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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 竜国の南方。

 反乱が鎮圧された後も多くの兵が町に駐屯し、昼夜問わず目を光らせている。
 ここはある意味、一番安全な町になっていた。

 リンダ・ルッケナは支店を開くため、南方の町の雰囲気や、そこに住む人々の情を肌で感じるため、自ら現地入りしていた。

「……ふう。これで資料は完成っと」

 高級な宿の一室で夜遅くまで仕事をし、ようやく目処がたった。
 リンダは身体をほぐすように肩を回し、窓辺に立つ。

「あら? 今日は月がひとつだけ?」

 そうだっただろうか。
 昨日はたしかにふたつの月が天上にあったと記憶している。

 不思議そうに窓から月を眺めていると……。

「な、なに!? どういうこと?」

 月の裏側から、もうひとつの月が姿を現しはじめた。

「そ、そんな。おかしいわよ、あれ」
 リンダの常識では、ふたつの月はあれほど近づいたりしない。

 それがおこるのは、大転移のとき。
 だが大転移ですら、ふたつの月が互いに影響し合いながら軌道を外れていく。

 そう習ってきた。

 だからリンダには、この現象を説明できるような言葉を持たなかった。

 そして町の人々も同様だったらしい。
 何人かが月の異変に気づき、声をあげ、人を呼び、それが広がっていった。

 夜だというのに、町はまるでお祭りの一団がやってきたかのように騒がしくなった。

「……まさか、本当に? これが大転移?」

 道で老若男女が口々に「大転移」という言葉を紡いでいる。

 リンダは自らの身体を掻き抱くようにして、月を眺め続けた。

               ○

 竜国、旧王都。

 そこには、忠義の軍団(ロイヤル・クラウン)の研究者たちが隠れ住んでいる。

 その中でも、史料編纂(へんさん)室に所属する人々は、日夜、古文書の解読に精を出している。

 最近そこに新しい者が加わった。

 つい最近、王立学校を卒業したばかりの才媛であるにもかかわらず、古代文字に精通し、それを使いこなす『潮の民』と会話をした唯一の人物である。

 彼女の名はロザーナ。
 訳あって、実家との縁は切っている。

 ロザーナが『潮の民』と会話したことで、これまで正しいと思われていた古代語の発音や、用法の間違いが見つかり、研究が格段に進んだ。

 また領主館にある門外不出の史料を読んだこともあるため、その知識量は年齢に見合わず、かなり多いものだった。

 ロザーナは古参の何人かとともに、解読のリーダーを任され、部下を使い、充実した日々を送っていた。

 そんなロザーナが、就寝しようと旧王宮の回廊を歩いていると、今まであった月明かりが心許なくなったことに気づいた。

 火を灯していない回廊は、月明かりがないと歩きにくい。
 ロザーナは雲でも出たのかと、何気なく空を見上げた。すると……。

「カイダの裏に……エイダノの月が!?」

 ただひとつの月を見て、ロザーナはすぐに察した。
 直後、もと来た回廊を駆け戻った。

「ケイリーさま」
 史料編纂室に飛び込むと、ロザーナはケイリーの前に詰め寄った。

「どうしたのじゃ、ロザーナ。そんなに慌てて」
「月が……月が重なりました」

「ほう……大転移にはまだ早いと思うが、どれどれ、見てみようかのう」

 ケイリーとロザーナが窓辺に向かう。

「たしかに月が重なっておる。あれはどういうことじゃ?」
「家の史料で読んだことがあります。大転移の前にあの現象が起こることがあると」

「……ふむ」

「エイダノとカイダは同じ大きさに見えますが、実は違うと前に話したと思います」
「うむ。聞いておるよ。……だからカイダの裏に隠れられたのか」

「はい。あの現象について書かれていた史料は、幼い頃読めませんでした。一族の者はだれも。私だけが大人になって読めるようになりました。ですので、あれを知っているのは、私だけかもしれません」

「ふむ。あれはどういう現象なのじゃ」

「あれは『回天かいてん』と言います。ふたつの月があまりに近づき過ぎたために起きた現象で、回天がおきると、月の軌道はまったく別物になります」

「そんなことが? 軌道が別物というと、予想外のことが起こりそうじゃが」

「起こります。陰月の路も大きく動きます。それがしばらく続くとまた回天がおきて、元に戻るのですが、それが大転移の始まりになります」

「つまり、あれは大転移ではなく、その前兆だと」
「そうです。そして重要なのは、回天があるときの大転移は被害が……」

「被害がどうなるんじゃ?」
「被害が、桁違いに大きくなります」

「……なんと!?」

 ロザーナとケイリーが話しているあいだに、エイダノの月は、その軌道を大きく変えて姿を現した。

               ○

 魔国の首都、イヴリール。

 魔国はロイス・フロスト王がよく治めている。
 その首都といえば、高い防衛力に守られた繁栄した都市として有名である。

 首都に住む人々は、日々魔国王に感謝し、自分たちが首都に住める幸せをかみしめていた。

「……ん?」
 首都に住む住民のひとりが異変に気づいた。月が重なったのである。

「なんだ、あれは!?」

 月の後ろから、もうひとつの月が顔を出してきた。

「珍しいな……というか、見たことない現象なんだが」
「ああ。最近月魔獣が増えたって言われているけど、あれが原因かね」

「さあ……」

 人々は不安がるも、この町は高い防壁と多くの兵。そして強力な魔道使いに守られているため、不安に思うことはあっても、怖いとは感じなかった。

 しばらくして……。

「お、おい。あれ……鋼殻こうかくじゃないか?」

 空から次々と鋼殻が降り注ぎ始めた。

「ち、近いな。それに大きい」
「まさか大型種?」

「馬鹿言え。あんなに大量の大型種がやってくるわけないだろ」
「だが大きさが……地震か? 小刻みに揺れてないか?」

「そうだな。ズズーン、ズズーンって……もしかして、鋼殻が地上に落下した衝撃とか?」

「そんなもの、いままで感じたことなかったぞ」
「それだけ落下地点が近いか、落下してきたものが大きいのか」

「その両方だったりして」
「よせよ、縁起でもない」

「そうだよな。ははは……」
 男は笑い飛ばそうとしたが、その笑顔は途中で凍り付いた。

「み、見ろ!」
「あれ、マジか?」

 多くの首都の住民たちが空を見上げている。
 彼らの目には、空の遠い場所からやってくる一際大きな鋼殻が目に入った。

「こっちに向かってないか?」
「ま、さ、か」

「大きさも……あれ」
「大型種なんか目じゃないぞ」

「く、来るぞ!」
「拙い。逃げろ!」

「どこへ?」
「いいから!」

「わあああああ…………………………くる」

 その日、大型種を遙かにしのぐほど巨大な鋼殻が落下し、魔国の首都は滅んだ。


 終わったー! と叫びだしたくなりました。もぎすずです。

 ようやく「第四章 竜国政争編」が終わりました。
 ここに来るまで長かったです。
 昨年八月に投稿をはじめて、なんと半年が経っているんです。


「まだ、たった半年じゃねーか!」


 ごもっともです。
 ですが、もぎとしては結構長かったという印象です。
 連載当初から毎日読んでくださった方、途中から一気に追いついた方、ここまでノンズトップで読み進めた方。

 ――お読みいただき、ありがとうございます

 みなさまのおかげをもちまして、3万6000ポイント、1900万PVを達成いたしております。

 半年でPVが2000万弱って、もぎ的にはすごいことです。
 これもみなさまに広く支持された結果と思っております。

もちろん「2000万ぽっちじゃ、他の人気作に負けるじゃねーか」と思う向きもあるかと思います。それでも半年間の集大成として言わせてください。

――長いプロローグが終わったどぉー!

 100万字弱も書いてプロローグもないですが、次からは「大転移編」がはじまります。

(註:大転移編はそんなに長くならないと思います。あと100万字以内には終わるかと)

 ここまでほぼプロット通りに来ています。若干四章のイベントを削ったくらいです。

 連載するにあたって、もぎは、毎日2話更新する。物語のクオリティは下げない。できるだけ読みやすい文章にする。主人公が知らない部分は極力載せない。
 この辺を意識して書きました。

 最近あまりに忙しく、返信もできていませんが、ここまで振り返ってみて、どういった感想を持ったのか、できればお聞かせ願えればと思います。

 普段書いてないなーという方はぜひ。

 さて、これからのことですが、「大転移編」は一日1話の更新(18時)とさせていただきたいと思います。忙しくていろいろ手が回っていないのです。

 それではよろしくお願いします!!
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