挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

34/655

034

「ちょ、ちょっと……これ、なに?」

 控室に入った途端、女生徒に囲まれた。

 敵意はない。まったく感じられない。
 逆に、ものすごい好意を持たれている。

 なんなんだ、これは?

「ようやく最後のひとりが来たのね」
「はじめまして! わたし二年の……」

「ちょっと先輩っ! いきなり割り込まないでくださいよ」
「こういうのは早い者勝ちよ」

「だったら、私はこうやって」
「こらっ、どこに連れて行こうとしているのよ」

「最後は可愛い男の子なんてツイているわ。ジュルリ」
「別にあんたのもんじゃないでしょうに。それにお歳を考えなさったら、三年生さま」
「なんですって!?」

 分かった。これ、駄目なやつだ。
 ここにいたら危ない。いろいろと。

 ここは入学者の控室じゃなかったのかと思ったが、彼女らの胸に名札がついていた。
『接待係』とある。

 接待係が多すぎだろ。
 全校生徒が来ているんじゃないかと思うくらい、集まってないか?

 敵意がないからと様子を窺っていたら、十重二十重とえはたえに取り囲まれているんだが。

 腕を引っ張る者。話しかけてくる者。
 耳元で囁く者。さりげなく、自分の腰に手を回させようとする者。

 顔を近づけて来る者は、強引に遠ざけた。いま何をしようとした?

 近くで女性同士で喧嘩が勃発し始めている。
 来たばかりだけど、もう帰っていいかな?

 僕は気配を消して、そっと彼女らの腕を振りほどく。
 気づかれないように間をぬって進み、目についた階段を駆け上った。



「……ふう。逃げ切った」

 どうやらさっきの控室は大ホールだったらしく、のぼり階段がステージ脇にあった。
 そのひとつを使ったが、ずいぶん上まで階段が続いている。

「下に戻ったらいろいろ危ないし、このまま時間まで隠れているか」
 僕は階段を上りきった。

 最上階はテラスになっていて、椅子とテーブルが備え付けてある。
 ここにも簡易ステージがあるから、芸術棟かなにかかもしれない。

「誰もいないし、ここでいいか」
 椅子のひとつを引いて座った。

「……はぁー、疲れた」
 下にいたのが王立学校の生徒で間違いない。
 彼女らはパトロンに立候補する人たちなのだろう。

 数日前に入学式を終えているから、三学年が揃っている。
 目を閉じて控室にいた人数を思い出す。

 控室の広さであの密度……およそ七百人から八百人か。
 全学年の半数があそこに集まっていることになる。

「そりゃ、気をつけてくださいって言うわけだ」
 学校公認のお見合いパーティだな。

 竜操者とパトロンの出会い。
 本気で狙うなら、入学式はいい狩り場(・・・)だ。

 なんだか、虚しくなってきた。



「……あら?」
 ひとりの女生徒が入ってきた。
 気配を消していたので、直前まで僕に気付かなかったようだ。

 というか、人が入ってきたので僕が気配を消すのを諦めたのだが。

 入ってきた女生徒は、湯気が立ちのぼるカップをトレーに乗せて固まっている。

 それはそうだろう。
 僕も驚いた。
 なにしろこんなところで会うなんて、想像もしていなかった。

「……レオンくん?」
 女生徒は目を見開いたまま、問いかけてきた。

「やあ、リンダ。ひ、久しぶり」

 入学式の日、僕は幼なじみのリンダ・ルッケナと再会することになった。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ