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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 僕は「おまけ」を引き連れて、王都に戻ってきた。
 命令の通り、反乱を鎮めることはできたと思う。

 ちなみに「おまけ」とは、シャラザードに従った竜たちである。

「彼らは反乱軍に加わった人たちです。拘束をお願いします」

 王宮の竜舎でそう告げたら、兵たちが驚いていた。
 なぜそんな危険な連中を連れてきたんだという顔をされたので、事情を説明しなければならなくなった。

「竜はこちらの支配下にありますので、拘束するのは竜操者だけ大丈夫です」

 兵たちは何か言いたそうな顔をしていたけど、最後はそれで納得してもらった。

 竜操者たちは素直に拘束に応じている。
 みな諦めの表情を浮かべているが、それは竜の使役ができないからである。

 いや、ひとりだけ僕を殺しそうなほど鋭い目で睨んでいるのがいる。壮年の竜操者だ。
 何か僕が気に障ることをしたかな。思い出せない。
 嫌ならば、反乱しなければいいのだ。

 街道で待ちぼうけをしていたときも、彼らは不思議と竜から離れなかった。
 言うことを聞かない竜に見切りをつけて、町に戻るかと思ったのだけど、そうはならなかった。

 街道に置いておくのもアレなので、竜に乗ったまま王都に連れてきた。
 暴れたところで竜の使役権が戻ってくるわけではないので、大人しくしている感じだ。

「僕は女王陛下に報告してきますので、後をよろしくお願いします」
 今ここには竜務員と警備の兵、さらに文官たちが何人かやってきていた。

「はっ、かしこまりましたッ!!」

 まるで敬礼の見本のような動作が返ってきた。
 ビシィ! と音が聞こえてきそうなほどだ。

 さすが王宮勤めの兵だけのことはある。
 隅々まで教育が行き届いているんだなと、ちょっと感心した。

 文官が案内をつけるというのでお願いしたら、文官見習いだろうか。
 若い人がきた。といっても僕より少し上くらいだ。

 彼はガチガチに緊張して、手と足が同時に出ている。
 最近の王都では、新しい歩法が流行っているのだろうか。



「どうだったかしら?」
 僕の謁見の願いはすぐに叶えられた。

「すべて片付きました」

 まずそう告げて、最初に戻って事情を説明する。
 途中、ソウラン操者が捕まっていたくだりを話したら、なぜか笑っていた。

「若い頃からちやほやされていたからかしらね」
 結構酷い。

 聞くところによると、ソウラン操者は女性に甘いらしい。
 それで何度か騙されたこともあったとか。

「領主のフラットですが、こちらを攻撃する意志を示したため、ソウラン操者が一刀のもとに斬り伏せました」

「フラットは捕まりたくなかったのでしょう。ソウランもそれが分かっていたから斬ったのね。まあいいわ。それで何か分かって?」

「はい。フラットが言うには、フィロス・シラームによって……とある人物に……えっと」

「分かったわ。それはこちらも把握しているのでここで言う必要はないわよ」
「恐れ入ります」

 黒幕の名前を出すのは憚れるので助かった。
 というか、こっちでも決着がついていたのか。

「すると残りは南と西ね。……ごくろうさま」

 パチンと扇が鳴った。
 合図が出たので、僕は謁見の間から退出した。



 城の回廊を歩きながら今回の件について考える。
 女王陛下は、最後に奇妙なことを言っていた。

 ――残りは南と西

 南は父さんが向かったんじゃなかったのか? まだ南は終わっていない?
 父さんが南を鎮圧したけど、その情報が王宮に届いていないとか?

 いや、それはないだろう。南の反乱はもともと規模が小さいものだ。
 領主一族や竜操者が捕まっているらしいが、裏を返せば町の大多数の者は反乱者側に与していない。

 父さんの実力なら鎮圧は容易なはずなので、南には行っていないことになる。

「それとなんで西が?」
 西といえば、リトワーン卿のいるあの町しか思い浮かばない。

 僕がアクリの町に出かける前は、なんともなかった。

「……もしかして、西が反乱に呼応した?」

 気になったが、あえて考えないことにした。
〈影〉として女王陛下のもとに行けば教えてくれるが、裏の謁見は心臓に悪い。

 それと今回の報告もやけに簡単に終わった。
 情報を大っぴらにしたくないと言うことだろうか。

 とすると、魔国か商国に漏れるのを嫌った事になる。
 藪をつつく必要はないと思う。



 王宮を出るときに、文官から今回のことは口外しないことを注意された。
 そしてしばらくは学業に専念するようにと。

「……つまり、技国に戻るなということだよな」

 まだ技術競技会は行われている。
 技国の客分待遇なので竜国が出席を制限するのはおかしな話だが、僕は頷いておいた。

 何か思惑があるのだと思う。

 僕はシャラザードと寮に戻って、久しぶりの学生生活を送ることにした。

 そして僕が王都に帰還してから三日後。
 王宮から発表があった。

 今回の反乱は、竜国運営会メンバーのフィロス・シラームが計画、実行し、アクリの領主フラット・エイドルが呼応して起こしたものであると。

 反乱は失敗。早期に鎮圧され、フィロスは処刑を待つ身である。
 また、フラットおよびその家族は反乱鎮圧の過程で死亡。
 竜操者を含めて、軍を率いた何名かが拘束された。

 アクリの町は、現在王都より派遣された文官、武官、操竜会および竜導教会が共同で管理している。

 この反乱を事前に知り得る立場であった者以外は、処罰しないとの通告もあった。
 この通告があって、町の民および末端の兵たちは安堵したという。

 この大らかにも見える処罰案だが、反乱鎮圧が早急に行われたこと、被害が思いの外少なかったことが大きく関係していたのではと噂された。

 僕はというと、寮に戻って授業を受けていたので、どのような政治的思惑があってこの結論に至ったのか、なにも分からない。

「……西はどうなったんだ?」

 そう思ったが、王都の民や耳聡い同級生たちに聞いても、竜国の西部で何か起こったようは話は聞いてないという。

 そしてさらに二日後。

 女王陛下の夫であるアルヴァータ・ルクストラの死亡が発表された。
 死因は、脚立から落ちたことによる頚椎骨折。

 資料を取ろうとして、脚立から足を踏み外したのが原因らしい。
 食事が減っていないことに気づいた給仕係が発見したという。

 周囲の状況から事故死と判断された。

 同日、反乱を首謀したフィロスと、その妻のイザベル・シラームが連座として、ひっそりと処刑された。
 フィロス夫妻に子はない。


 この発表があった日、学院にいる僕のもとへ、ソウラン操者が訪ねてきた。




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