、そのつもりで。……それと先も話したけれど、技国と正式に同盟が締結したわ。施行するのは明後日からね」
「おめでとうございます」

 これは予定通りだ。
 明後日の新年をもって、技国の首都は兎の氏族になる。

 序列一位になれば条約締結の権利を得るわけで、他の氏族も同意しているならば、問題ない。

「その前から我が国の竜を魔国との国境付近に派遣しているので、その追認ね」

 僕とシャラザードが戻ってしまったので、代わりに中型竜を相当数派遣したらしい。
 今のところ、一進一退の攻防を繰り返しつつ、戦線を維持しているという。

「問題は商国……いえ、商国と魔国ね」

 ここで女王陛下の顔が曇った。
 僕は黙って、続きを待っている。

「商国の西の都は、やはり魔国軍に占領されていたわ。現在魔国軍による復興の最中だけど、今後どう出るか分からないわね」

「魔国の民を呼び寄せるのではないでしょうか?」
「月魔獣が間にいるから、排除しないかぎり無理ね」
「なるほど」

 どうやら魔国軍は本国と分断されてしまったようだ。
 連絡を取ろうにも、間に月魔獣がいればそれもできない。

 行き来は竜国を経由しなければ難しいだろう。
 だが、それを許すほど竜国は甘くない。捕まえて情報を吐き出させることが見えているため、魔国としても人を出しづらいと思う。

「西の都は監視対象になったのだから、動きがあれば分かるでしょう。問題は魔国本国ね」

「魔国本国ですか? どうかしたのでしょうか?」
 大型種に蹂躙されているのかな。

「魔国の首都イヴリールが壊滅したわ」
「はっ?」

「これは逃げてきた商人の情報ね。見たこともないほど巨大な鋼殻こうかくが首都に落ちて、大爆発がおきたみたい。その後、付近の月魔獣が集まって首都を蹂躙。今は、中をうかがい知れない状態ね」

「見たこともないほど巨大な鋼殻ですか?」
「大型種の数倍の規模と言えば分かるかしら」

「それは……また、なんとも」

 もしかすると月魔獣の支配種か?
 だとすれば、魔国だけの問題ではなくなる。

 竜国どころか、世界が滅びかねない。

「支配種の可能性があるので、このことは口止めさせて、調査に飛竜を派遣したの」
「ど、どうなりました」

「帰還しなかったわ。二度派遣して、二回とも帰ってこないの」
「………………」

 それはやばい。想像以上にやばい。
 支配種の可能性が濃厚だが、大転移の本番を前にしてこれか。

 滅ぶかな、世界。

「探れないものはしょうがないから、置いておくしかないのだけど……ここで最初の話に戻るわね」

「はい?」
 最初の話? なんだっけか。

「緊急事態の話」

「ああ、そういえばまだお聞きしてませんでした」
 いろいろなことが多すぎて忘れていた。

「レオン、あなたはすぐにウルスの町に行ってちょうだい」
「はい?」

 またウルスの町? リトワーン卿のところだよな。
 もう軍事式典は終わったし、どういうことだ?

「あそこが落ちそうなのよ、月魔獣の襲来で」
「はい?」

 王都に次ぐ軍事力を持つウルスの町が……落ちるだと?
 あそこが落ちるなら、王都だって落ちるぞ。

「ウルスの町からの救援要請なんて、尋常ではないわね」
「分かります」

「というわけで、このまますぐに飛んで頂戴」
「すぐ……ですか?」

「そうよ。今から飛べば明日の朝には着くでしょう。北の守りをソウランに任せているので派遣できないし、ひとりだけになるけど、できるわね」

 他の竜と編隊を組んでも、シャラザードの方が倍は速い。
 行くしかなさそうだ。そのため……。

「問題ありません。シャラザードが喜びそうです」
 とだけ言っておいた。


次話から少しだけ、レオンくん以外の状況など。
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