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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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「情報を整理しましょう」
「そうですね」

 王女殿下の言に僕も賛成した。
 実際、今まで何が起こってきたのか、いま何が起こっているのか、これから何が起こるのか。

 じっくりと考えてみたいと思っていた。

「魔国の侵攻だけど、技術競技会の最中を狙ってきたのは偶然じゃないわよね」
「そうじゃな。開催中は、かなりの者が大山猫の氏族領へ赴く。とくに地位の高い者はほとんど招待されるじゃろう」

「それに参加するしないは自由だけど、みなさん一度くらいは足を運ぶのですか?」

「競技会は一ヶ月続く。各氏族の代表者はほとんど参加するじゃろうが、竜国以外だと、商国は必要なときのみ。魔国の参加率はそれほど高くない」

 商国は商人の集まりである。
 商売をしに行くので、式典に参加するよりも商談がメインとなる。
 魔国は移動の関係上、毎回それほど多く参加していないという。

「つまり技国を狙う場合、この時期はチャンスになるわけですね」
「うむ。現にわしと孫をのぞけば、みな向こうに行っておるしな」

「突然の侵攻で驚いてしまったけど、襲われる下地はあるわけですね」

「そうじゃの。魔国が商国とつながっておるのは明らかであるし、先の内乱から今まで、すべて大きな流れの中にあると思える」
「なるほど」
 僕は頷いた。

 大山猫の氏族が起こした内乱と、その前にあった鴎の氏族のクーデターもそうだ。

 技国の序列一位と二位が技術競技会を控えてあんなことをしでかしたのには訳がある。
 商国の商人にそそのかされたのだ。

「序列三位の兎の氏族を潰さないと後がない。商人たちはそう思わせてクーデターを後押しして、内乱までも画策したわけですね」

 調べた限りでは、かなり以前から危機感を煽っていたようだ。

「クーデターと内乱の狙いは、技国内の混乱よね」
「それと魔国や商国寄りの政権樹立ですよね」

「うむ、その通りじゃ。大山猫も鴎も懐を商国に握られておるから、逆らえん。下から台頭してくるわしらの頭を押さえれば、今後も操れると思ったのじゃろう」

「だけど失敗した」
「そうじゃな。おぬしの活躍でな。あの時は、あやうく命を落とすところじゃったわ」
 氏族長がカッカッカと上機嫌に笑うのと対照的に、王女殿下が僕を睨む。

「あなた、何をしたの?」
「えっ? そんな大したことはしてない……ような」

「言いなさい。いま竜国は反乱が勃発して大変なことになっているのよ。隠し事はなし……で、何をしたの?」
「えっと」

 どこから話せばいいのか分からなかったので、アンさんが騙されて誘拐されたところから話すことにした。

「竜国の自作自演を疑われそうだし、そもそも救出に出向いたところで信じてもらえない可能性もあったんだ」
「誘拐の話は表に出ていないし、奪還に成功したのよね」
「うん」

 アンさんを探している途中でクーデターの計画を知ってしまって、アンさんが強引に婚姻を結ばされそうだったため、先回りして救出。
 あとはクーデター派の力を削ぐために駆動歩兵を潰したり、捕まった人たちを解放したりと、裏で動いたことをすべて話した。

「……そんなことしてたのね」
「アンさんをここに送り届けてホッとしたと思ったら、今度は大山猫の氏族が攻めてきたでしょ。また女王陛下からの指令で、父さんとここに入ってちょっと戦ったかな」

「ちょっ、まっ!」
「ん?」
 王女殿下が慌てている。

「もしかして、やり過ぎた殺戮者ってあなただったの?」
「はい?」

「単身で乗り込んで、敵対した駆動歩兵を全滅させたんでしょ?」
「それ、たぶん父さんだと思う。僕は……いや僕も少し倒したかな。でも僕が相手をしたのは一部隊だけだよ」

「母上の子飼いでありえないほど強い〈影〉がいるって聞いたけど、あなただったのね」
「いやだから、それ父さん」

「同じようなもんでしょ! つい最近の出来事なのに、もう半ば伝説になっているのよ」

「あのときは本当に助かった。たったふたりの援軍だったが、来てくれたおかげで、孫二人を失わずに済んだし、ここも落とされずに済んだ。わしらの戦力だけでは完全に詰んでおったしな」

「…………」
 王女殿下が大きく息を吐き出した。

「王宮にいる私の護衛なんか、話を聞いてガクブルしていたわよ……まあ、それはおいておいて。本来の動きを考えましょう」

「本来の動き?」
「そう。もしあなたがいなかったら、どうなっていたかしら?」

 考えてみる。
「鴎の氏族のクーデターは成功して、魔国と商国の援助を受けた奴が鴎の氏族を治めるようになっただろうね。奥さんはアンさんになるのかな」

「とすると、鴎と兎の氏族は同盟を結ばざるを得ないと」
「そうなるかな」
 そこから先は予想になるが、鴎が大山猫と縁を切って技術競技会を迎える。

「そうなると新しい序列だが、一位が鴎、二位が兎、三位以下に大山猫がくるであろうな」

「新しい氏族長はクーデターの段取りを調えてくれた商国に頭が上がらないと……そんな感じかしらね」
「でも失敗した」

「そう。だから計画は変更されたんでしょう。落ち目になった鴎は捨てて、大山猫に目を付けた」
「借金の額が凄いでな。逆らえんかったのであろう」

 全軍を挙げて兎の氏族を急襲したわけだけど、これも僕と父さんが介入して阻止した。
 もし、そうなっていなかったら……。

「兎の氏族が壊滅した場合、新しい序列は一位が大山猫で二位が鴎?」
「わしらが死に絶えれば、鴎と大山猫は同盟を維持しただろうし、おそらくそうなる」

「借金で首が回らない状態でさらに借りができた大山猫の氏族は、商国のいいなり……」
「でも失敗したわ」

「つまりじゃ。技国の新しいトップに商国や魔国のいいなりになるような人物をつけるアテがなくなったわけじゃな」
 氏族長の言葉に、僕と王女殿下は頷いた。

 敵の策がすべて失敗。これは喜んでいいことだろう。
 年が明けて、僕がシャラザードを得たわけだけど、その頃も陰謀は裏で続いていたんだろうな。


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