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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

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 女王陛下との謁見は胃に悪い。
 毎回思うのだけど、僕の驚く顔を見て楽しんでないだろうか。

「いま竜国は、未曾有の危機にありますね。他国も同じでしょうけど」
「はい」

「ソウランの謹慎を解きました。遊ばせておくわけにはいかないでしょう?」
「その通りだと思います」
 はて、何の話につながる?

「今頃ソウランは、月魔獣との戦いに勤しんでいることでしょう」
「それはシャラザードが聞いたら喜びそうですね」
 女王陛下が思いついた話とは、月魔獣に関することかな。

「それは頼もしいわね」
「恐れ入ります」
 僕が答えると、女王陛下は楽しそうに笑う。

 ここまでの話で、ある程度の予想がついた。
 月魔獣関連で僕に何かをさせたい。そういうことだろう。

「それでね、レオン。あなたにも向かってもらいたいの」
「陰月の路でしょうか」

「そうね。月魔獣がいるならばどこへでも。その際、未訓練の竜を連れていって、指導するように。できるかしら」
「はっ、訓練の件。しかと承りました」

「……驚かないのね、レオン」
「ある程度予想致しましたので」

 以前シャラザードが竜を操った方法を使えということだろう。
 今だって大型種を倒せるよう訓練しているはずだ。

 それよりもシャラザードを使って実戦投入させた方が効率がいい。そんなところだろう。

「そう。ならいいのだけど。大型種の降下はあと四十七日間続くわ」
「!? 分かるのですか?」

 大転移の記録の中に、それほど正確なものが残されているのだろうか。

「今の現象は『回天かいてん』と言って、大転移の前段階みたいね」
 回天? どこかで聞いたことあるような……。

 たしかに聞いた。どこだったか……誰かから聞いたはず。
 今まで大転移について聞いたり、話したりした相手を思い浮かべた。

 それほど昔ではない。聞いたのは王都に来てからだ。
 といっても女王陛下からではないから、それ以外の人物で……。

「ああっ!」
「どうしたの?」
「い、いえ。何でもありません」

 思い出した。ロザーナさんだ。

 ロザーナさんが卒業するときに聞いたと思う。
 故郷で読んだ古文書に書いてあったと……それがきっかけでロザーナさんは研究者の道を歩み始めたのだ。

 大転移の前に回天が起こる場合、その被害が……。
「……その被害が甚大になる」

「よく知っているわね。その通り。回天はふたつの月が互いに影響しあって、二十七日間かけて離れて、また二十七日間かけて元に戻るわ。その後に大転移が来るわ」

 回天の期間は合計で五十四日間。いま七日目なので、だからあと四十七日か。

「つまり大型種の相手をあと四十七日間、続けなければならないのですね」

「そうね。しかも回天の間は月がどの軌道を描くか予想がつかないの。この王都の上空にだって来るかもしれないわ」

 急に軌道が動くわけではないので、王都に落ちてくるとしても徐々に近づいて来た末でだ。
 その予兆があれば町はパニックになるだろう。

 現状、回天が終わるまでは、どこに住もうが安全な土地はないわけだ。
 ならばせめて、月がどう動いてもいいように対処せねばならない。

「分かりました。誠心誠意、月魔獣を狩らしていただきます」
「期待しているわ。それと昼間に聞いたのだけど、技国はサポート部隊を編成したのですって?」

「はい。大変便利でした」
「あれは竜任せの竜国にはない発想ね。そのやり方を詳しく聞いたから、すぐに導入するつもりよ。ちょうどレオンの部隊で実験しましょう」
「はっ」

 月魔獣の被害が少ない場所に拠点を造り、そこから巡回に出るやり方だと、この回天には対応できない。

 月の軌道によって、どこに月魔獣が降下するか分からないのだから、サポート要員を拠点の中に押し込めることにあまり意味はない。

 僕も技国のやり方は有用だと思ったので、あとで進言してみようかと考えていたほどだ。

「それで国内はいいとして、問題は技国と商国ね。技国は新年早々に同盟を発表するとして……」

 問題は商国か。
 女王陛下も魔国に西の都が占領された話を聞いたのだろうな。

「兵力を持たない商国とはいえ、簡単に占領されるものでしょうか」
 僕はそこが疑問だったりする。

 簡単に武力占領できるならば、どこかの国がやってもおかしくない。
 商国の守りがそんなヤワとは思えない。

「西の都には、費用対効果の薄い防衛兵器があるようね。それと傭兵?」
「はい。他には、細い一本道や高い城壁なども占領を難しくしていると聞いております」

 西の都は、天然の要塞の上に立つ。
 兵で囲っても、半月やひと月くらい、簡単に持ちこたえそうなのだ。

「いま確認に行かせているけど、もし商国が落ちたのなら、商人たちはどう動くかしら」
「東の都へ。その後は様々な町に散るでしょうか」

「そうね。けど、新しい町を作りそうなのよね。候補はいくつかあるんじゃないかしら」
 新しい町か。豪気だな。商国商人って、財が有り余っているイメージがあるから、それも可能かもしれない。

「では西の都陥落は、それほどダメージにはなっていないのでしょうか」
「商国の富を当てにしたのならば、アテが外れたんじゃないかしら」

 ソウラン操者が商国の隠し倉庫を襲撃したらしい。
 場所を教えたのは女王陛下だって、なにやってんの!?

 あそこは不毛の地なので農耕はできない。食糧、物資はない。
 占領したところで、果たして維持できるのかと女王陛下は笑っていた。

 ソウラン操者を派遣したのって、それを予想したわけじゃないよな。

「情報が集まれば、商国も魔国も分かるでしょう。それでレオン」
「はっ」

「竜国にいる月魔獣を片っ端から排除しなさい。期待していますよ」
「必ずや」

 この回天をいかに被害を出さずに乗り切るか。
 やれるだけやってやろうじゃないか。



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