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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 竜国はすでに兎の氏族と同盟を結んでいる。
 このまま技術競技会で序列一位を取れば、自ずとそれが技国全体に広がる。

 技国は九つある氏族の共同運営とはいえ、首都になる氏族の思惑がほぼ通る。
 有力な氏族の後押しがなければ序列一位になれないのだから、それはそうなのだろう。

「多くの〈影〉が命を落としているのですか?」
 初耳だった。

「同盟を結んだゆえにその辺りの情報も知らせてもらえた。竜国の南が浸食されつつあるらしいな」
 南といえばソールの町。父さんが都市防衛に手を抜いたとは思えないのだけど。

「チュリスおよびダネイの町でかなりやりあっているらしい。形勢はやや不利。といっても地の利があるから、ここんとこは持ち直したようだ」

 父さんの口から意外な事実が飛び出した。
 チュリスの町は技国に一番近い。
 僕もアンさん救出のときに寄ったことがあるが、なかなかに堅牢な町だった記憶がある。

 あそこが狙われたのか。それとダネイの町。

 ダネイの町はソールの町とチュリスの町を結ぶだけでなく、王都への便もよく、交通の要所として栄えている。

「ソールの町は一掃したんだよね」
「ああ、状況からすると敵はソールの町を諦めたようだ」

 父さんが言うには、すでにソールの町とその衛星都市には敵方の間者は入ってきていないという。

 それだけならば、竜国側の勝利と言えるのだが、敵は矛先を変えたらしく、今はその他の都市を重点的に狙いに来ているらしい。

 地方領主の政策はどうしても民の動向に左右される。

 大多数の民が反対すれば、地方議会も反対に回らざるを得なく、民と議会が反対すれば、領主も対立を避ける方向に動く。

 今回、敵側の草の根的な活動を〈影〉が排除しようと試みて、静かな戦いが繰り広げられているらしい。

「報告によると王都との離間工作をしているようだ。現王政を批判する声が大きくなれば領主とて無視できんじゃろう。何らかの一石を投じなければならなくなる」

 民の声を吸い上げて、竜国運営会で議題に上らせなければならなくなる。
 そのとき、他の領主が同調すれば、小さな集団といえども運営会を割ることができる。

 良くも悪くも領主はそこに住む民の声を完全に無視することはできないのだから。

「でも、持ち直してきているんですよね」
「手口が分かったからな。周辺の町や首都からも応援が届いた。だが、それすら敵側の罠かもしれない。手薄になった町が狙われることも考えられるし、首都すら安全ではない」

「…………」
 今も民の目が届かない場所で、剣と剣が火花を散らす戦いが繰り広げられているのだという。

「報告では、もうしばらくしたら落ち着くじゃろうとあった。敵は傭兵を筆頭に呪国人と戦闘奴隷を使っている。そうそう余力はないだろうとな」
「つまり今をしのげば勝てると?」

「そういうことじゃ。それゆえ、竜国にも明るいニュースが必要らしい。たとえば、軍事同盟の発表とかな」

 兎の氏族は竜国と軍事的に足並みを揃えることが決まった。
 互いの町を守るというものである。
 両者の間に商国があるものの、軍事同盟が公になればある一定の効果が期待できる。

「なるほど、たのもしそうですね」
「人ごとではないぞ。両者の軍事交流が行われるし、その前段階に軍事パレードを計画しておる」

「またパレードですか。ついこの前ウルスの町であったばかりなんですけど」
「示威行動は必要じゃろうて。駆動歩兵と竜操者がともにパレードを行うなど見物ではないか?」

 どうやら、竜国から竜の一部が兎の氏族に滞在して、かわりに駆動歩兵を竜国に派遣するらしい。
 王女殿下がここに来た理由も分かってくる。

 こんな大がかりな交渉、とても文官には任せられないだろう。

「そして来るべき大転移に備えんとな」
 すでにディオン氏族長も、あと半年ほどで大転移が来ることを知っている。

 やるべき事は多く、残された時間はあまりに少ない。
 王女殿下はこのあともここに残り続け、いろいろ詰める作業があるという。

 それほどまで、竜国も兎の氏族も真剣なのだ。

「……さて、少し表と裏の話が混じったな。ここからは裏の話をしよう」
「裏ですか?」

「さよう。いまのは、竜国から表のルートを通してもたらされた話だ」

〈影〉についても、軍事同盟についても、大転移さえも、飛竜の使者を使ったり、王女殿下が話を持ってきたりしたらしく、表の話に該当するのだという。

 では裏の話とはなんだろうか。

「ほかに何か話すことがあるんですか?」
「もちろんだとも。大事なことがな」

 そこで氏族長は一呼吸おいて、続けた。

「潜入捜査をさせているのはなにも竜国ばかりではない。魔国や商国もお得意だろう?」
「そうですね、王都でも結構侵入されていますし」

「技国だって負けてはいないのだ。……というわけで、手の者を商国に潜入させておる。そしてつい最近、『楽園』について分かったことがある」

 なるほど。『楽園』の話だったのか。
「それならば、僕からもお話しできるものがあります」

「ふむ。では情報交換といこうかの。わしのは商国上層部の情報じゃ」
「僕は『潮の民』についての情報ですけど」

「どちらから話すね?」
「そうですね。では僕からということで」

 そういって僕は語り始めた。


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