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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 商国は僕を狙っているらしい。
 どう狙っているのかは分からないけど、近いうちに接触があるだろうとのこと。

 女王陛下から目的を把握した上で、その企みを潰すように言われている。
 指令の内容は伏せて、商国が僕に接触してくるらしいとだけ伝えた。

「商国がのう」
「何を考えているか分かりませんが、いま接触してもいいことはないと思いますので」

「そうじゃな。よし、わしの方でも注意しておく」
「お願いします。それと魔国の状況ですけれども」

「手紙にもあったな。魔国王が動いていると」
「ええ、詳細は分からないようです」

「王の動向ならば、最重要機密であろう。分からない方が自然じゃ。簡単に分かるようならば、罠を疑うくらいじゃ」
「なるほど、そうですね」

「我が国は前回不意を突かれたからのう。いまは国境を監視しておる。万一のことも起こらんじゃろう」

 各氏族とも、国境線への監視はかなり強化しているようだ。

「女王陛下は力業でくることを気にされています」
 大軍を揃えて、堂々と国境を越えてくるかもしれない。
 もしくは、最精鋭を送り込むか。

 同盟が締結されていない今ならば、竜国の干渉を最小限に防げる。
 電撃的に侵攻して技国を蹂躙。領土宣言してあとは内政干渉と突っぱねることも視野にいれなければならない。

「それでお主というわけか」
 氏族長は察したようだ。

「はい。僕のもうひとつの役割は、この立場を利用して魔国に立ち向かうことのようです」

 アンさんの婿がたまたま兎の氏族領に来ていた。
 自分の婚約者、義父、義母たちを守るため、個人的に技国での戦いに加わった。

 そんな筋書きだろうか。

「大丈夫だとは思うが、何かあったときには頼む。……じゃが、年内には戻るのじゃろう?」

「そうですね。ただ、新年ギリギリまでは大丈夫かもしれません。竜迎えの儀が年明け七日にありますので、どんなに遅くともそれまでには戻りますけど」

「分かった。年内に戻るつもりで考えておく。アンのやつもあと十日もすれば戻ってくるじゃろう。時間はある」
「分かりました」

 これで氏族長との会談は終わった。
 僕はあてがわれた部屋に行き、ようやく一息つく。

「問題は商国からの接触だよな」

 序列一位になったことを祝う会は、数日間続けられる。
 通常の祝賀会と違うところは、招待状を出していないことだろうか。

 アンさんたちはいまだ大山猫の氏族領にいる。
 向こうでも祝賀会を開きつつ、さまざまな交渉事をやっていることだろう。

 ここでは、大山猫の氏族領に行けなかった人たちで祝うものだ。
 当然、内輪の会で、兎の氏族の者たちが中心になる。

 一方で、出入りする商人や、近くの氏族の者などもお祝いに駆けつけてくる。
 大山猫の氏族領までは遠いけれども、ここには来られる人は出てくるだろう。

 祝賀会の会場はそんな来賓でごった返すはずだ。
 もし僕に接触してくるとしたら、その時一番可能性が高い。

 いきなり暗殺とは考えにくい。
 勧誘だろうか。それとも……。



 祝賀会が始まるまでの数日間、僕は町に出たり、シャラザードに乗って周辺を飛んだりして過ごした。

 国境線の警備を自分の目で見たかったので、無理を言って、兎の氏族の人たちについてきてもらった。

 シャラザードの背中に乗せて、国境線の監視をしている場所を巡る。
 なんと、どこでもシャラザードと僕は大歓迎を受けた。

 いま兎の氏族があるのも僕のおかげだと、涙ながらに語る人もいたくらいだ。

 兵を蹂躙したことばかりを強調される竜国を考えると、たしかに何者かの悪意が働いている可能性も考えられる。
 そう思わずにはいられない。

 アンさんのお兄さんのモーリスさんとは、模擬戦を行った。
 剣を合わせて分かった。剣の腕は相当なものだった。

 真正面からかかっていったら、敵わなかったとだけ言っておこう。
 モーリスさんからは、筋がいいと褒められたが、実力差は歴然としていた。

 氏族に連なる者は、とにかく物心がつく前から鍛えるため、若年でも熟年の技の冴えを見せてくる。

 訓練量が足らない僕では、到底敵わないのだ。

 兎の氏族にいる竜は、シャラザードだけではない。
 連絡用にと、二体の飛竜が常駐している。

 この飛竜たちの世話を通して、竜の扱い方を学ぼうと、多くの竜務員候補たちが日々、学んでいる。

 技国の人たちの特性だろうか、彼らは一度学び始めると、様々なルートを開拓していく。
 効率を重視するルートや仕事を極める匠のルート、その真ん中をとった職人ルートなど、それぞれが独自に研究し、その腕を競っていく。

 つまり、技国の技術は一方向に向かって伸びていくのではなく、多方面へ伸ばしていき、その集大成が日の目を見ることになるようだ。

 これは真似出来ないなと思った。そして、僕のパン作りにも生かせないかと考えた。
 今あるやり方を効率化したり、新しいパンを開発したり、お客さんの意見を取り入れる仕組みをつくったりと、うまく活用していけたらいいと思った。

 そんな充実した日々が続き、人や物が慌ただしく出入りする中、競技会の優勝を祝う祝賀会が始まった。


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