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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 商国、東の都。
 五会頭のみが入室できる部屋。

 豪華な机に突っ伏して眠っているのは、『銀檻ぎんかん』のダイネン・フォボス。

 部屋に入ってきた『麦野ばくや』フストラ・エイルーンはダイネンの近くに座り、抱えていた資料を広げて読み始めた。

「んあ?」
「おや、起こしてしまいましたか」

「おー、『麦野』の。いつ来たんだ?」
「今ですよ。この前も来ていましたけど、魔国の方はいいのですか?」

「ああ、終わったぜ。オレの持つ最強戦力を厳選して置いてきた。これで手持ちがかなり少なくなっちまったからな。新しいのを鍛えねえと」

「それは楽しみですね。……それでここに来たということは、私に用でも?」

「おう。人づてじゃやべーからな。けど、そっちも忙しそうだな」
 ダイネンと話している間も、フストラはペンを置くことなく、資料を読み、ときに書き込みをしている。

「計画が進んで、先日で動乱シナリオに移りましたし、『楽園』探しも引き続きやっていますからね。私があと二、三人いてくれたらと、心底思いますよ」

「『麦野』がそんだけいたら、世界を取れるな」
「さあ、どうでしょう。……それで話というのは何です?」

「おう。魔国で『宝寿ほうじゅ』に会った」
「ドナルマー殿ですか。すると『楽園』になにか進展があったのですね」

「おうよ。『霧の民』と接触したところまでは報告してあるって?」
「旧『霧の民』ですね。ええ、来ていますよ。成果なしという報告が」

 天蓋てんがい山脈で算出される貴金属を取り扱うドナルマーは、『霧の民』とも少なからず交流がある。
 そんな彼がかなり丁寧に聞き取り調査をして、現存しているほぼすべての『霧の民』と接触した。
 だが、結果は芳しくなかった。

『楽園』につながる情報を持っている者はだれもいなかったのだ。
 その時点でフストラのもとに手紙を送っている。

「オレもよく知らねえが、『霧の民』は同族意識が強い。そのルーツを考えれば納得する部分もあるんだが、まあそれはおいといて……ある時期、『霧の民』の数がぐっと減っているんだ」

「山を下りたということですか?」
「だったらその痕跡くらいありそうだと思わねえか?」

「そうですね。時期はいつです?」
「およそ二十年前。『宝寿』が調査した結果だと、その理由はだれも知らないらしい」

「ふむ……二十年前ですか。『魔探またん』が生きていれば今年で五十五歳。二十年前は三十五歳です。『魔探』が『楽園』を見つけたのを機に移住でもしましたか?」

「それだけの情報でなんでそこま考えるかね。『宝寿』も似たようなことを言っていたが、『魔探』はそいつらと二十年前に『楽園』にいった。戻ってきたのは『魔探』だけだったんじゃないかと予想してたぜ」

「『魔探』の性格上、『霧の民』を殺して情報を独占しようとは思わないでしょう。ですが、何かあったかもしれませんね。二十年前の『魔探』の取り引き履歴が分かれば、どの辺りにいたのか判別できるかもしれません」

「つぅわけで、『宝寿』のじいさんは、やることはやったから、後は頼むって言ってたぜ」
「分かりました。やはり『楽園』は天蓋山脈の中にありそうですね」

「そうなのかね。あんな人も住めないような山ん中にあるのかねえ」

「もともと『魔探』の扱う品々は、珍しいもの、だれも持っていないもの、他に存在しないものが中心でした。天蓋山脈にもよく足を運んだらしいですし、可能性が一番あるのは、あそこしかないのですよ」

「ふうん。……で、もし見つけたらどうするんだ?」

「新しい秩序ができる前に、しっかりと下地を作ってしまいます。商人の未来……いや、人である私たちすべての未来のためにです」

「武の否定だっけか」
「そうですよ。武力に変わって、経済が世界を支配しなければならないのです」

「うーん、難しいことは任せた。……そんで、そっちの方はどうなってんだ?」
「いろいろ予想外のことがおきて大変ですよ」

「へえ、先を見通す『麦野』がそんなことを言うとはねえ」

「私が見通せるのは、事前の下調べがあってのことです。今回のように、急に決まった話では準備不足は否めません。そのため、不確定要素にかき回されて、その修正に大わらわです」

「『麦野』を慌てさせるような不確定要素?」

「端的に言えば、黒竜を駆るレオン・フェナードの存在ですね。彼ひとりのせいで、魔国軍は撤退に追い込まれました」

「おい、おい、嘘だろ。軍がたったひとりにイモ引いたってのか? どんな存在だよ」

「準備不足も相まって、調べて分かったことは少ないのですよ。ですから、いま告げられるような情報はありませんね」

「だが、たかが竜操者だろ? 調べるのに時間がかかるとは思えないが」

「そもそもあちらさんが大転移の情報を流してくれるのも遅すぎました。四年後と言われた大転移があと数十日で始まるんですよ。数年後に実施するために暖めていた計画をどれだけ前倒ししたと思っているのですか」

「そうだよな。流してくれるのは遅すぎだ。だから下調べする時間がなかったわけか。……だが、あちらさんは故意に隠していたわけじゃないんだろ?」

「ええ、私たちも竜国と同時に知ったわけですからそれはないでしょう」

「だったら文句も言えねえな」

「そうですね。月詠司つきよみつかさが計算違いをすることも視野に入れておけばよかったのですが、どういう計測をしているのかすら、掴んでいませんので」

「城から出さず、接触もさせずだっけか? 徹底しているからな、竜国は」

「それでも事前に知ることができたので、こうして計画を実行しているのです。少なくとも竜国に『楽園』を捜索する暇は与えません」

「その調子で頼むぜ。……で、ちょっと気になったんだが、そのレオン。どんな奴なんだ?」

 人の売買を専門に扱う『銀檻』ダイネンは、物騒な笑みを浮かべた。


各国、各立場の話が登場し、物語が入り乱れてきます。
伏線が徐々に回収されて、物語が大きく動き、レオンくんが行動していた裏でどんなことが考えられて、どう実行されていたのか分かってくる感じです。

これから先、できるだけ説明は入れていますが、レオンくん登場以外のシーンはさらっとした描写になっています。
読み返すと「なるほど」と分かる部分も出てくるかもしれませんが、それって結構大変ですね。。。
また、「今までの話はだいたい覚えているよ」という方は答え合わせを楽しんでください。
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