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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 素早い身のこなしで殺到する呪国人。
 一方、リトワーンは迫り来る男たちをただ見つめるだけ。

 刃がリトワーンに届く……前に、男の首が落ちた。
「……!?」

 光が一閃した。
 呪国人の一人が危険を感じ、大きく飛び退く。
 だが、着地はできなかった。

 片膝と片手を床について転がる。
 着地するはずの足がなかったのだ。

 呪国人が荒い息を吐く。見なくても分かる。両足を失ったのだ。
 少し遅れて、失われた片足が振ってきた。
 残りの足ははるか遠くに転がっている。

「美しくないから、剣だけは使いたくなかったのだけどね」
 血塗られた剣を持ち、リトワーンがうそぶく。

「気をつけろ! こいつ、やるぞ!」
 一瞬で両足を失った男が警告を発するが、その間に一人の首が飛んだ。

「…………」
 たったひとり残った呪国人が唖然とする。

 絶対の自信をもって挑んだ暗殺が、ほんのわずかな時間で失敗したのだ。

「意外かな? だけど考えて欲しい。かつて私の一族がどうやって権力を盗ったかを」

 リトワーンの目を見て、呪国人は背中に氷を突っ込まれたような気分を味わった。
 この目の前の男は尋常ではないと、本能が感じていた。

「分からないかな? 少数で挑み、盗み取った王権の座。それを守るために流した血の量はいかほどか。……竜国の王族はね、いつでも簒奪者なのだよ。その時代で一番強い賊のなれの果てが王族なのさ」

「…………」
「その子孫が弱いわけないだろう。そう思わないかい?」

 自らの身を餌にして暗殺者を招き寄せる。
 そのような案を考え、実行する者が弱いわけがない。

「というわけで、私に剣を握らせたのだ。その責任はとってもらうよ」
 リトワーンは剣を一振りさせ、首を刎ねた。

「……ふう」
 剣についた血を払い、リトワーンは耳を澄ませる。

 階下の音は激しさを増していた。
「援軍到着まであと少し……私も向かうかね」

 抜き身の剣を下げたまま、リトワーンは階段を下りていった。

             ○

 アクリの町。領主の館。

 僕は途方に暮れてしまった。
 婚約者が死んだことでソウラン操者が使い物にならなくなったのだ。

 仕方ないので、かわりに僕が領主の私兵を無力化させた。

 刃向かってくる者は処理する。そうでない者は両膝を砕くにとどめておいた。

 ソウラン操者が手伝ってくれたらもう少し早く終わったのだけど、そんな気分ではないらしい。

 館内をすべて見てまわり、人がいれば領主の死を告げ、これ以上の抵抗を止めるよう説得した。
 ほぼ全員の意志を確認するのにかなりの時間を有してしまった。

 すべてを終えて戻ってくると、ソウラン操者は、ずっと同じ場所にいた。

「私はここに残って事後処理をするつもりだ。彼女をこのままにできないしね」
 ようやく復活したみたいだが、なにげに後ろ向きなことを言い出している。

 青竜という戦力があるのだから、ひとりでも多くの反乱兵を蹴散らしてはどうかと思ったが、たしかにここで事後処理する人は必要だ。
 文句は僕の心の内だけに留めておいた。

「分かりました。出発した兵が明日には戻って来ます。戦意が残っているか分かりませんけど、竜の部隊は引きはがしてありますので武装解除をお願いします」

「そうなのか? 兵は私の方で話をしよう」
 最初から話し合いの姿勢で舐められないかな? 竜でガツンとやって武装解除させた方が面倒がなくていいと思うけど。
 まあ、青竜がいれば大丈夫か。

 領主が死んだわけだし、これ以上騒げば、自分たちが粛正の対象になる。
 今ならばまだ、「軍人として命令されたので従った」と言えばなんとかなる。
 滅多なことでは暴発しないだろう。

「僕は女王陛下に報告します。この町にいた竜は街道上で待機していますので、僕が王都に連れて行くことになると思います」

「分かった。いろいろすまないね」
「いえ。それで、領主の死体はどうします?」

「女王陛下の元へ届けることになると思う。それは私が行おう」
「分かりました。……では僕はこれで」

 もうここですることは何もない。
 僕は館を出てから闇に潜った。

 そのままシャラザードのところへ戻る。
『終わったのか?』

「うん。ソウラン操者は……一気に老け込んでしまったみたい」
 最後の方は、人生に疲れた老人のように感じてしまった。

 婚約者を失って、心が疲弊したのだろう。
 その気持ちは分かる。

 僕だってもしアンさんを失ったら……関係者全員処理するまで止まらないかもしれない。

 ソウラン操者は、仕事をすることで心を平常に保ち、忙しく働くことで考えないようにしているのかもしれない。

「シャラザード、出発だ。さっきの場所、覚えているか?」
『小物どもがいた場所か。無論だ』

「そこへ行って、竜を回収して王都に戻るぞ」
『心得た』

 移動中、街道の近くで野営をしている一団を発見した。
 兵たちは言いつけを守って、ちゃんと引き返したようだ。

 途中で一列に並んだままずっと動かずにいた竜たちを拾って、僕は王都に帰還した。


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