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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 反乱の知らせは、最悪のタイミングでやってきた。
 呪われているんじゃないかと思うほどだ。

 普段ならば、僕も「竜国で反乱ですって!?」と思考停止しているところだが、今回はパン屋が絡んでいる。

 このまま話が進めば、パン屋を言い出せる雰囲気ではなくなると判断して、やや強引に話をもっていったが、少し遅かった。

 王女殿下のひと言で、パン屋の許可が吹っ飛んでしまった。
 悔しい。本当に悔しい。

 僕はこれでも竜国の師団長だ。
 自国の緊急事態を前にして「そんなことより、パン屋ですよ」とは言えない。喉元まで出かかったけど。

 ディオン氏族長も王女殿下も気が気じゃないだろうし、ここは涙を飲むことにする。嗚呼、しょっぱい。

「竜国内での反乱ですけど、これって魔国の侵攻と連動していますよね」
 心を落ち着かせるため、分析をはじめてみる。

「そうじゃのう。我が国と竜国……じゃが、あまりに時期が重なり過ぎる」

 情報伝達にかかる時間を考慮すれば、ふたつの事件はほぼ同時に起こったことになる。

「だとすると、黒幕――今回の絵を描いた人が、どこかにいるってことですね」
「竜国と魔国、そして技国のことをよく知る人物がいるのじゃろうな。とすれば……」

「そんなの商国に決まっているじゃない」
 王女殿下がぶっちゃけた。まだ商国の仕業と決まったわけじゃないけど。

「僕もその可能性が高いと思うけど、名指しは駄目だと思いますよ」
 ここには三人しかいないからいいけど、外で発言したらえらいことになると思う。

「商国の、ほら五会頭の『麦酒エール』。あれが黒幕よ!」

「たぶん『麦野ばくや』のことですね。女王陛下も気をつけるように言っていたけど……」
 本当に『麦野』だろうか。以前僕が会ったときは、すごくいい人だったのだけれど。

「そいつが裏で糸を引いているのよ。ということは、西の都を攻めればいいの? 東だっけ?」

「東の都かな。……けど、証拠もなしに、攻めちゃだめだと思いますよ。それに今はそれどころじゃないですね」
 反乱の鎮圧――つまり、竜国内を落ち着かせないと外へ打って出られない。

 しかし、サーラーヌ王女はなにげに血の気が多いな。
 女王陛下も似たようなものだが。

 王子殿下は寡黙で大人しく、とても理知的だと聞こえてくる。
 父親似なのだろうか。

「先ほどの話だけでは情報が少ないの。南と東で反乱というが……」
 氏族長がそう言ったとき、部屋の扉がノックされた。

「竜国の使者をお連れしました」
「おお、中へ入ってもらえ」
「はっ!」

 やってきたのは中肉中背の竜操者。
 ソールの町に常駐しているらしく、ロイニンと名乗った。

「ではロイニン操者。詳しい話をしてくれんかの。ここにはそなたの国の王女もいる」
「かしこまりました。一報が入ったのは今から三日前のことです。ソールの町の衛星都市で反乱が確認されました」

「裏切ったのはどの町?」
 王女殿下が厳しい声を出す。

「蜂起したのは民衆のようです。ヴィラーインとバロドリストの町が中心となり、他に一都市が反乱に加わっております」

「両方とも工場が稼働したばかりの町か」

「はい。魔国民が商国経由で入り込みました。人口が急激に増加したことで、不審者の発見が遅れたようです」

 移民を制限し、職にありつけなかった者を魔国に戻したことで、町は一応の落ち着きを見せていた。
 だが工場が稼働してからは、商国経由で新たな人員が入り込まれていたらしい。

 やってきたところで、職はない。
 それをどう帰そうか悩んでいる最中の出来事だったという。

「反乱に加わった人数は?」

「各町で千人から二千人ということです。ほとんどが魔国民。ほかに商国や呪国の人間も見受けられています。彼らはまず領主館を襲い、その上で一部竜操者を拘束したということです。ほとんどの竜操者は脱出しました。現在町は反乱者たちの手に落ちている状態です」

 思ったより規模が大きかった。反乱というより乗っ取りだな。
 千人から二千人の魔国民が一丸となって襲ったら、領主館などひとたまりもないだろう。

「金に目がくらんで工場建設を許したばかりに……馬鹿なこと」
 王女殿下の言葉は、あまりに素っ気ない。

 王都と地方領主の間に確執があるのは、僕も知っている。
 中央と地方では、いろんなものに対する温度差があり、時にそれが浮き彫りになる。

 だからといって領主が王都に対して弓を引くなんてことはありえない。
 反乱罪は、一族郎党死罪が決まりである。

「救いはソールの町が無事であることですね」

 父さんがいるからめったなことは起きないと思うが、早い段階で町中の移民を排除しておいて良かった。

 さすがに千人規模で暴れられたら、他に被害を出さないよう処理するのは父さんでも厳しいだろう。

「反乱に参加したのはそれだけですか? それと他の町は?」

「ソールの町の衛星都市ではそれだけのようです。となりのダネイの町もまた、衛星都市の一部が反乱軍によって占領されています。こちらは一報が入ってきただけですので、詳細は分かっていません」

 ダネイの町に逃げてきた竜操者から得た情報らしい。

「ダネイの町周辺は、アラル山脈を背負っているせいか、あまり他国の影響を受けないはずなんだけど」

 魔国に近いソールの町や、商国に近いチュリスの町と違って、ダネイの町は交易の要として栄えているものの、どこかの国と親しくなるような下地がない。

「これは推測になりますが、ダネイ周辺の町はどちらかというと閉鎖的で、情報が入りにくいように思えます」

「そうね。それで?」

「今回、移民対策でも消極的でした。危機感が薄いというか、移民が増えた後でどうなるのか、想像力が希薄のように思えました。それゆえ、対応が遅れたのではないでしょうか」

 使者が言うには、逃げてきた竜操者の数が少なく、その多くが捕まってしまったのだという。
 竜を狙うよりも竜操者を狙う方が容易いため、竜操者は注意するよう言いつけられている。

 それができていないあたり、弛んでいると言われてもしょうがない。

「気の緩みということかしら……まったくしょうがないわね。他には?」

「チュリスの町ですが、ここは領主自ら反乱に加わったとの情報が入っております」
「なんですって!?」

「も、もちろん、未確認ですが」
 使者はおどおどと小さな声で訂正した。

「それでもそんな話が出ているわけね」
「は、はい。また東のアクリの町も領主が……その……反乱軍を率いていると」

「アクリ?」
 王女殿下が声をあげた。

「どうしたの?」
「アクリの町の領主が反乱? ……まさかそんな」
 呆然としている。

「たしかにアクリは七大都市のひとつだけど、そんなに意外なんですか?」
 僕が聞くと、王女殿下はこちらをキッと睨んだ。

「あたりまえでしょ! アクリの城主フラット・エイドルは……その娘は……ソウラン・デポイの婚約者よ!」

 ソウラン操者が反乱軍に加わった可能性があるわと、王女殿下は唇を震わせた。

win10アップデート失敗でPCが起動しなくなったので、フルリストア。なんとか使える形に戻ってきました。
この土日で消えたメアドも調べて手修正。
竜操者の連載ですが、ようやく遡って誤字修正できそうです。
アプリも少しずつ元に戻って……Office2013だけは相変わらず起動してくれません。365買った方がストレス少ないかも。。。
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