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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 僕とシャラザードは陰月の路で三日間、濃密な時間を過ごした。

 大型竜を操るオリヴィエ操者との出会いがあった。
 彼女が僕に告げた意味はよく分からないが、年長者独特の経験に基づいた助言だと思っている。

 僕がこの後も経験を積めば、手遅れになる前にその意味が分かるだろうか。

「おっと、こうしちゃいられないんだよな」

 今日僕は、両親を迎えに行かなければならない。
 シャラザードならばソールの町まで半日で飛びきってしまう。

 まだ日が昇る前の真っ暗な時間帯、僕は学院の竜舎の前にいる。

「シャラザード、準備はいいか?」
『もちろんだ、主よ。結婚するのだろう?』

「婚約だけだけどね。まあいいや。……それじゃ行こうか。昼前にはソールの町に着くかな」

『余裕だ、主よ』

 両親を拾ってそのまま技国に向かう。
 ソールの町に寄っても、夜には到着するだろう。

「さあいくぞ!」
 僕の一声でシャラザードは大空高く飛び上がった。



 ソールの町に降り立ち、両親を迎えに行く。
 町中を歩くとすぐに分かった。
 以前と違って、浮浪者のような人々が一掃されていた。

 多少人が多いかなと思う程度で、町中は落ち着いている。

 僕の実家『ふっくらフェナード』は閉まっていた。
 今日僕が迎えに行くことが分かっていたからだろう。

 こんな昼日中に店が閉まっているのを見ると、すごく違和感がある。

「ただいま」

 裏に回って声をかける。
 ここは窯に入れる薪を用意する場所だ。

 そこから中を覗くと、ちょうど両親が出てくるところだった。
 見たことない服を着ている。

「ねえ、レオン。これで失礼にあたらないかしら。お客さんに事情を話したら貸してくれたのだけど」

「うん、似合ってはいなけど、大丈夫だと思うよ。でも僕の挨拶はどこへ消えたのかな」

「おう、早かったな」

 父さんが出てきた。格好はいつもと変わらない。
 多少小綺麗かなと思う程度だ。
 どうせシャラザードに乗るのだから、服を気にしてもしょうがないと分かっているのだろう。

「日の出前に出発したからね。早く着くことができたよ」
「そうか。……で先方にも今日中に着くつもりだろう?」

「そうだね。だからなるべく早く出発したいんだけど、準備はいい? 忘れ物はない?」

「俺はないな。母さんは?」
「わたしは何か忘れている気がするのだけど、何回探しても分からないのよ」

「それきっと気のせいだよ。行くことが大事だし、あまり気にしない方がいいんじゃない?」
 ただ母さんは、不安なだけだろう。

「でももし忘れものをしたら、すぐに帰れないじゃない……」
「いいから行くよ」
 僕は母さんを急かして外へ出た。

「そういえば魔国から来た人が減ったね」
「ああ、領主様が対処してくれたからな」
「へえ?」

 父さんが言うには、竜国にいても仕事はないし、他国人は滞在しただけで税金が発生する。

 それが払えないと北方送りになると話したら、帰りたくても帰れないというので、他の町の領主が国境付近まで送ったのだという。

 北方送りになれば一日中、街道作りや木の伐採などに従事しなければならず、いいことはなにもない。
 このまま滞在しても良いことはないと徐々に広まり、一応の落ち着きをみせたという。

「いちいち捕まえたらキリがないから、そうそう強硬な手段には出ないが、移民者には分からないだろう」

 それはそうだ。
 捕まえると発表しただけの脅しだろうが、それなりの効果はあったようだ。

 両親をシャラザードに乗せ、ソールの町を出発した。
 姉さんも誘ったのだが、「そんな恐れ多い!」と不参加だったりする。

 向こうはアンさんの家族勢揃いなのだから、一緒に来てもいいと思うのだが、父さん曰く、「あれは土壇場で怖じ気づくタイプだからな」だそうだ。

 商国を抜けて技国に入る。
 そろそろ兎の氏族の本拠地に到着するなと思っていると、シャラザードが何かを見つけた。

『主よ、あそこで何をやっているのだ?』
「どれどれ……」

 街道から外れたところに駆動くどう歩兵が集結していた。
 戦闘訓練のようだ。

「駆動歩兵同士の模擬戦だね」
『アレで月魔獣と戦うつもりか?』

「そうだね。それだけじゃないけど、月魔獣戦も想定していると思う」
『ふむ。我の故郷にも似たようなのがあったが、アレよりももっと大きかったな』

「駆動歩兵と似たのか……その話は聞いたことがないな」
『我はともに行動しておらんから、詳しくは知らんのだ。ただ、人やものを運ぶのに利用していたな』

「あそこにいる駆動歩兵は戦闘用だけど、こっちにもちゃんと土木工事に使うタイプの駆動歩兵はあるよ。用途はしっかりと別れているみたい」

『ふむ。やはり似たようなことを考えるものだな』
「そうだね」

 この大陸の住人はシャラザードの故郷とつながりがあるようなので、そのせいかもしれない。
 発想が似ているのではなく、その知識を持った者がこっちに来ていた可能性もある。
 技術者とか。

『もうすぐ着くぞ。どこに下りればよい?』
「以前と同じ場所でいいみたい。覚えている?」

『もちろんだ』
 シャラザードは、王女殿下を乗せてやってきたときと同じ場所を見つけ、綺麗に着地した。

「いらっしゃい。思ったより遅かったわね」

 出迎えたのは、サーラーヌ王女だった。

 ……なんで?


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