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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 スルヌフはここではじめて資料から顔をあげた。

「竜操者のレオンに関しては、少々……いやかなり特殊ですので、かいつまんで話すのが難しいですね」
「ん? そりゃ、どういうこった?」

「さっきも言ったように、時間不足で調査しきれませんでした。そして調査できた部分だけを繋ぎ合わせても真実が見えてきません」

「おい、『麦野ばくやの。そりゃないだろ。ただの平民上がりの竜操者だろ?』

「ですから時間が足りなさすぎます。それでも未知のことが多すぎて情報が信用できないのですよ。たとえば、ソールの町にある実家ですけど」

「実家? そりゃまたなんで本人じゃなく家なんか調べたんだ?」

「個人的に話をする機会がありましてね。まあ、私が近づいたのですけど……そのときの会話から、彼の原点は実家にあるパン屋だと感じたのです。それで調査させたのですけど……だれも戻ってきませんでした」

「おいっ!」

「つまり、竜国の〈影〉が護衛についているってことですね。まさかいち学生にそんな護衛がつくとは予想していませんでした」
「常時護衛なんて、超重要人物じゃんか」

「ええ。これは何かあると私も思います。ですが、誰ひとり帰ってきませんので、調査は止めました。かわりに本人の行動を探らせたのですけど……」

「そっちも護衛がついていたのか?」

「いえ、捕まらないのです。竜の学院にもほとんど戻らず、あっちこっち飛び回るのですよ。戻ってきたと思ったら、すぐにどこかへ行ってしまう。しかも黒竜は速いですからね。追いつけません」

「なんでそんなに」
「行き先は陰月の路がほとんどですが、南に行ったり、東にいったり。はてさて、今はどこで何をしているのやらという感じです」

「人海戦術で探るのか?」
「さすがに気づかれますね。時間をかけて立ち回り場所が分かったら張り込んだ方がいいでしょう」

「だが時間がないと」
「そういうことです。謎なのは竜だけかと思いましたが、本人も、そして家族も謎です。そういうわけで、調査を打ち切ったのです」

 フストラは引き際を心得ている。
 これ以上はこちらの素性が明らかになる可能性が高かったので、知りたい欲求を抑え付けて撤退させたのだった。

 もちろん他の理由もある。
 大転移が間近に迫っているため、探ることが山ほど残っているのだ。
 ただの竜操者ひとりに、そこまで手間と時間をかけられなかった。

「なるほどねえ。ちょっと引っかかるが、おまえさんが必要ないと判断したんだろ?」
「優先順位は低いと判断しました。それが裏目に出ましてね。彼の介入で、技国への侵攻が失敗に終わったのですよ」

「それが分からねえんだ。魔国はもう後がない戦いだったはずだが?」

「ええ、かなり強力な魔道使いも導入したので、途中までは順調に推移していました。蜻蛉の氏族を落として、すぐに兎の氏族領へ向かっています」

「その狙いは正しいな。他の弱小氏族を落としている間に、兎の氏族は防備を固めてしまう。やるなら早いほうがいい。……で、それで失敗したのか?」

「ええ。兎の氏族を落とせば、そこを拠点にして技国の半分は手中にできたのですが」
「それだけありゃ、魔国民の半数は移住できるからな。生き残りをかける価値はあるだろうぜ」

「魔国王の選択としては真っ当だと思います」
「そう思うように、おまえさんが仕向けたんだろ」

「そうですね、否定しません。ですが、この先を考えれば、魔国が滅んで技国が残るよりも、半数ずつでも残った方がいいですから」

「だが侵攻は失敗したと。そうすると、オレの方はどうなるんだ? 魔国に精鋭をおいてきちまったんだが」

「魔国は不退転の決意で動くでしょう。ただ……竜国も半分程度しか私の策が成功しませんでした。これも準備不足ですね。あと一年あればかなり違ったのですが」

「肝心の竜国が失敗したらヤバいだろ。どんな感じだ?」
「不確定要素はありますが、王都、西部、東部に関しては大丈夫だと思います」

「そうか。ならばいい。さすがに最強戦力を出したんだ。無駄死にだけはさせたくねえ」
「近日中に分かると思います。おそらくですけど、魔国に関わる余裕はなくなっていると思いますよ」

「なら竜国に新しい頭が誕生するんだな」
「まず間違いないでしょう」

「そっか。だったら、期待して待っているかね」


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