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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 夜、アクリの町から少し離れた場所。

 僕はシャラザードと一緒にいる。
「じゃ、行ってくるよ」

『我はここで待っていればいいのだな』
「うん。もし青竜が飛び立つのが見えたら……」

『その時はしっかりと教育してやろう』

「殺さないようにね」
『分かっておる』

 反乱を起こしたアクリの町に、今から潜入する。
 シャラザードの巨体は目立つので、一緒には行けない。

 ソウラン操者が敵だった場合、それも青竜に乗って待ち構えていた場合、僕は闇の中から出ないつもりだ。
 どう転んでも、青竜相手では勝てない。戻ってシャラザードを連れてくるしかない。

「待ち構えてないといいな」
 闇に潜ったまま、町に入る。

 意外なことに、町の中はとても静かだった。
 町中にも自然が多く残っていて、普段からそれほど賑わっているわけではなさそうだが、いまはひっそりとしている。

「反乱のせいなんだろうな」
 住民はみな息を殺して、家の中に閉じこもっている。

 治安維持の兵は置いてないようだ。
 だとすると、行軍していたのが、反乱軍のすべてということになる。

「領主の館は……あそこか」

 小山の頂上に大きな館がある。
 周囲に巡らせた城壁を見る限り、領主は臆病か、とても用心深い性格に見える。

「よほど反乱に勝算があったとか?」

 山の中腹に竜の広場があった。
 青竜がいることから、ソウラン操者は館の中だろう。

「……あれ? なんでソウラン操者は行軍に参加しなかったんだ?」

 領主を守るため?
 青竜は反乱軍の最強戦力のはずだ。
 出し惜しみして負けたら意味はない。

 戦力は集中させてこそ意味があるはずなのに、なぜソウラン操者だけ館にいるのだろうか。

「うーん、会って話をしてみたいけど、結構強いんだよなぁ」
 槍の腕前は一流。
 魔道を使えば勝てるが、先手を取られると危ない。

「関わらないわけにもいかないし、先に無力化してから聞くか」
 両膝を砕いてからなら、安全に話を聞けるだろう。

 そう思って館に侵入した……のだが。

「……なんで無力化されているのかな」
 ソウラン操者は、両手と両足を鎖で縛られていた。

 領主館で最初に調べた部屋がこれである。

 縛られたソウラン操者を見て、僕は途方に暮れた。

                ○

 竜国、王城。
 サヴァーヌ女王はテラスから眼下の竜舎を眺める。
 そこには愛竜の『白姫』がいる。

「お茶をお持ちしました」
「そこにおいてちょうだい」

 女王は激務の合間をぬって、ときおりテラスでお茶を楽しむ。
 それができるのは何日かに一度、それもほんのわずかな時間。

 だからこそ女王はこの時間を大切にし、余人の立ち入りを許さなかった。

「どうしたの。もういいわよ」
 茶を運んだ給仕が一向に下がろうとしない。

 いぶかしんだ女王がさらに口を開いたとき、部屋の方からひとりの男性がやってきた。

「お久しぶりです、女王陛下」
 男は優雅な仕草で一礼すると、そのままテラスに足を踏み入れる。

「呼んでなくってよ」
「そうでしょうね。呼ばれた記憶はございませんので」

「……どういうつもりかしら、フィロス」
「お分かりになりませんか? だったら、これはどうでしょう」

 フィロス・シラームが一歩脇へ退くと、その後ろから数人の男女がなだれ込んできた。

 そのうちの何人かは女王も知っていた。
 給仕をする者、清掃を行う者など、みな城で働いている者たちである。

「………………」

「五年……かかりました。身元を保証し、城内で働かせ、この階層まであがることができるようになるまで、長かったですよ」

 テラスは城のより高い階層にある。
 少なくとも文官や武官ではおいそれと近づくことができない。

「見たことがないのもいるようだけど」
「ええ、手引きしてもらって招き入れました」

「間にはいくつもの関門があるのに?」
 城内に目を光らせている〈影〉は多い。それらの目をすべてかいくぐることは不可能だと女王は言っているのだ。

「多少乱暴な手を使ったことは認めますよ」

 その言葉を受けて、女王を護る〈左手〉の二人が飛び出した。
 フィロスが連れてきた者たちも同時に動く。

 剣戟の音がテラスに響き、暗器が両者の間を飛び交う。

 しばらくしてテラスに静寂が訪れた。

「これは驚いた。さすがに優秀ですね、五人も倒すとは、いやはや」

 足下に転がった死体は七つ。
 うちふたつは女王の〈左手〉だった。

「ですがこれで御身を護る者はいなくなりましたね。詰みです」

 五人倒されたが、フィロス側にはまだ六人残っている。
 もし異変に気づいて誰かがやってきても、テラスの端に追い詰められた女王を救うことはできない。

「妾が死んでもまだ息子たちがいるわ」

「ご子息にはご学友の中にそれとなく入れておきました……今頃は冷たくなっていることでしょう。ご息女が戻ってくるとは予想外でしたが、後ほど後を追わせて差し上げます」

 フィロスは技術競技会中に暗殺を決行する予定でいたため、サーラーヌ王女のことは考えていなかった。
 まさか戻ってくるとは思っていなかったのである。

「あまり時間をかけてもしょうがありませんので、お命頂戴いたします」
 フィロスが「やれっ」と小さくつぶやく。

 直後、暗殺者たちが女王に襲いかかった。


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