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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 商国の陰謀は、かなり前から計画、実行されていたのだろう。

「商国と魔国は、技国を攻め滅ぼそうとはしていないわよね」
 国家をひとつ殲滅するのには、多大な労力と長い時間がかかる。
 ほんの少しでも考える頭があれば、分かることだ。

「頭のすげ替えをして、都合の良い人に技国を治めてもらいたがっている感じですね」
 一国を手に入れようとしたら、それが一番効率がいいはずだ。

「じゃが、それだと今回の侵攻の説明がつかんな」
 そう、そこが問題だ。

「今度は竜国の方を見てみましょう。これは技国のみに対する陰謀ではないはずですわ」
 竜国の裏事情ならば、僕は詳しい。

「ふむ。竜国の情報は最近になってよく入ってくるが、それ以前となると、公式に通達があったことだけじゃぞ」
 王女殿下は頷いた。

「でしたら、それも情報共有の一環としてお話しますわ。はじめは……そうですね。魔国十三階梯の王宮襲撃事件からかしら」

「いや、きっと月詠司つきよみつかさの情報が盗まれたことが発端だと思う」
 僕が知る限りだと、それが最初だ。

「だったら、それを話してくれるかしら」
「分かりました」

 僕は王女殿下に促されるまま、〈影〉として参加した王都での攻防を話す。

 月の動きを計測していた月詠司が、四年後に大転移が起こりそうだと発見した。
 魔道使いのスルーによってその情報が盗まれて、魔国に渡った。

 魔国はさらなる情報を得ようと増援を派遣したが、その前に僕がスルーを含めて王都にいた連中を処理。
 危険は去ったかに思われたが、今度は僕ら学院生を演習中に狙うという情報がもたらされた。

 だがこ学院生襲撃の裏には、女王陛下を亡き者にするための計画が存在していた。
 学院生と王宮、遠く離れた場所への同時攻撃。

 双方ともに失敗したことで、魔国は面目と他国に対する信用を失った。

 これが王宮襲撃の真相だったりする。

「あなた、そういえば学院生だったわね。演習に参加していた……というか、向こうの暗殺者迎撃に加わっていたの?」

「うん。女王陛下からの指令もあったし、仲間を守るためにはちゃんと敵を殺しておかないとね」

「王宮襲撃の方がインパクト強かったから、すっかり頭から抜け落ちていたわ」
「ちなみに王宮の方で無双していたのは父さんだからね」

「はっ?」
「王宮で魔国十三階梯を殺したのは父さんだから。……僕も殺しているけど」

「……はぁ~~」
 王女殿下は大きく息を吐き出した。これで二度目だ。

「あなたち父子はどこにでもいるわね」
 なんだろこの、台所の嫌われ者みたいな言われ方は。

「そうかそうか。魔国の暗殺者を軽くあしらった者がいると聞いたが、おぬしがそうじゃったか。愉快愉快」

 氏族長が笑い出したが、王女殿下の眉は変な風にゆがんでいた。

「整理すると、魔国は技国より前に竜国に狙いを定めていたわけよね」

「そうです。暗殺が公になって、これ以上手を出すわけにはいかなくなったから、標的を変えたのかもしれません」

「計画は竜国と技国の両方にあったのでしょう。……だったら、順番を変更したのかもしれないわね。魔国は王家わたしたちを潰したいみたいだし」

 竜国の王家を潰すのは難しい。相当な覚悟と犠牲が必要だろう。
 難易度がかなり高い。

 だから暗殺という直接的な策をやめて、周辺から攻めることにしたのかもしれない。

「技国で色々失敗した後くらいかな。商国が表に結構出て来ていますね。最初に気づいたのは北方の町かな」
「なによそれ。詳しく話しなさい」

「えっと……」

 僕がリンダの父親――ヨシュアさんから聞いた話だ。
 五会頭のひとり『豪商』スルヌフが北方の町でさまざまなものを買いあさっていた。

 買っていたものはすべて「これがないと製品が完成しない」といわれる部品ばかりで、目的は商品を流通させないためであることは明白だった。

「あの頃、商国商会は、竜国内で流通を制限しはじめていたのよね。徐々に品薄になっていって、気がついたときには結構危ない状態だったわ」

「ルッケナ商会がいちはやく気づいたんで、最小限に抑えられたと思うけど」
「そうね。竜による緊急輸送もあって、困る事態にはならなかったわ」

「僕が思うに、商国は北方の町を支配下に置きたかったんじゃないかなと」
「北方を? あんなに離れているのに?」

「陰月の路があるから、同じ竜国内でも北方はかなり特殊でしょ」
「そうね。船を使って行き来するのが一般的よ。陰月の路を常道にはできないでしょ」

「そうですね。だから行き来する船が重要なんです」
 僕はロザーナさんの町の船が沈んだこと。

 それによって町の経済が立ちゆかなくなったため、ロザーナさんがスルヌフと結婚する予定になっていたことを話した。

「王宮育ちの私から言わせてもらうと、それ家の乗っ取りよ。結婚後、そのロザーナっていう人を除いて事故死、不審死、自殺などで、みんないなくなるわ。まいったわね、北方は本当に目が届きにくい」

 領主の直系が全滅するとロザーナさんが後を継ぐが、実際に町を運営するのはロザーナさんの夫、スルヌフになる。

「なら良かったのかな。だってロザーナさんは結婚することはなかったし、スルヌフはもういないし」

「ちょっと待って! スルヌフがもういないって、どういうこと? たしか勝手に王都を抜け出して、いま行方不明じゃないの」

「公式にはそうなっているみたいだし、王都で放火したり、他にもいろいろな犯罪の証拠が出ているから手配されているよね。だけどあの日、僕がシャラザードでスルヌフを追いかけて海上で中型竜もろとも殺したんだ」

「犯罪者とはいえ、商国の五会頭は王族にも匹敵するのよ。どうしてそんな事を……」

「スルヌフが王都を騒乱させた目的は、竜国商会からお金を引き出せる『竜国商票』を盗むことだったんだ。僕はそれを追いかけて、スルヌフが持っていることを確認したから、殺した。いまごろは竜国商票ごと、海の底だと思う」

「…………はぁ~~~~」

 王女殿下は大きく息を吐き出した。何度目だ?


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