挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第5章 大転移-回天編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

387/660

387

 技国、兎の氏族本拠地。

「ただいま戻りました」
「無事だったようじゃな。月魔獣の様子はどうであった?」

「大型種がほとんどですね。数としてはそう多くありませんけど、国境線上に散っているので、探すのに時間がとられる感じです」

「狩り逃したりは?」
「シャラザードの目がいいので、たぶんないと思います」

 月が重なってから六日目の夜。
 兎の氏族領に戻ってきた僕は、これまでの成果をディオン氏族長に報告した。

「ちなみにどのくらいの数がおった?」
「今日だと四十体よりやや多いくらいですかね。見つけたのはすべて倒しましたけど、この後も国境を越えて来るでしょう」

「四十体で少ない……のか?」
「降下した数からすれば、少ないんじゃないでしょうか。百体くらいこっちにやってきてもおかしくないですし」

「それだけいたら町が滅ぶな」
「まあ、そうですね」

「否定せんのか」
「やってくるのは大型種ですから、防壁は役に立たないですね。滅びますよ」
「うーむ」

 大型種を想定していなかったことで、これまでの技国の策がことごとく使えなくなっている。

「防衛を見直すにしても時間がない。かといって、東方に逃げるわけにもいかん」

「頭が痛いところですね。竜国と同盟が締結されたら、変わるんじゃないですか?」
「うむ。というわけで、近いうちに出発することになるぞ」

 予定通り、王都に出発するらしい。

「大山猫の氏族領とは連絡が取れたんですか?」
 技術競技会後も話し合いの場が持たれている。

「緊急時ゆえ、飛竜を使わせてもらっておる。各氏族の合意ももらったし、同盟の内容も概ね好意的に受け取ってもらえたようじゃ」

 竜国へは何人もの文官がすでに派遣されて、同盟締結に向けた詰めの話し合いが行われている。
 氏族の合意が得られた後は調印するだけだが、それには技国の首都から代表者が派遣されなければならない。

「では竜国へ行くんですね」
「うむ。ただし状況がこうなってしまっては、わしはおろか、モーリスもここを離れられない」

「氏族連合軍の結成準備ですね」
 モーリスさんは今、対月魔獣用の軍を編成している。

「氏族長がここを離れられないのは分かりますが、まだ大山猫の氏族領からだれも戻ってないですよね」
 アンさんの両親を含めて、外交に強い人たちは行ったままだ。

「調印さえしてしまえばよいと考えるならば、孫娘でも良かろう。他に身内を十数名連れていく予定じゃ」
「期限が迫っていますし、それしかないでしょうね」

 氏族長とモーリスさんが動けず、アンさんの両親はいまだ大山猫の氏族領にいて、各氏族の代表と協議中。
 直系だとアンさんくらいしか動ける者がいない。

 同盟の調印を一ヶ月でもずらせばよいのだけど、月魔獣の大量降下でそれもできない。

「それとだ。未確認だが、少々厄介な情報が入ってきた」
 氏族長の顔が渋い。よほど嫌な話なのか。

「あまり聞きたくないんですけど」

「そう言うわな。聞いて貰わねばならんのだ。……最近技国に難を逃れてきた商人たちがおってな、それが言うには、西の都が落ちたらしいのじゃ」

 商国にあるふたつの町。そのうちのひとつが西の都だ。
「月魔獣が来たのですか?」

「いや、魔国軍じゃ」
「はい!?」

「逃げてきた商人どもはそう言っておる。ただし、証言のみ。確認はとれておらん」
「ちょっと待ってください。考えてみます」

 竜国から技国へいく場合、アラル山脈を避けるため、西の都付近には近づかない。

 他国を刺激する必要はないので、伝令役の飛竜でもよほどのことがないかぎり、西の都が見える位置を飛行することはない。

 つまり、竜国もまだその情報は得ていないことになる。

「未確認というのは厳しいですね。早急に人をやった方がいいと思いますけど」
「当然だな。いま人をやっておる。詳細が分かるのはもう二、三日後になるだろうな」

「しかし、西の都ですか。噂だと、かなり強固な防衛機構があるはずですけど」

「富が集中しておるゆえ、多数の傭兵もおるはずじゃ。じゃが、一国の軍に攻められれば、その限りではないかもしれん」
「そうですね」

 結局、商国の件は確認に向かった者が持ち帰る情報を精査してからということになった。
 対策としては何も変わらない。
 そもそも魔国の侵攻があってから、国境の警備はかなり厳重になっている。


 この日より二日後。
 僕はアンさん以下、十人以上の人たちを連れて王都に向かった。

 シャラザードの場合、途中で一泊する必要はないので、王都までは一直線である。
 途中、いくつかの町や村の上空を飛んだが、月魔獣の被害を受けた様子はなかった。
 一安心である。

 無事王都の到着し、応対に出た人に引き継ぎをする。
 これで僕はお役御免となる。
 今回は、技国の使者を王都に連れてくる役目であり、女王陛下にお目通りすることもない。

「では僕はこれで」

 そう言って去ろうとすると、「今夜来るようにと仰せです」と、出迎えた者のひとりが僕にそう囁いた。〈影〉のひとりが紛れていたようだ。

 呼び出しということは、僕が受けた指令の報告だろうか。
 帰還したばかりで催促されるとは思わなかったが、火急の用件でもあるのかもしれない。
 僕は小さく頷いた。

               ○

「レオン、この度のこと、おつかれさま」
「……もったいないお言葉です」

 王宮にある裏の謁見の間。
 僕が登場するとすぐに、女王陛下からねぎらいの言葉が降ってきた。

 優しい言葉をかけられても、悪い予感しかしないのはなぜだろう。

「それでね、レオン」
「はっ」

「いいことを思いついたのよ」
「はっ?」

 女王陛下が思いついた? いいこと?
 思わず聞き返してしまい、女王陛下の顔を凝視してしまった。

 微笑みを浮かべた顔がそこにあった。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ