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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 婚約発表の当日。
 ホールに行くと王女殿下がいた。

「おはよう」
「おはよう、ございま……す?」

「なんで疑問系なのよ」
 疑問系もなにも、婚約発表の場になんでサーラーヌ王女がいるんだ?

「王女殿下におかれましては、どっか行ったらどうでしょう?」
「ちょっと、その言い方は腹立つわね!」

「いやでも、本当になんでいるんですか?」
「うーんと、箔付け?」

「婚約発表のですか?」
「そう。竜国が今回の婚約に重きを置いていると知らしめるためかしらね」

「なるほど。枯れ木も山の賑わいですね!」
「わたしは枯れ木かっ!」

 ノってくれた。王女なのに。
 ここまで気安く話ができるのも、すでに互いによく見知っているからだ。

「冗談です。申し訳ございません」
「……ふん。まあいいわ。わたしが兎の氏族に来たのだって、他に理由があったわけだし、ちょうど良かったのよ」

「と、いいますと?」
「軍事同盟に関する話し合いをするの。……それは本来、竜国で行われる予定だったのね。ところが、八年ぶりの技術競技会が近いでしょ」

「ええ。アンさんの両親が大山猫の氏族に行っていますよね」

「そう。だからモーリス殿が竜国に来て会談をするのが筋なの。となれば、両国の友好大使であるアンネロッタ殿も同席するでしょ。でもそうなると兎の氏族には、氏族長しかいなくなってしまうわけ」

 意志決定できるのがディオン氏族長のみとなるため、できれば避けたいと打診があったらしい。
 その頃ちょうど僕とアンさんの婚約発表の話があったので、ならば竜国の方から向かえばいいだろう、時期的にも合っているしとなったとか。

「意外ですね」
 もっと国の体面を重んじるのかと思ったが。

「竜国側が足を運んでも、その権威はいささかも揺るがないわよ。というわけで、わたしが来たのだけど、どうせならば最後までいた方が両国の親密さが強調されるでしょ。それに一介の平民であるあなたの婚約にわざわざ王女であるわたしが出席するんですもの。効果は抜群よ」

「なるほど。ご配慮、痛み入ります」

「というわけで、軍事パレードと婚約発表を一緒にしちゃったわけだし、いいわよね」
「はっ?」
 聞いてないのだけど。

「駆動歩兵の大隊に負けない規模っていうと、結構大変なのよ。竜国の地方都市から竜操者も呼び寄せておいたから」
「はい!?」
 聞いてないよ?

「もちろんシャラザードも参加ね。示威行動としては十分すぎるほどだと思うけど」
「どこと戦争するつもりですか?」

 駆動歩兵の大隊と竜の編隊が共同でパレードするのか?
 そのままどこでも攻め込めそうなんだけど……。

 僕とアンさんの婚約発表だよな?
 宣戦布告とかしないよな?
 というか、身内でコッソリやろうよ!



 僕のささやかな願いは聞き入れられるわけもなく、氏族の身内を集めた婚約発表の場と、それに付随したパレードは既定路線として周知されていた。

 唯一の救いは、アンさんがとても嬉しそうだったことだろうか。

「これで名実ともに夫婦ですわね」

 と喜んでいるが、名も実もまだだと思う。
 婚約だから、本人同士の約束に家の了承を得たくらいの意味しかないわけだし。

 結婚式ではないので、神殿に行くこともない。
 大広間で発表が行われ、互いに持参したものを交換して儀式自体は終わった。

 僕についてだが、簡単な身分紹介かと思ったら、これが意外と念入りに行われたのが少し驚いた。
 これがあるから、師団長の位を女王陛下から下賜されたようだ。

 操竜会では軍属しか師団長の職につけない。
 だがいくつか例外があって、操竜長と軍団長が認めた上で、国の後ろ盾がある場合は、たとえ軍属でなくとも軍職がつくことがある。

 ほとんどの場合、王族かそれに連なる高貴な身分用らしいが。
 なにしろ、王族が軍属になってしまえば、政治的な活動ができなくなってしまう。

 よって普段は王族として活動して、なにかあれば部下を率いて軍事的に活動できるように地位を「持っておく」ことができるのだ。

 師団長の位は意外と高く、兎の氏族内でも好意的に見てもらえた。

 ディオン氏族長やモーリスさんから祝福を受けて、アンさんも嬉しそうだ。

 母さんは相変わらず、あわあわしている。
 こういう場に一度も出たことがないのだから仕方ないだろう。

 姉さんは来なくて正解だったかもしれない。
 緊張のあまり、僕の黒歴史をぺらぺらしゃべり始められたら、そのまま家出してしまいそうだ。というか、確実にする。

 和やかな雰囲気のまま婚約発表が済み、一応ここへ来た目的は果たした……ことになるのだが、王女殿下は許してくれない。

「……じゃ、次は軍事パレードね」
 とにこやかに言う。

 すでに多くの民がこの時を待っているという。
 近隣の村や町からも、人が集まっているらしい。

 今年に入って慶事続きであり、民の顔も明るいとか。

「分かりました。シャラザードと行ってきます」
「アンネロッタ殿も駆動歩兵で参加するみたいよ」

「あー、そうですね」
 そういえばアンさんは、駆動歩兵隊の隊長だったっけか。

 婚約発表のおまけで出席するのか、はたまたその逆なのか。
 僕は着替えてシャラザードの所へ向かうことにした。

 人生二度目の軍事パレード参加である。

 今度はシャラザードの背にゴテゴテしたものは乗らないだろうから、少しは気が楽か。

「じゃ、父さん、母さん。行ってきます」

「気をつけてな」
「お洋服は、それでいいの?」

「着替えるから、母さん。心配しないでいいよ」

 いまだ目が泳いでる母さんが少し心配だったが、すべて父さんに任せて僕は大ホールをあとにした。



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