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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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「上は作戦の見直しを迫られたのだと俺は考えている。だが諦めたくない。だから長期戦で行く覚悟を決めたのだと思う」

 メイガスの言葉に他の商人たちが困った顔をする。

「長期戦? ずいぶんと消極的だな」

「そうね。家族やパトロンに恩を売ったり、竜国に居づらくさせて引き抜きをかけたりするんじゃないの?」

「今回ほど大物になるとそれは難しい。というわけで、数年のスパンを使って口説くんじゃないかと睨んでいる」

「大転移が近いのに?」
「そうだよ。焦りは禁物だが、時間をかけない方がいいこともある」

「長考と即決に金も銀もなしだ」

 商人たちが、あーだこーだと言い合っている。
 様々な意見が出たあとで、メイガスがゆっくりと喋った。

「上はな、大転移後の世界を見据えている。そう思わないか?」
「どうだろう。ちょっと曖昧だな。そう思う根拠は何だ?」

「今回、全員に与えられた指示がバラバラだったのは理解しているか?」

「そうね。変だと思ったわ」
「俺も気になったが……」

「そんなこと、これまでなかったものね」
「あの指示に、何か意図があるのか?」

 ん? どういうことだ。
 指示がバラバラって……ああ、僕に近づいて来た目的か。

 知己を得たいだけの人もいたし、一緒に商売ができればと言ってきた人もいた。
 僕が興味ありそうな話を無作為にしはじめた人もいた。

 僕に対する距離感はバラバラだった。そういうことかな。

 四人は僕の反応について話し合っていた。
 そのどれもが正確で、僕のことをよく見ていることが伺えた。

 僕が何の話に食いついてきたのか。どんな話題をすると嫌な顔をしたのか。
 本人や他人を褒めた場合はどうなのか。僕が知りたがっている話は何なのか。

 なるほど、みな役割を持って近づいて、その結果を国に持ち帰る義務を負っていたわけか。
 これって、「僕を偵察」しに来たってことだよな。

 僕の反応を見るのがメインのようだから、軍で言うところの威力偵察か。
 彼ら若い商人たちを使って、僕が好む話題を引き出させた感じだ。

「うまいな」
 そう思ってしまう。

 同時に、大転移が近いのに僕の好みを調べるなんて、ずいぶん悠長なことを……そうか、だから彼らはああ言ったのか。

 ――大転移後の世界を見据えていると。

 いますぐ取り込むのは不可能と判断して、完全に敵に回るのか、それとも味方に取り込めるのか、いや、敵味方という単純な色分けではなくて、一歩でも半歩でも自分たち側に近づけられるよう、知恵を絞っているんだ。

 なぜ僕なのか。
 それはソウラン操者との違いだ。

 人気があり、立場が確立しているソウラン操者を切り崩すのは難しい。
 だが、竜を得てまだ一年の僕の場合は違う。

 王都に流れた噂は間違いなく商国の思惑が入っている。
 そして今ならば分かる。

「……女王陛下、知っていて指令を出したな」

 なにが「商国の企みを潰せ、手段は問わない」だ。
 そう言われれば、僕は商人たちを警戒し、目的を探る。

 彼らの企みに気づけば、自ずと噂が故意に流されたものだと気づく。
 女王陛下は、商国商会が僕に友好的に接触してくるのは分かっていたはずだ。

 僕の価値や、巷に流されている噂から、どういう行動に移してくるか、容易に把握できただろう。伊達に竜国の頂点にいるわけじゃない。

 竜の流出、その危険性については、僕よりもよっぽど理解しているのだから。

「その上で潰せということは……」

 女王陛下の意図はどこにあるだろう。
 この商人たちをふん縛れというのは違う。
 竜国もそれは求めてないはずだ。

 彼らが嫌がる……もしくは悔しがるような行動をしろという指令のはず。

「話に乗ればいいのか」

 敵対するのではなく、敵の作戦がうまく行っていると見せかけて、あとで「ぎゃふん」といわせればいいんだ。

 そう、「ぎゃふん」だ。

 よし、方針は決まった。今日は戻ろう。

 どうすれば取り込めるのか知恵を出し合っている四人をおいて、僕は部屋を出て行った。

 ようし、最後は彼らを「ぎゃふん」と言わせてやるぞ!


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