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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 訓練の二日目。
 さあやるぞと思って気合いを入れてみれば、訓練生がなぜか半分に減っていた。

 どうやら昨日、月魔獣にやられて、いまだ怪我のせいでベッドから出られない状態だという。
 怪我した者たちの復帰は無理らしい。

 それでも三分の二は集まるはずだった。
 だが、何人かは実戦形式の訓練が終わった後に倒れ、いまだベッドで唸っているらしい。

 肉体と精神に多大な負荷がかかり、前後不覚に陥っている者もいて、今日の訓練には参加させないでくれと、周りから泣いて止められた。

 昨日はただ竜に乗っていただけのはず。
 それなのに精神が参ってしまったなんて……なんてヤワなんだろうか。

 そう言えば昔、父さんが言っていた。
 できない人もいると。

〈影〉の中でも、どんなに訓練を積んでも、ものにならない者もいる。
 ここにいるのは、竜紋が現れたことで竜操者となった者たちばかりだ。

 全員が強くあれと言うのは難しいのかもしれない。

「……分かりました。では残った者で今日の訓練をはじめましょう。幸い、月魔獣はそこかしこにいます。ノルマが倍に増えて狩り放題です。さあ、行きましょう」

 百二十名が六十名に減ったが、月魔獣は待ってくれない。

「シャラザード、効率よくどんどんいくぞ」
『任せろ!』

 そして今日の訓練が始まる。



 二日目の訓練も順調だった。
 月魔獣の大型種は侮れないが、初日にくらべて、竜たちの動きが格段に良くなった。

 そのため、昨日以上の戦果があった。いいことである。

「……で、三日目はこれだけか」

 減るだろうと予想していたが、その通りになった。
 いまここに集まっているのは三十名弱。

 当初の四分の一である。

 月魔獣の大型種はたしかに強敵だ。
 攻撃が通らなければ、絶対に倒せない。

 それをひっくり返すのだから、訓練が多少手荒くなるのはしょうがない。
 死ぬよりマシだ。

「――死ぬよりマシだ」

「……ッ!?」

 うん? 声が漏れてしまったか。
 まあ、今日もやることは決まっているし、さっそく狩りに出かけよう。

「頑張ろうね」
「ハ、ハイ」

 僕はにこやかに彼らを送り出した。



 三日目の訓練が終わった後。

『うむ、あれならば大丈夫だな』
「本当? ずいぶんと早いね」

 どうやらシャラザードから合格がでた。
 訓練終了である。

『これは我の教え方が優秀だからだな』
 シャラザードから自慢げな雰囲気が伝わってきた。

 たった三日間で、大型種相手も問題ないレベルまで行けたのは正直驚いた。
 竜操者ではなく、竜が覚えていたからだろうか。

 そう。シャラザードは竜操者ではなく、竜に戦闘訓練を施した。

 実戦で竜操者が指示を出せば、竜はやり方を覚えているので、竜操者が別の指示を出さない限り、しっかりとやってくれる。

 シャラザードがいなくても対処できるようになったのだ。

 僕が彼らに訓練の終わりを告げたら、直後、全員がひっくり返った。
 限界だったらしい。

「たった三日の訓練で根を上げるなんて」
『そうだな。竜たちの方がよっぽどしっかりしておるわ』

 竜の体力は人の数倍。ことによったら十倍くらいある。
 竜と人を一緒にはできないが、それでも三日間が限界というのは情けない。

「じゃ、シャラザード。次もよろしく」
『うむ、任せるがよい』

 単純に部下ができて喜んでいるシャラザードに、第二陣をあてがう予定だ。
 次の訓練生を迎えに行こう。

 今度は三日間で根を上げないような屈強な人たちだといいなと夢想しながら、僕は操竜場に向かった。



 陰月の路近くにある宿泊施設に、伝令がやってきた。

「……えっ? もう帰還?」
 第二陣を送り出し、第三陣の訓練途中で、そんなことを言われた。

 女王陛下が僕を呼んでいるという。
 訓練結果の報告をしろというのだろうか。

「もうすぐ三組目が終わるところなんだけど……今すぐですか?」
「王都で新年を越すようにと女王陛下が仰せです」
「……はあ。どうしようかな」

 明日、三回目の訓練生が巣立っていく……はずだが、宿泊施設の中に竜操者たちが死屍累々と転がっている。

 基本、竜に乗っていれば、手足が折れようがあまり問題ないので、訓練を継続している。
 そして訓練中に意識を飛ばす者が、思いのほか多い。

 訓練終了時に竜から下りてこないのはほとんどの場合、そのタイプだったりする。

「今回は出来が悪いので、一日余計にやろうと思っていたんですけど……いや、行きます」
 明日の夕方ここを出発すれば、明日中に王都に着く。それでいいだろう。

 明日は早朝から密に訓練する。
 そうれば、なんとか間に合うだろう。いや間に合わせてみせる。

 結局あと二日かけるつもりの訓練を半日と少しに凝縮して、僕は訓練を終了させた。

「なんか凄かったね」
『うむ』

 夕方まで休みなく実戦訓練をした。
 すると、さすがにタフな竜たちですら音を上げかけた。

 今までを考えると凄いことだ。
 だがこれで彼らも一人前。

 僕はやり遂げた顔で王都に向かった。
 ちなみに誰も見送りに来てくれなかった。

 やはり、避けられているのだろうか。



 明後日は新年である。


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