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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 僕が向かったのは、勝手知ったる兎の氏族領。
 シャラザードを急がせた甲斐があって、日が落ちる前に本拠地に到着した。

「入り乱れているな」

 本拠地を守る巨大な防壁はそのままだったが、出入り口となる正門は破られていた。
 大きな力で破壊されたらしく、周囲の壁も少し壊れていた。

 頑丈な門に守られていた市街地は、いまや戦場と化していた。

『ヤツらを吹っ飛ばすか?』
「どうやって?」

『我の雷ならば一掃できる』
「駄目、絶対に駄目!」

 妙案があるのかと思ったら、敵も味方も殺すつもりか。
 何しにきたのか分からなくなってしまう。

『ではどうする? チマチマと潰してまわるか?』
 正門からなだれ込んだ魔国兵と迎撃の技国兵が市街戦をやっている。

 味方したいところだが、シャラザードの巨体では降りられる場所は限られている。
 シャラザードが少し動けば、建物など簡単に壊してしまう。

「ここでは戦わせられないな。氏族が住む一角は無事らしいし、そこへ一旦下りよう」
『ふむ』

 町のあちこちで戦闘が繰り広げられていて、どっちが優勢か分からない。
 行方不明のサーラーヌ王女について、闇雲に探すより氏族長に聞いた方が早いだろう。

 問題は市街戦だ。
 この本拠地は、竜国の王都には及ばないものの、かなり広い。
 その中で氏族が住む一角は、王城と同じように何重もの防壁によって守られている。

 さすがにすべて落ちることはないと思うが、分からない。
 急いだ方が良さそうだ。

「竜操者のレオンです。ディオン氏族長に会わせてください」

 シャラザードでいつもの場所に降りたら、何人もの人がやってきた。
 この巨体はさすがに目立つか。

 事情を説明しなくても、すぐに偉い人に会わせてくれた。そこで同じことを話す。

「分かりました。氏族長はこちらです」
 身分の高そうな人に案内されて、近くの建物に向かう。

 ここは戦時において作戦会議室となる場所のようだ。
 石造りの建物の四階に氏族長はいた。

「レオン操者をお連れしました」

 先導の人が言い終わるよりもはやく、部屋に入る。

「氏族長、レオンです。火急時ですので挨拶は省略します。王女殿下が行方不明と聞きましたが、詳細を教えてください」

「よう来た……と言いたいところじゃが、手短に話そう。王女にはこの町が戦場になる前に脱出を勧めた。夜陰に乗じて飛竜で飛び立ったが、敵の魔道使いが回りこんでいたらしい。迎撃され、飛竜が落ちた」

 最悪だ。
 口に出せないことだが、王女が落下の衝撃で怪我をしたか、死んだ可能性だってある。
 他にも敵に捕まったか、殺されたか、最悪の事態など、いくらでも転がっている。

「どのあたりに落ちました?」
「ここじゃ」

 氏族長が指した場所は、本拠地の東の森。
 以前父さんと一緒に敵の痕跡を捜索した場所だ。

「ここなら知っています。かなり木々が密集していて、敵も発見は難しいでしょう」

「捜索に人をやりたいところじゃが、いま防衛で手一杯で捜索に人を避けん。というよりも、東の森は敵の勢力圏内じゃ。護衛に何人かつけるのが精一杯じゃが」

「いえ、もうすぐ夜です。捜索はひとりの方がいいです」
「……なるほど。そうじゃな」
 氏族長は察してくれた。

「出る前に戦況を教えてもらえますか?」

「よかろう。敵に爆発系の魔道を使う者がおる。それで正門が破られた。敵の数は三万、蜻蛉の氏族を落としてからやってきたのではないかと思っておる」

「その魔道使いが町の中に?」
「外におるようだ。まだここは破られておらんし、その可能性が高い」

 別の町にいる兵がやってきたことで、本拠地の外でも戦いが繰り広げられているらしい。
 挟撃を受けないためにも、魔道使いはそっちで戦っているのではないかと氏族長は言った。

 上空から見たときも、内外で戦っていたから、まだ決着はついてない。
 しばらくはここも無事そうだ。

「ここが落とされればわしらの負け。耐えしのげば、戦力差からわしらが勝つじゃろう。いまも各町から増援も来ておるはずじゃ。そんなところかのう」

「なるほど分かりました。では王女殿下を探しに行ってきます」

「うむ。こんな事態になってしまい、まことに申し訳ない。生き残った飛竜の者たちも森に入っておるようじゃ」

 護衛たちかな。王女を探しに入ったか。とすると、〈影〉もいるはずだ。
 今回、王女の護衛の中に〈影〉は二人いた。

 一人増えていたのは、前回襲われたからだろう。

 僕は挨拶もそこそこにその場を離れた。
 もう少ししたら日が暮れる。そうしたら夜だ。

 王女殿下が夜まで持ちこたえていれば、きっと見つけられる。



「シャラザード、行くぞ」
『うむ。どこへでも付きあうぞ』

「目的地はここから東にある森。シャラザードは木が邪魔で着地できないと思うんだ」
『なるほど。たしかに森の中へは入れんな』

 シャラザードが僕を乗せて上昇する。
 日はまだ山の稜線の上にある。日没までまだ多少の時間があった。

「そこでだ、シャラザードには単独で暴れてもらいたい」
『………………ほう』

 シャラザードの声が幾分低くなる。何かを察したようだ。

 今回の襲撃。
 話を聞いた限りだが、敵は竜国の者と分かっていて飛竜を襲っている。

 たしかに戦争ならば、慈悲も手心も必要ないだろう。
 そこに竜国の王女がいようがいまいが、敵からしたら関係ない。

 そう考えるのも当然……。

「だったら、こっちだってやり返して当然」

 竜国と知って狙ってきたのだ。
 竜や竜操者が暴れたところで文句は言わないだろう。

 シャラザードは単独でも一国の軍隊に相当する力を持っている。
 決して落ちることのない空の要塞だ。
 強力過ぎて使えない技を封印しても、殲滅力は少しも揺るがない。

「今から僕がいう連中だけ狙えるか? というか、区別が付くか?」
『バカにしておるのか? 我は主よりもよっぽど目がいいわ』

 そういえばそうだった。

「ならば、好きに暴れてくれ。狙っていいのは……」

 僕は魔国兵の特徴をシャラザードに伝えた。



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