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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 いま、ライアートたちは兎の氏族の本拠地を攻めているが、いまだ正門を破れずにいる。
 前の戦いでノールセイドの魔道に頼ってしまったばかりに、今回は兵を投入するしかない。

「回復をかけたから、ノールセイドの魔道はあと半日で大丈夫だと思うわ」
「そうか。手間をかけたな、ジャクリン」

「気にしないで。この戦いに勝てなければ、私たちに未来がないのは誰でも知っていることだもの。私たちがたとえ倒れたとしても……」

「ああ、魔国民が助かれば、俺たちも浮かばれる」
「そうよ。だからやりましょう」

「そうだな。後には引けないものな」
 戦場であるにもかかわらず、ジャクリンとライアートは揃って笑った。

 ノールセイドが使えないいま、正門を破るのは持久戦となる。
 そう覚悟していたとき、『魔槍ランス』のパティスがやってきた。

 彼もまた月魔獣狩りで多大な貢献をしている魔道使いの一人だ。
 パティスが触れた槍は、彼の意思を汲んで、強力な飛翔兵器として生まれ変わる。

 彼は『魔槍』によって、どれだけ多くの月魔獣を貫いてきたか。
 領主が手元に置きたがる魔道使いの中では、上位五位の中にかならず彼の名前があがるほど使い勝手の良い魔道使いである。

「飛竜がやけに空をうろついている。近寄ってきたものは狙って落としたが、どういうことだ?」
「飛竜? 竜国の飛竜がなぜ?」

 パティスの報告を聞いてライアートが首を傾げる。
 竜国と兎の氏族の蜜月は以前より取り沙汰されていたが、竜国が気前よく飛竜を放出するとは思えない。

 今回の遠征でも、竜と戦うことは想定していなかった。

「複数の飛竜がいるの?」
 ジャクリンも不思議そうだ。

「ああ、戦場を様子を身に数体が空を舞っている」
 パティスはやれやれとばかりに首を振った。

「だったら、竜国から重要人物が来ているんじゃないかしら。飛竜はその護衛」
 竜国が重要人物を派遣するときに、編隊を組んで道中を守らせるのは有名な話である。

「その線が濃いな。……本国に戻って応援を呼ばれるとやっかいだが」
「竜国からの増援? 間に合うかしら」

「竜の移動速度はバカにできないぞ。何しろ速さが違う……ここは足止めをした方がよさそうだな。パティスは飛竜に狙いを定めてくれ。徹底的に排除する」
 ライアートは即決した。

「よし、救援を要請するならば、本拠地の反対側から飛び立つだろう。竜国のある方角に向かうぜ」
「そうね。私が逃げるならそうするわ」
 ジャクリンの言葉にライアートも頷く。
 増援を呼ぶにしろ、逃げるにしろ、攻撃を受けている反対側から飛び立つのは子供でも分かる。

「パティスはもう攻撃に参加しなくていいから、最優先で敵増援の可能性を潰してくれ。一体も逃がさないように」
「分かったぜ」

「残りの者は引き続き攻撃を。ノールセイドが回復しだい、正門は破らせる」
「分かったわ」

 こうして攻城戦が継続された。



 攻城をはじめて半日。
 兵による力技では正門を落とすことは敵わなかった。

「仕方ない。ノールセイドを使う」

 すでにノールセイドの状態は回復している。
 彼の『崩壊』で、本拠地の正門を破壊させた。

 衝撃波が放たれ、鉄と木でできた正門が木っ端微塵に吹っ飛んだ。

「なだれ込め!」
 兵に激を飛ばしたライアートは、ノールセイドに人を付けて、後方に下がらせる。
 これでしばらくはまた、ノールセイドなしで戦わねばならない。

 ライアートは自問する。果たしてうまくいっているのかと。
 多少の予想外もあったが、ここまでは概ね順調に進んでいる。

 この本拠地攻略も、本当ならば全軍でとりかかりたかった。
 だが、野戦をしたことから分かる通り、兎の氏族は自分たちの侵攻に気づいていた。

「半分は後方に備えよ!」
 各町にも兵や駆動歩兵が配備されている。
 それらが後詰めにやってくるのは分かっている。

 ライアートは挟撃されないよう、戦力を残すしかなかった。

 それでも市街戦は制することができそうだった。
 昨晩は『魔槍』パディスを竜国の重要人物確保に行かせた。
 飛竜が落下した情報も入ってきているので、遠からず吉報が届くと思っている。

「だが、先ほどのあれは……」
 不安もある。
 少し前、巨大な黒竜が一頭、氏族の住む館の方に下りていった。

 黒竜の姿を見て、ライアーとは嫌な予感を覚えた。
 突如現れた一頭の巨大竜。あまりに不吉だ。

「一頭だけでは、さほどのことはできないだろう。囲って一気に畳み掛ければ……」
 そう思うことで心を落ち着かせた。

 あれは見たこと無い大きさだった。
 噂に聞く属性竜だろう。ライアートはあの姿を見た瞬間、心の臓が凍りつくかと思った。
 できれば戦いたくない。そう思うほどに。

「ジャクリン、ノールセイドの様子はどうだ?」
「また魔道を使えなくなっているわ。すぐに『回復』をかけたので今日の夜には、もしかしたら使えるようになっているかも」

「城を落とすのには使えないか」
「無理ね。いま休んでいる」

 今回の遠征に投入された魔道使いはライアートを入れて五人。
 月魔獣の大量降下が確認された上でこの人数は、魔国王の期待の現れだとライアーとは考えている。

 魔国王直属の第十三階梯からは二人。
 第五階梯、『無月』ライアートと第十三階梯、『回復』ジャクリンである。

 そしてライアートには、たとえ侵攻が失敗に終わっても、技国の重鎮を暗殺するという使命が与えられていた。

 できるだけ技国内を混乱させるため、一人でも多くの重要人物を粛清するようにと。

「ジュチの『水幻影』で後方の軍を隠させろ。夜半から明日の朝にかけて、敵の敵増援がくるかもしれん」
「分かったわ」
 ジュチがライアートから離れて出て行く。

 戦場は広がってしまっや。
 ライアートとジャクリンがいるのは市街地の中。
『魔槍』パティスは本拠地の裏手に行ったきり戻ってきていない。

 ノールセイドは極大魔道を使ったため、後方で休んでいる。
 そしていま、ジュチが『水幻影』をかけるため、市街地を出て行った。

 いまある戦力でここを落とさねばならない。
 時間はない。兵の消耗を気にせず、ここを落とすべきだ。

 ライアートは覚悟を決めた。

「日が落ちても攻撃の手を緩めるな! なんとしてでも、今日中にここを落とすぞ!」

 更なる檄を飛ばし、ライアートも自ら剣をとって、市街地を突き進んだ。


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