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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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 寮に戻り、私服に着替えた。
 今日着た制服は式典用の立派なものだが、普段はもっと地味なものを着る。
 紺色を主体とした動き易いものだ。

 二回生は授業があり、ここにはいない。
 同室のアークも戻ってくる気配はない。

「きっと茶話会ティーパーティに出ているんだろうな」

 僕たちが入学式に出席している時に、控室では急ピッチで模様替えが行われていたらしい。
 これも王立学校の伝統っぽい。
 茶話会のセッティングである。

 出席は任意。
 だが、講堂から出てきた新入生たちをそのまま控室に連れていって、なし崩し的に始めてしまう算段になっていた。

 祝われる新入生たちも悪い気はしないだろう。
 なので、ほとんどがそのまま捕まることになる。
 ハンターと獲物の関係だ。

「きっと帰ってくるのは夕方だろうな」

 講堂の出口で、お茶だ、お菓子だ、ケーキだと叫んでいたので、短時間で済むはずもない。
 どうも竜操者のパトロンになるため、つまり僕たちに選ばれようとするために、みなかなり積極的に動いている。

「夕方には王城に行かなきゃな。ならその前に……」

 明日から授業が始まる。
 カリキュラムも分かった。ようやく配られたのだ。

 中身を見てみると、最初は座学の時間が多い。
 だが、体力づくりの授業は一度始まると半日は埋まってしまう。それなりに大変だろう。

 それとは別に教養の授業がある。
 実践的な内容になっていた。

 ロブさんのところで、明日からのアルバイトについて相談したい。
 ついでにお貴族さまへの配達もちゃんとできたと伝えなければ。

「じゃ、行くか」
 僕は、闇に溶けた。

               ○

「あら、レオンくん?」
 店の裏口から入ろうとすると、ちょうど裏口から出てくるミランダさんに会った。

「どうもお疲れ様です、ミランダさん。今日はあがりですか?」

「店番はファイネさんがやっているし、そろそろミラちゃんも配達から帰ってくるしね。ケールくんもとっくにあがったわ」

「そうだったんですか」

「今日、入学式だったんでしょ。ここへ来て、いいの?」
「もう終わりましたから」

「あらら……最初からサボると、有名になっちゃうわよ」
「……んと、どういうことです?」

「学院の生徒の情報はすぐに広まるのよ。最初から積極的でない生徒は、もう大物がパトロンに付いているんだって思われるわね」
「まったくアテはないですけどね」

「そうなの? だったら、それも含めて噂になるかしら」
「えっ?」

「そのうちパトロンは誰々に決まったとか、いまどこぞのご令嬢とご令嬢が火花を散らしているとか、そういう噂が町に流れるのよ。ちょっとしたゴシップね。でも、パトロンを探すことをしないのに、どこともつながりがないなんてことになったら、かなり注目されるわ」

 他国のスパイと接触したとか、実は領主の隠し子だとか、そんな噂が飛び交うこともあるらしい。

「静かに暮らしたいからって理由なんですけどね」
「世間では、そう見てくれないわね。覚悟した方がいいかも」

「マジですか」
 僕をめぐってパトロンどうしの争奪戦とか勘弁してほしいし、そもそも竜操者関連の人たちとあまりかかわりたくない。
 辺境でパン屋をやりつつ、ほそぼそと暮らせたら満足なのだ。

「どんな噂が流れるか、耳を大きくして待っているわね」
 ミランダさんはウフフと笑いながら行ってしまった。

「たしか、妹と弟が三人いるって言っていたよな」
 なんともお茶目な人だ。

 店に入り、店長のロブさんに入学式が終わった報告をした。

「竜操者がアルバイトなんざ、前代未聞だろ。バレないようにしろよ」
「分かっています。それで、明日からなんですけど」

 今までは朝からはじめて、時間が許すかぎり手伝いに来ていた。
 明日からは、授業の関係で朝のみになりそうだった。

「おう。朝の仕込みだけでも手伝ってくれりゃ、だいぶ楽になる。よろしく頼むぜ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

「でもあれだろ。時間あるのか?」
「なぜです?」

「竜の学院からここまでは結構な距離がある。往復するだけで、大変なはずだぞ」
 ロブさんは僕が『闇渡り』で地下水路を使っていることを知らない。

 闇を渡れば、距離も時間はかなり短縮されるので、全然問題ないのだけど、さすがに言うわけにはいかない。

「早起きは慣れていますから平気ですよ。そもそも実家じゃ、日が暮れる頃には寝ていましたしね」
 これは本当だ。
 暗殺者の仕事がある場合、軽く睡眠を取ってから向かうことになる。

 僕と父がそんな生活を続けていたからか、一家全員、早寝早起きなのだ。

「そうか。ねぼすけなパン屋は続かねえって言うしな。ま、辛くなったら言え。その時は考える」
「分かりました。ありがとうございます」

「おうよ。さっきミラのやつが戻ってきたようだから、顔だけ出してやってくれ。気にしていたからな」

「了解です。じゃ、さっそく会ってきます」
 表の店の方にミラの気配がある。
 僕はロブさんと別れてミラの元へ向かった。

 さて、それが終われば女王陛下との謁見だ。

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