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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 女王陛下からの指令を全うするため、すぐに兎の氏族領へ赴いた。

 シャラザードならば一日で着く。
 すでに何度も来ているため、不安はない。向こうも分かっているだろう。

 それでもいきなり本拠地に降下するのは良くない。
 顔見せがてら、町の上空を旋回することにした。

 上空を回ればだれかしら気づいてくれる。
 安全を確認してから降下する……つもりだったが、どうも様子がおかしい。

「歓迎されている?」

 町の住民たちが空を見上げて手を振っていた。
 それも多数……いや、大多数が歓迎してくれている。

 子供たちは大はしゃぎだ。
 ど、どういうことだろうか。

 顔見せが済んだので、本拠地の中に下りる。
 降下予定地点は空けてくれている。

「シャラザードをお願いします」
 竜務員の人にシャラザードを任せて、出迎えた人たちに挨拶する。
 氏族の館で働いている人たちだ。
 竜国でいうと、文官の下で事務方をしている人たち。

「レオンです。シャラザードともどもお世話になります」
「レオン様、お待ち申しておりました。氏族長がお会いになるそうですので」

「えっ、いきなり氏族長ですか。……分かりました。僕は構いません」

 ディオン氏族長は、暇なのだろうか。
 そんなはずはないのだけど。

 到着した直後に氏族長の執務室に通された。
 案の定、氏族長は書類に囲まれていたが、僕がくるとそれらをすべてうっちゃって、笑顔で挨拶してくれた。
 重要そうな仕事みたいだけど、いいのか?

「やあ、婿殿。よく来てくれた」
 満面の笑みである。そして固い握手。

「お呼びいただきありがとうございます。それと、技術競技会での優勝。まことにおめでとうございます」

「うむ。予定調和の内に終わったようでな。今回は運が良かった」

 序列一位が自滅して、二位が単独で挑んだ今回の競技会。
 序列三位だった兎の氏族は、大同盟を組んだことで、技術力の底上げがかなりあった。

 優勝するのは当然とはいえ、プレッシャーもあったことだろう。

「早速ですが、これは女王陛下からの手紙です」
「預かろう」

 氏族長はその場で手紙を読んでいろいろと納得した顔をしだした。

「反乱の決着、たしかに承ったと伝えてほしい。……まっ、婿殿が帰るときには、我が氏族から何人か同行するがな。その時に話せよう」

「あっ、はい。それも聞いています。同盟締結のためですよね」
「そうじゃ。いまごろ息子たちが、技国の意見を統一させるための詰めをしているじゃろう」

 氏族長の息子夫婦、マルセルさんとコレットさんはいまだ大山猫の氏族領にいるらしい。

 競技会が終わったので、引き継ぎのために残っているのだが、どうせ各氏族が集まっているのだからと、竜国との同盟について協議をしているという。

 ちなみにアンさんも両親と一緒だ。つまりここにいない。
 残念ながら、ここにはいない。二度も言ってしまった。

「同盟が締結されれば、竜を各氏族に常駐させると女王陛下は仰ってましたけれど」
「その方向で話が進んでおる。代わりに技国からは格安で技術提供をする予定じゃ」

 その辺は持ちつ持たれつということだ。
 竜国に技国の技術が入ってくれば、かなり発展するんじゃなかろうか。

「首都の交代は年明けであるから、あとひと月。楽しみじゃ」
 もうすぐ十二月。
 十月の中旬に技術競技会が一ヶ月ほど行われた。

 その開催期間中に魔国の侵攻や、竜国の反乱があったため、僕は結局戻れず終いだった。

 同盟締結のため、年末に竜国へ赴き、そこで新年を迎える。
 年が明けた直後に同盟締結を発表する感じだという。

 その後はすぐに協力体制がスタートする感じらしい。
 なかなかにスピーディだが、大転移がすぐそこに迫っていることから、しょうがないのだという。

「そういえば、ここに降り立ったとき、町の人たちから歓迎を受けました」
「それはそうじゃろう。この町を救った英雄であるしな。この町が……市街地が戦場になり、本拠地陥落も目前となった」

「ええ」
「そこにお主とシャラザードの活躍で魔国軍が撤退したのじゃ。お主は町を救った英雄じゃ」

「そうなんですかね。竜国の王都じゃ、かなり酷い言われようなんですけど」
「ほう。どんなじゃ?」

 僕につけられた名を氏族長に話した。
 さすがに、『はだにげレオン』はないと思ったのだけど、氏族長はどう感じただろうか。

「……おかしいのう」
「えーっと、なにがおかしいんです?」

「その噂、商人が運んできたと言ったな」
「ええ。それと王都の民が言っていたみたいですね」

「それはわざと流されたものかもしれんぞ」
「そうなんですか?」

「商国に竜が多いのは知っておるよな」
「ええ」

「あれは竜操者を家族や親族ごと引き入れたりするのじゃが、だいたいその前に悪い噂が流れたようじ」

 氏族長が言うには、商国に引き込みたい竜操者がいる場合、本人もしくはその家族の悪い噂が流れ、なんとなく竜国に居づらくなった頃を見計らって、接触。好感触だった場合、勧誘してくるという。

 つまり、長期的視野に立った『勧誘戦略』があったからこそ、竜操者の引き込みが可能だったらしい。

「そう考えると、僕の噂も?」

「可能性としてはあるな。女王が放置しておるから、わざとそのままにしている事も考えられるし、気にする必要もないかもしれんが」

 僕が竜国を裏切って他国の所属になる可能性はない。
 そのことを女王陛下は分かっているから放置している? うん、あり得るかも。
 もしくは、商国の出方を楽しんでいる可能性も。

「そうだったんですか。知らなかったです」

 いくら竜国を裏切ることはないとはいえ、ここで歓迎されるのは悪い気はしない。
 とくに王都であんな噂が流れた後だと尚更だ。

「同盟を組んだら、月魔獣を共同で狩りに行くことになる。そのときは頼むぞ」
「えっ? 竜国と技国が共同でですか?」

「うむ。わしらは月魔獣退治の経験がほとんどないでな。その練習も兼ねて、竜国の戦術を取り入れようと思っておる。連携の訓練にもなるでな。それと、大転移に備えて技国の軍を統一するつもりじゃ」

 各氏族から精鋭を出し合って、大軍隊を作り上げるらしい。

「氏族の軍を統合なんて、今までやったことないですよね」
「初の試みじゃな」

「最近では大型種の降下も確認されていますし、戦力強化が課題になっています。頼もしいですね」

「自国の地以外で駆動歩兵の集団運用になるでの。克服すべき課題は多いが、絶対に成功させるとモーリスががんばっておる」

 いくつか軍を結成するが、そのうちのひとつはアンさんのお兄さんが指揮を執るらしい。

「そういえば、ひとつ気になったことがあるんですけど」
「うん? なんじゃ?」

「女王陛下に言われたことなんですけど」
 そう言って、僕は氏族長に相談した。


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