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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 九月。
 学院の長期休みも終わり、僕にも日常が戻ってきた……わけではない。

『ぬぉおおおおおおっ!』

 いまだ僕とシャラザードは、陰月の路にいる。

『楽園』探しの際、シャラザードと約束した月魔獣狩り放題がまだ残っていた。

「なあ、シャラザード。ちょっと休憩したりしないか?」

『主よ、今いいところなのだ』
「そうか。……でも少しは僕のことを思い出してくれよな」

 連日、月魔獣を狩りに来ていた僕らは、すぐに巡回の皆さんの知るところとなった。

「分かりました。最適な場所をご用意します」

 なぜかシャラザードの為に、狩り場を空けてくれるのだった。
「ここ……面倒だから押しつけられたんじゃないよな」

 やたらと月魔獣が多いのだが、それは気のせいではない。
 まあ、シャラザードが喜ぶのだから、深く考えないことにするが。

『おっ、まだ向こうにもいるな』

 いそいそとシャラザードが向かう。
 朝からずっと休みなし。
 シャラザードと違って僕は、一日三度の食事を摂りたいのだけど。

『ぬぉおおおおお』

 しょうがないので、狩りの間だけど、携帯用の乾燥パンをもそもそと食べる。
「……うん、あまり美味しくない。それと喉が渇く」

『しゃぁああああ』

 僕はシャラザードのような数日に一度の食事では生きていけない。
 どうやらシャラザードは、そのことは完全に頭から抜けているらしい。

『ふしゅぅううう』

 このまま日暮れまで、月魔獣狩りを止めそうにない。

「……あー、不味い。口の中がパサパサだ」

『うがぁああああ』

 このまま夕食も携帯食なのだろうが。
 涙が出そうだ。



「なあシャラザード。次に王都に戻ったら、少し休みにするぞ」
『ぬわんだとぉ!?』

「いや、それはいいから。……やることが溜まっているんだよ。このままじゃ、いつまでたっても終わらないから、二、三日休憩だ」

『……し、仕方ないな。が、我慢してやろう』
 シャラザードがプルプル震えている。そんなに休むのが嫌なのか?

「王都で情報を集めないとな。それにロザーナさんの『楽園』の報告書をチェックしないといけないし」

 ロザーナさんが作成した報告書は一度王宮に提出済みである。
 王宮の文官がそれを読んで、疑問点や説明不足な部分を付け足すよう指示が出ている。

 ロザーナさんだけでは分からないこともあるので、僕がその一部を引き受けている。
 ほとんどが移動に関することなので、僕がやるべき範疇だと思っている。

 それはいいのだが、最近色々と不穏な噂が王都に流れているので、その辺の情報を集めておきたいのだ。

 というわけで、僕は王都に戻るとすぐにリンダを呼び出した。



「南方の町の話よね。任せて!」
 僕が話を切り出すと、リンダは待っていましたとばかりに語りはじめた。

「新しい連絡網は順調よ。なので、その辺の情報は逐一入ってきてるわね」
 それはもう、リンダは鼻高々だ。

 リンダはいま、竜国商会に加盟した商人たちで、特定の町を結ぶ『連絡網』を構築しつつあった。
 今までと違ってすぐに手紙を届けるシステムは、商人たちにも好意的に受け入れられているという。

「僕が知っているのは、竜国から離反するよう扇動している者たちがいるってことなんだけど」
 南方の町と言っても、ソールの町はすでに落ち着きを取り戻しており、その他の町になる。

 リンダがどこまで知っているのか未知数だ。

「あなたのその情報は、ちょっとだけ古いかしら。竜国七大都市のうち、民衆への扇動が確認されたのが、ソール、チュリス、ダネイの町ね。そしてソールの町はすぐに終息したわ」

「主要都市が落ち着けば、その衛星都市も落ち着く感じ?」

「そうね。領主の権限からしても七大都市は飛び抜けているし……それで、ダネイの町もほほ落ち着いたわ。終息は思ったよりも早かったの。裏で何かが動いたんじゃないかって言われているけど、あなたは知っているかしら?」

「さあ。他の〈影〉がどう動いたかなんてのは一切情報が入ってこないし。と言うか、僕が知りたいくらいなんだし」

 父さんが向かったとも思えないし、向こうにも優秀な〈影〉がいたんだと思う。
 もしくは人海戦術で何とかしたか。

「チュリスの町はいま困ったことになっているようだけど、民たちは静かなものよ。暴力的な部分は見られないみたい」
「それは良かった」

「その分領主は頭を抱えているかしら。離反工作は続いているだろうし、民衆が無視できない勢力に発展する前になんとかしないとね」

「なるほど。チュリスの町は王都から離れていて、技国の方がよっぽど近い。領主もやりにくいだろうな」

 竜紋限界から外れていることも、民衆が荒れる要因かもしれない。
 地元出身の竜操者がいないと、なかなか帰属意識が芽生えないと聞いたことがある。

「でもあなたがそんな政治的な話に感心があるなんて、意外ね」
「もしかするとそっち方面に出動するかもしれないからね」

「ふうん。だったら、もう少し調べておきましょうか?」
「お願いできる?」

「そうね。南方はわたしの商業圏だし、荒れると困るのよね。だから注意しておくに越したことがないから、できるだけ情報を集めておくわ」

「ありがとう。助かるよ」

「任せなさい!」
 そう自信満々に胸をたたくリンダに一抹の不安を抱えつつ、僕はシャラザードとの日常に戻った。

 僕の日常。
 学院の授業ではない。月魔獣狩りだ。

 そしていつものごとく、陰月の路で長期の狩り三昧を終えて学院の寮に戻ったところ、リンダからの手紙を発見した。

「先日会ったばかりなのに……何か進展があったのかな?」

 新しい情報でも知らせてくれたのかと、リンダからの手紙を開いた。
 そこには……。

『南方の町の話じゃないけれども、一応耳に入れておこうと思って手紙を書いているの。商人たちの間では、『ウルスの町で叛意あり』と噂が流れているわ。あのリトワーン・ユーングラス卿に限ってそれはないと思ったのだけど……そのうち王都でも話題になるかも』

 そう書いてあった。

 ついに来たか。
 リンダからの手紙を読んで、僕は思わすそう思ってしまった。

 女王陛下は、竜国運営会に合わせてリトワーン卿を強制召喚すると言っていた。
 その運営会は九月の下旬に行われる。

 この噂、それまでに王都に届くのだろうか。



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