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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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「ここは当たりだな」
 月魔獣が多い。

『うむ、なかなかに良い仕事をする』

 シャラザードが偉そうに言うが、竜操者の巡回が追いついていない現状が目の前にあるのだが。
 その辺、分かっているのだろうか。

 宿泊施設で、竜操者から月魔獣がたくさんいそうな場所を教えてもらった。
 というよりも巡回が後回しになった場所だ。

 訓練のため巡回する竜操者が減った。
 降下してくる月魔獣が増えている。

 結果、どうしても一度の巡回で戦う回数が増えているらしい。

 決められた巡回コースがあったとして、そのひとつを回るたびに戦闘回数が増えてしまえば、予定がどんどんずれてしまう。

 その結果、さして重要でない地域は後回しにされた。

「たしかにこの付近には町もないし、商人が移動するようなこともないから、しいて狩る必要もないんだけど」

『穴場だな』
「まあね」

 こういうのを穴場というのだろうか。
 シャラザードにとってはそうなのだろう。本来は手が回らずに見捨てたれた場所なのだが。



 エイダノとカイダのふたつの月。
 それが交差しはじめた。

「また交わるのか」

 いまから数時間は、月魔獣の降下が頻繁に起こる。

 そう、最近月魔獣が多く出現するのは、この月の運行のせいもある。
 最近はよく軌道が交わっている。

 このような事態はたまにおきるので、来月には沈静化するはずである。
 ただし、こう頻繁に月が交わるということは、それだけ危険性も増す事を意味するわけで……。

『主よ、あれは他と違うぞ』
「マジか」

 僕にも見えた。
 小さな鋼殻が五つ、六つ落ちてきている。

 その後に、どうみても「あれは他と比べて大きいよな」というのが見えた。

『主よ、他の奴らに取られないうちに、降下地点に向かうぞ』
「他の奴らって?」

『我が最初に見つけたのだ。横取りされてはたまらん!』

 絶対にいないと思うが、シャラザードが激しく身体を揺するので、すぐに向かうことにした。

 ひとつだけ大きな鋼殻は、僕らから離れるようにして落下している。
 結構距離がありそうだ。

 大空に舞い上がったシャラザードは落下地点を予想して、まっすぐ向かっている。
 だが断言しよう。

 ――絶対に横取りする奴はいない。

 飛翔すること一時間と少し。
 ようやく落下地点と思われる場所に到達した。

「山と谷、それに向こうは岩場か」
『視界が悪いな』

 山の反対側や谷底に落ちたのならば、見つけるのに苦労する。
 ここまで来る途中にシャラザードと話したが、おそらく大型種であろうと結論付いている。

 大型種で飛行型の場合がやっかいである。
 地形の影響を受けずにどこまでも飛んでいってしまう。

「高度をあげて、もっと上空から探すか」
『その方が良さそうだな』

 山を越える高さまで上昇し、シャラザードの目が周囲を確認する。

『いた!』
「本当か?」
 思ったより早く見つかった。

『だが待て……あいつは』
「……ん?」

『しゃげごぉおおおおおおん(それは我の獲物だぁあああ)!』

 突然の咆哮とともに、急加速した。
 どう考えても殺る気だ。

「どうしたんだ、シャラザード」
『我の獲物が横取りされたんだぞ!』

 それはまさに悲壮と言っていい声だった。

「嘘だろ? ……って、待て! 急降下するな! 襲いかかるな! あれは味方だ」
『いいや敵だ。我の獲物を奪う、憎き敵だ』

「違うからやめろ! 戦おうとするな。ここで怪獣大戦争なんか起こすんじゃない!」
 僕は必死にシャラザードを宥めた。

 なにしろシャラザードが向かっていった先には、竜国にたった二体しかいない大型竜がいたのだから。

 一目で分かった。
 あれは大型竜の地竜だ。

 操るのはオリヴィエ・ナハラ操者。
 竜国の最強戦力がそこにいた。



 今から十五年前、竜迎えの儀は阿鼻叫喚の坩堝るつぼとなった。
 もしかするとシャラザードのときよりも驚きが大きかったのではなかろうか。

 観衆が集まっている会場に、弱冠十七歳のオリヴィエ嬢が大型の地竜を携えて現れた。
 全長はおよそ一キロメートルにもおよぶ巨大な竜である。

 横幅は百メートルをゆうに超え、くぐるだけで入場門が破壊されたほどである。
 中型竜が数列並んで入ることができる門がたった一体の竜すら迎えられなかったのだ。

 その驚きは推して知るべしである。

 全体的に細長いフォルムで、竜の背は意外に低い。背の部分は平べったい。
 そこにちんまりと鎮座したオリヴィエ嬢は、一躍時の人となった。

 あれから十五年。
 オリヴィエ操者はよほどのことがない限り陰月の路で過ごし、今に至る。
 というか、彼女は竜の背で生活している。

 背から下りることも滅多にないと言われている。

「あれが噂に聞く大型竜か」

 シャラザードの倍以上はある。
 とにかく大きい。

 シャラザードが並んでも大人と子どもくらいの差があるのだ。
 遠近感が完全に狂ってしまう。

『主よ、我の背から下りておれ。我はあ奴を教育してくるでな』
「駄目だから。味方だし。……というより、大変なことになるから!」

 属性竜と大型竜が戦ったら、どれだけ被害が増えるか分からない。
 シャラザードなら勝っちゃいそうで怖い。

 それに属性技など放ちでもしたら、始末書をかかされそうだ。

「まずは話し合いだ、シャラザード」

『それが終われば戦うのだな』
「いや違うから!」

 シャラザードは大型竜の上をゆっくりと旋回して、竜の背(・・・)に着地した。


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