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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 人生は摩訶不思議だ。
 自分でも思っても見なかった方向に転がることがある。

 静かに暮らしたいと思っていたのに、こうして王族と親しく移動するようになるなんて、この町に住んでいた頃は、思いもしなかった。

 もちろん姉さんも、僕がこの国の王女を連れ回すなんて、想像したこともないだろう。

「名はサーラーヌ・ルクストラだ」

 その言葉を聞いて姉さんは硬直し、首をギギギとこちらに向けた。
 姉さんの眼は悲壮感に溢れていた。
 ぜひ否定して欲しい。そう訴えかけている。

「残念ながら本当なんだ」

 せいぜい重々しく伝えたところ、姉さんに首を絞められた。
 結構マジに。

 その後は、我に返って跪こうとする姉さんを僕が押しとどめたり、不敬の許しをと大騒ぎになりかけた。
 あわてて姉さんを母屋の方へ導いた。
 店内に客がいなくて本当によかった。

「王女殿下を連れて王都に戻るんだけど、ついでに情報収集がしたかったんだ」
 姉さんと母屋で話をする。

 店番は母さんに変わってもらった。王女殿下も興味を覚えたらしく、店の方にいる。

 王女殿下の素性は内緒だと姉さんに伝えたら、「絶対に墓まで持っていく」とのこと。
 そこまでしなくてもいいと思うのだけど。

「そういうわけで姉さんは何か知らない?」
 ようやく落ち着きを取り戻した姉さんにそう聞いてみる。

「商人たちの話では領主の館が落とされて、領主一族が人質になっているってことかしら。竜操者は武装を解除させられて捕まったって聞いているわ」

「竜操者は殺されなかったんだ」
 あとで利用するつもりかな?

「そう聞いているわ」

「とすると、王権の奪取が目的かな。あとで戦力は自分たちのものになるから、竜操者を不用意に減らしたくないわけか」
 よほど反乱に自信があるのだろう。

「別の町の話なんだから、これ以上は知らないわよ。この町はいま防備を強化している最中みたいだけど、攻めてくるのかしら」

「どうだろう。王都に駆け上がるんだったら、ソールの町は落としておきたいだろうね」
「だったら逃げた方がいいんじゃないかしら」

「待って! ここにはこないから」
「どうして?」

「防備を強化している最中だって姉さんが言ったじゃんか。ここを襲うんだったら、竜が必要だよ。だけど竜操者は囚われたまま。つまり通常戦力で襲うには、ソールの町は強固過ぎる」

「それはそうね」
「反乱部隊が動くなら、東部と合流するだろうね。というわけで、人質にした領主一族や竜操者たちを引き連れてダネイの町を目指すだろうね」

「そう、良かった。ソールの町の領主様が無事で本当に良かったわ」
 姉さんは胸をなでおろした。

「ここに来るまでに領主の館は確認したよ。迎撃のために動いている感じだった」
 慌ただしく兵が出入りしていた。

 それを見てソールの町の領主は反乱に与してないと思ったが、無条件で味方になってくれるのか不安だったので、顔は出していない。

 裏でつながっている可能性もほんの少しあるためだ。
 王女殿下がいるので、慎重にいかせてもらった。

「それであなたは、お、お、王女殿下をど、どうするつもりなの?」
「うーん、殿下しだいかな。技国に戻ってもいいし、王都に向かってもいいと思う」

「技国から来たの?」
「ああ、王都から逃げてきたと思った? 王女殿下は技術競技会に出席されていたんだよ」

「じゃあ、王都に戻る途中なのね」
「そうだよね。ちょっと聞いてみようか」

 そんな話をしていたら、王女殿下がやってきた。
「流行ってないの? お客が少ないみたいだけど」
 飽きたらしい。

「王都のようにはいかないよ。それと、父さんがいないから、いつものパンを買いに来る人は来てないだろうしね」

「そういうことね」

「それでこの後はどうします? 商人をつかまえても、有益な情報は得られそうにもないですけど」

「王都に戻るわ。その上で見てきたことをお母様に伝える」
 王女殿下の腹は決まったようだ。

 横で姉さんが、「お母様って、もしかして女王陛下?」とそっと聞いてきたので、「あたりまえだろ」と返した。

 姉さんがかなり王女殿下のことを気にするので、早々に発つことにした。

 姉さんに馬車を呼んできてもらっている間に母さんの所へ行く。

「父さんはいつごろ帰ってくるって?」
「分からないのよ。少し遠い場所だから、何日かかかるって言っていたくらいかしら」
「ふうん。分かった」

 やっぱり反乱の町へ行った気がする。
 とすると、南の反乱は父さんに任せていいのかな。

 この町の〈右足〉も連れて行っただろうし、なにかあれば〈影〉どうし連携を取るだろう。

「レオン、馬車が来たわよ」
「ありがとう、姉さん。じゃ、また」

「世話になったな」
「い、いえ、恐れ多いことです」

 偉そうな態度の王女殿下に姉さんが恐縮しまくる。……と思ったら、実際に偉いんだった。



 シャラザードに乗り込み、王都へ向かって出発する。
「いつ頃着くの?」
「夜中には着きますね」

「さすがに早いわね。次から私の専属にならない?」
「いえ、それはちょっと……」
 御免被る。

「何か断り方がムカつくわね。私の専属にならないかと聞いているのだけど」
「嫌です」
「…………」

 そんな不毛な会話をしている間に、予定通り王都へ到着した。

「あなたのことはしっかりと伝えておきましょう。それと部屋を用意させます。今日は王宮にいなさい」
 さり際、王女殿下はそう言い残した。

「かしこまりました」
 一瞬で仮面をかぶり、外づらの良い王族へと返信した王女は、足並みも軽やかに去っていった。

 一方僕は、あてがわれた部屋で仮眠をとったが、明け方近くになって起こされた。

 女王陛下が会いたいと言っているのだという。
 もしかして女王陛下は寝ていないのだろうか。

 そんなことを考えつつ、僕は謁見の間に足を運んだ。


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